魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く─

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104049028

感想・レビュー・書評

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  • 2011.3.11東北地方を襲った大地震によって多くの方々が亡くなった。

    本作は著者自ら被災地を訪ね、大切な人を亡くした方が体験した不思議な霊体験を記録したもの。

    科学的には解明されていない霊という存在。

    けれども、語られた内容は辛い体験談だけでなく、震災で亡くなった人が愛する人へ寄り添う物語。

    あの日から約10年近くの時が流れようとしているが、復興へと続く道のりはこれからも続いていくのだろう。

    忘れてはいけない。

    記憶と記録に残し、語り継いでいくことは今を生きる人々の使命で、未来を生きる若者に繋いでいくバトンのようなもの。

    本作は単なる物語ではなく、そこに生きた人がいる証。

    間違いなくノンフィクション作品。



    説明
    内容紹介
    「今まで語れなかった――。でも、どうしても伝えたい」
    そして、
    〈誰にも書けなかった。でも、誰かが書かねばならなかった〉
    〝不思議でかけがえのない物語″が、いま明らかになる!

    あの未曾有の大震災から、今年で6年――。
    その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。
    最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、
    突然起きた不思議な体験の数々……。
    《愛する亡夫との〝再会″で、遺された妻に語られた思いは……。
    津波で逝った愛娘が、母や祖母のもとに帰ってきた日に……。
    死んだ兄から携帯電話にメールが届いて……。
    早逝した三歳の息子が現れ、ママに微笑んで……≫
    だが、〝霊体験″としか、表現できないこうした〝不思議でかけがえのない体験″によって、絶望にまみれた人びとの心は救われたのだった――。
    著者は3年半以上も、そのひとつひとつを丹念に何度も何度も聞き続け、検証し、選び出し、記録してきた。
    「今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい」という遺族たちの思いが噴き出した、初めての〝告白″を、大宅賞作家が優しい視線と柔らかな筆致で描き出す!
    唯一無二の〝奇跡″と〝再生″の物語を紡ぎ出す、感動と感涙のノンフィクション。

    【目次】
    旅立ちの準備
    春の旅
    1『待っている』『どこにも行かないよ』
    2 青い玉になった父母からの言葉
    3 兄から届いたメール≪ありがとう≫
    4『ママ、笑って』――おもちゃを動かす三歳児
    5 神社が好きだったわが子の跫音(あしおと)
    夏の旅
    6 霊になっても『抱いてほしかった』
    7 枕元に立った夫からの言葉
    8 携帯電話に出た伯父の霊
    9 『ほんとうはなあ、怖かったんだぁ』
    10 三歳の孫が伝える『イチゴが食べたい』
    秋の旅
    11 『ずっと逢いたかった』――ハグする夫
    12 『ただいま』――津波で逝った夫から
    13 深夜にノックした父と死の「お知らせ」
    14 ≪一番列車が参ります≫と響くアナウンス
    15 あらわれた母と霊になった愛猫
    16 避難所に浮かび上がった「母の顔」
    旅のあとで
    出版社からのコメント
    「今まで誰にも話せませんでした。死んだ家族と〝再会″したなんて――」 大震災で愛する者を失った人びとの奇跡の体験と再生の物語。
    内容(「BOOK」データベースより)
    今まで語れなかった。でも、どうしても伝えたい。未曾有の大震災で最愛の人を喪った絶望の淵で…大宅賞作家が紡いだ、“奇跡と再会”の記録。
    著者について
    奥野修司
    1948(昭和23)年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。78年から南米で日系移民を調査する。帰国後、フリージャーナリストとして活動。98年、「28年前の『酒鬼薔薇』は今」で、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフィクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『「副作用のない抗がん剤」の誕生 がん治療革命』など著作多数。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    奥野/修司
    1948年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大学卒業。78年から南米で日系移民を調査する。帰国後、フリージャーナリストとして活動。『ナツコ沖縄密貿易の女王』で、2005年に講談社ノンフィクション賞を、2006年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • タイトルにある「霊体験」そのものは、それほど驚くようなものはなかった。心霊の存在を信じない人はやっぱり信じないだろうな、というレベルのものばかり。
    でも、そんなことよりも、大切な人を失った人たちが、どんなにもがき苦しんだか、(あるいはどんな風に苦しみ続けているか)がすべての体験談から伝わってきて、そのことに改めて驚き、胸がしめつけられるような気がした。

