- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104061112
感想・レビュー・書評
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4.5。橋本さんは初めて読みました。あまり男性っぽくないかな。特に最初の主婦たちのシーン、ねちねちした感じとか、女性作家的な心理描写かなと思いました。この主婦たちの動きが引き続きありそうでないのがちょっとひっかかったのですが、全体としては非常に興味深く面白かったです。住宅街にあるごみ屋敷の話です。最近テレビでよくやってますよね。困った人、迷惑な家、どうしたらいいのかわからない変人、といった感じでとらえられているようだし、自分もそういうふうに思ってきましたが、数ヶ月前にNHKのドキュメンタリーでごみ屋敷に住む人々を追っていて、彼らに共通しているのが「恐ろしく大きな喪失感」でした。大切な何か(多くは家族)を亡くしてからだんだんとそうなっていく。この本にもそういう背景が描かれています。ただドドーンと大きなことがあっていきなりそうなるのではなく、だんだんといつの日かそうなってしまう。本人もどこかおかしいのはわかっているけど、、、というあたり、非常に苦しい思いで読みました。昭和という時代の流れとともに描かれており、そのあたりも好きな感じでした。よいと思います。
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2009年はこの本が一番かな。
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ゴミ屋敷の住人とその周辺を描くことで、地方都市の戦後の歩みが写し出されているように感じました。1960年代生まれの私には、いろいろと思い出されることも多くて。忠市は「新しい時代」に常に乗り遅れた人だったのかもしれない。四国巡礼が彼に安らぎをもたらしたのなら嬉しい。(四国に住む者として)
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良かったです。 西国行きくなりました。
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自分の年が中年にさしかかると、それまであまり気にしていなかった社会の変化を否応なく振り返らざるを得なくなる。そういう意味で、個人の歴史が社会とリンクしていくこの小説は大変興味深かった。ただし、最後がすこしメロドロマてきだったかも。
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ゴミ屋敷かぁ。
なぜにゴミを溜め込んでしまうのだろうか?
と思ってしまう。
実は、満たされない何かをゴミで埋めているのかもしれない。 -
2009.12.16 図書館。
戦後の急激な社会変化、家庭の変化、街の変化に翻弄された男の物語。ゴミ屋敷状態にはならなくても、精神的にこういう風に追い詰められた人って多いのではないかと思う。結婚って好きな人と、とかいうんじゃなく年齢と悪い人ではなさそうとかいう基準で決めてたというのが多かったんだろうな。それでいて今より離婚率が低いってのは色々考えさせられる。 -
図:橋本氏、今年の新作を楽しみにしていたが…。
内容(「BOOK」データベースより)
いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時下に少年時代をすごし、敗戦後、豊かさに向けてひた走る日本を、ただ生真面目に生きてきた男は、いつ、なぜ、家族も道も、失ったのか―。その孤独な魂を鎮魂の光のなかに描きだす圧倒的長篇。 -
BEST10位
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東大卒で元イラストレーター,この本の売りは初長編純文学ということ~私鉄駅の近くのゴミ屋敷は,新住民から気味悪がられている。戦後,間もなく越してきた年輩の主婦だけは,そこが元荒物屋で瓦屋に商売替えをした新店舗だったことを憶えている。終戦時,学制が変更になって義務教育が延長され,商業高校を卒業して,荒物問屋で住み込み修業を始め,実家近くの駅周辺の再開発で,父親が瓦屋への商売替えを決め,サラリーマンの娘と結婚して新店舗で同居生活を始めるが,父が死に,子が生まれて小児癌で間もなく死ぬと,妻も遺骨・位牌と共に去り,工場勤めの8歳下の弟が結婚して同居するが,転勤を口実に実家を離れると,道端に捨てられていたカタカタを拾って修理してから,捨てられているモノの中に未だ見つけられていない価値があるような気がして,早朝家を出ては,モノを貯める癖がついた。ワイドショーで取り上げられ,見物の車が増え,不届き者はゴミを捨てていく。小火騒ぎで,自分の実家であると気が付いた弟が片づけるために兄を訪ね,清掃車を業者に依頼して片づけると400万円の請求。丸亀屋は有限会社になっていたので,積立金は2000万円あった。60代の弟は70代になった兄に四国八十八箇所の巡礼を持ち掛ける。兄が人らしい言葉を喋る様になり,天麩羅が美味いといって眠った翌朝,宿坊で兄は死んでいた~作家デビューは『桃尻娘』で,「とめてくれるな,おっかさん,背中の銀杏が泣いている」の方が有名。学校を卒業した者は住み込みで働き始めるのが当たり前だと考える世代と,電車で通勤するのが普通だと考える世代。ともに現役を退いたが,昭和一桁生まれの人は失われた価値をもう一度見つけだそうと藻掻く・・・ノスタルジーというモノだろうなぁ,世の中の価値観の転変に気が付かず,取り残されてしまったロスト・ジェネレーションだとも言える。その子どもたちの世代とも言える我らも取り残されていくのだろうか・・うぅむ