- Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103328131
作品紹介・あらすじ
生まれ、育ち、生きて、病み、死んでゆく――。その瞬間、たしかにそこにあった生のきらめき。北の町に根づいた一族三代と、そのかたわらで人々を照らす北海道犬の姿。助産婦の祖母の幼少時である明治期から、父母と隣家に暮らす父の独身の三姉妹、子どもたちの青春、揃って老いてゆく父母とおばたちの現在まで……。百年以上に亘る一族の姿を描いて、読後、長い時間をともに生きた感覚に満たされる待望の新作長篇!
感想・レビュー・書評
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p193 自分は光を放つわけではない。死んで灰になれば、なにも残らない。いやそうではないかもしれない。真で残るものがあるとすれば、それは言葉ではないか、と歩みは思う。わたしが父にむかって言ったことば、母にむかっていったことばはつかのまの空気をふるわせて、端から消えていく。それでも父と母の記憶のなかに、いくつかのことばの断片は残るかもしれない。わたしの口からでたことばが、その人が死ぬまでのあいだ、耳の底にとどまる記憶として残ることがあるはずではないか。
p53 東方の賢人 3人からの贈り物 黄金、乳香、没薬(もつやく)
p359 カトリックの典礼 最後の祈り 終油の秘蹟
3世代にわたる物語詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2020年に読了。静かによい。よいとつぶやいた。
読み終わりたくなくなる。年代記だからいつか終わる。でも終わってほしくない。
道場人物では、歩の動静に心惹かれた。面立ちが浮かんできそうで、すっと消えていく感じ。
また何年かしたら読む。読むはず。 -
2022/11/11
何とも清潔な小説である。 -
北海道の小さな町に生きた三世代の家族と、ともに生きた北海道犬の話。寒い土地を舞台にした静謐な物語。マクラウドの短編を思い出した。家族の分かり合えなさ。
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2017年。もとは「新潮」2015年9月~17年5月号連載。
23の章からなるが、連載時の回とは一致しないのだろう。後半の章は短め、たった2ページの章もある。
北海道北見に近い架空の町枝留、明治時代に信州から東京の里子にだされ、また実家に戻ったのち産婆となった主人公添島始の祖母から、両親、叔母ら、早逝した姉、その幼馴染で近くの教会の牧師を継いだ男性、友人など。3代前からの家族や身近な人々の様子や思いを、松家らしく丁寧な筆致で描き出す。主人公は松家と、すなわち私とも同年代。子供時代があり、青春期があり、周囲の人を見送り、やがて自分も老いていく。「火山ふもとで」に似る構成と書きぶりでしみじみする。
タイトル「光の犬」というのは、3代飼い続けた北海道犬のことと、牧師の家の子の名前光、そして家に差し込む光を指してこれからの時間の流れを言うのだろう。が、もう少しなんかいいタイトルはつけらっれないのかと思う。 -
約110年!の物語。場所も時間軸も前後左右、自在にwarpします。が、惹き付けられてどの細部も素晴らしい。『沈むフランシス』表紙写真の犬、参考までに。