    すべての遺族たちに、どうかそんな風に苦しまないで、と言ってあげたい。人がそんな風に言ったからって簡単に心が軽くなるものではないのだけれど。

    こうした体験を語ることで、あるいは読むことで、救われる人がいるだろうと思うと、「死後の世界」をどんな形にしろあれこれ語ることは非常に意義があることなんだなぁとつくづく思う。

    震災時、私は仙台市内の会社で働いていた。
    知っている範囲で大きな被害を被った人はおらず、誰かを失った人もいない。せいぜい何かが多少壊れて水道やガスが1か月ほど止まった程度。(土地の人間ではないので、知り合いが少ないせいもある)

    そういう被害が少なかった環境にいたせいか、お金にまつわる嫌な話、補助金や支援を受けることをもうけ話か何かのように話す人を実際に(割と頻繁に)見て聞いて、人の卑しさみたいなものに、当時、心底ウンザリした。
    阪神大震災の時は大阪にいて、被災した人たちが身近にたくさんいて当時の混乱もよく覚えているが、それでも周囲でそんなガツガツした話は一度も聞いたことがなかったので、東北の時は本当に驚いた。
    そのせいで数年の間、東北の震災に関するドキュメンタリーも本も拒絶反応を起こして見ることができなかった。
    それほど被害を被ったわけでもないのに、たまたま被災地に住んでいたというだけで「被災者」とか「被災した」とか言いたがる人も多く、そういう人たちからとにかく距離を置くのでせいいっぱいだった。

    でも、数年後からやっと客観的にこういう体験記や検証の記録などを見られるようになった。
    密かに苦しんでいた人が大勢、本当に驚くほど大勢の人が助けてとも言えず希望も見えず辛い思いをしていると知って、やっぱりこういうものは目を背けずちゃんと読まなくちゃなぁ、と思う。
    天皇陛下や芸能人たちの活動も、万能ではないが、救う力になっているんだと感じる。

    本の中で、家族4人を失った人に対し、「お金がいっぱい入ったんだろう」と言う人がいた、というところを読んで、体が震えるほど腹が立った。幽霊譚に興味ある、という理由でもいいから、こうした本が多く読まれて、そんなことを考える人間がいなくなることを願います。

  • 著者も書いているとおり、霊体験というよりは、残された人の見る夢についての聞き取りが中心。残された人が、死者に関するどのような物語を紡いで前へ進もうとしているか、に焦点があてられている。

  • 2021年3月6日読了

  • 信じるとか信じないとかではなく、沢山の人が亡くなり、一人一人にとっては、それはかけがえのない人であったということ。
    その事実が辛くて、悲しい。
    夢で会いたい、霊でもいいから会いたい、その切なる願いに胸が苦しくなる。

  • まあ思い出に出てくるというはなし

  • ノンフィクションとしては甘くて、
    大学院生の聞き書きとあまり変わらないレベル。
    書き口にはこなれがあるけど。
    母が死んでいろんな夢みた。
    ただの願望かもしれないし、思い込みかもしれないが
    それが生者を救う部分は確かにあるよな。

  • 147

  • 被災者で家族を亡くした方々へのインタビュー。中でも霊体験をしたことに絞っている。

  • 健康食品・水素水・教師の説教は信じない私ですが、こと幽霊に関しては信じている方で、ザ・だっちに負けないくらいの幽体離脱を経験したことも有り、これはいつか読みたいと思っていた本ですが、もちろん怖い話ではなく、目を潤ませながらしくしくと読まされる、いや、あの震災で愛する人を失った方々の辛さを思うと、自分自身の現在の環境がどれだけ幸せなのかと身につまされます。
    東日本大震災の被災地で不思議な体験談を多く聞かされるというので、筆者が実際の現地で調査、直接体験者にヒアリングした話をまとめたもの。
    無くなった子供部屋のおもちゃが動く、遺品の携帯からメールが届く・・・いやいあや、怖くないです。どんな形であっても亡き人と繋がれる事がどれだけ幸せな事かと痛感。
    なぜか阪神・淡路大震災ではこのような話は聞かされる事は殆どなく、やはり東北という土着の宗教心がしっかり根付いていて、霊魂を信じる感覚が今も息づいているからではないかと筆者。
    辛い話ばかりですが前向きに生きる勇気を貰える話でもあり、読んでよかったなあと、そして明日もしっかり生きようぜ、みんな。

著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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