- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104061112
感想・レビュー・書評
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色の変化に着目して読むと面白いんではないかと
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異物のような存在で理解できそうにない人でも、その人には歴史があって、同じ人間なんだよね、ということを読んで思った。なぜゴミ屋敷の話が巡礼?と疑問だったが短めの第3章を読んでなるほど、そういう終わらせ方か、と思った。
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劇的な不幸より幸せのない空しさが鬱になる。
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現代のなぜ?を物語の力で解きほぐそうとする、橋本治の意欲作。
「ごみ屋敷」の主と、その近所に住む主婦の話から、物語は「ごみ屋敷」の主の人生にフォーカスする。
現代に潜む世の中の不合理を、一人の主人公に商店をあてることで、解きほぐす悲しいドラマです。
我々は、ニュースを断片的に捉えがちですが、この小説では、一人の人生を丹念に描くことで、現代におけるひとつの答えを提示していると思いました。
絶望的な人間関係の溝を、我々がどう対峙するかを客観的な語り口で描ききる構成は見事。
淡々とした日常の中に、驚きや悲しみをむき出しにさせることで、ひとことでは語れない人生の深さを感じさせてくれる一冊です。
読後感も、ジーンと余韻がのこる、思い出深い作品でした。 -
ただ生きているだけなのに人はすれちがい、溝を深めてしまう。我が家をゴミ屋敷にせざるを得なかった男の姿に、哀れとか可哀想とかは感じないのに、なぜか涙が流れた。後半、物語全体のタイムスパンの割に残り少なくなるページ数を見て、この話ちゃんと着地させられるのかな、と心配になったが、33ページしかないのに濃密で腑に落ちる最終章に圧倒された。
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ゴミ屋敷と住民の闘いの話と思いきや、後半はゴミ屋敷の住人となった男の一生が綴られている。
ゴミ屋敷の主人になった男の側からみれば、うなづける点もあり視点をかえるとこう見方が変わるのかと気付かされた。
片づけられない男・女の話があるが人生に対する虚無感がそうさせているのかもしれないな。 -
ゴミを自宅敷地内に溢れんばかりに溜め込み、つみあげていく男。
前半ではご近所の視点でその想像を絶する汚さ、悪臭、腐敗の様子が描かれていて目を覆いたくなる・・。
そのゴミ屋敷の住人の男はどうしてそうなるべくなったのか。
戦争中に少年時代を過ごし、戦後勢いをつけて変わりゆく世の中の流れの中で、まじめに平凡に生きてきた男の失っていったもの。
家族、人とのかかわり、心・・。
もしかしたら誰でもゴミ屋敷の住人になりうるのではないかと、読後、そんなふうに思った。
後半、このゴミの山はある人によって片付けられる。そこからラストにかけて、この長編をぐっと人間的なものにしている。(Y)