- Amazon.co.jp ・本 (571ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104598021
作品紹介・あらすじ
『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『人民は弱し 官吏は強し』…文庫の発行部数は三千万部を超え、いまなお愛読されつづける星新一。一〇〇一編のショートショートでネット社会の出現、臓器移植の問題性など「未来」を予見した小説家には封印された「過去」があった。関係者百三十四人への取材と膨大な遺品から謎に満ちた実像に迫る決定版評伝。
感想・レビュー・書評
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読む前は、かなり分厚い本なのでひるんだ。
だけどこのページ数は、本書の記述が膨大な取材と参考文献に基づいているからこそ。
星新一という飄々としつつも孤独を内に抱えた天才の人生が、緻密な文章から浮かび上がってくる。
星新一が星製薬という大企業の御曹司だったことも、SFがかつては文学とみなされておらず、苦労があったことも、1001編のショートショートを作るという偉業を成し遂げていたことも、そもそも江戸川乱歩と同時代の人間だったことも知らなかったので、とても興味深かった。
新一は、作品が古びないよう、何度も改稿を重ねたとのことなので、全く昔の人という印象がなかったのだろう。
晩年、SF界の主役ではなくなった新一が、編集者に「あんた、嘘でもいいから、今度ぜひ原稿書いてくださいっていえないの?」と言うエピソードなどがあまりに切ないので、今でも先生の作品はみんなが読んでるよ、と伝えたくなる。
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非常に読み応えのある人物評伝。ショートショートの達人 星 新一(本名 親一)の素顔に熱く迫った作品。ショートショートは昔いくつか読んだけど、どんな人なのかはほとんど知らなかった。かつて一世を風靡した製薬会社の御曹司だったとは。さらに起業した父 星 一(ハジメ)の事業家としての閃きと行動力と人脈活用には驚嘆する! 作家 星新一と事業家 星 一の2人の評伝のような読み応えになっている。
父に纏わる政財界の面々、新一に纏わる作家の面々、いずれも私たちがよく知る大物たちの名前がずらずら出てくるので非常に興味深かった。
あらためて星新一の作品を読んでみたくなった♪ -
最相葉月の本は長い。徹底的な取材をして、自分の考えを語るとそうならざる得ないのだろう。長いけれども引き込まれる。まず、題材が良い。最相がギモンに思ったり知りたいと思うことは、私も知りたいと思っていたことが多い。そして素人の目線で調べが進んでいくことが読者を魅了する。専門家の立場で書かなくて、素人が確かな調査をして書くから良いのだ。
星新一の話もズンズン読みました。私は司書だから周知の事柄も含まれるが、それ以上に知らないことが多くて面白かった。知っている作家がガンガン出てくるのも楽しいです。それからSFやたんぺんが文学的地位がなかったことに驚いた。 -
いつか最後まで読みたい!さいしょのすこしだけ読みました。
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図書館でいったん借りたものの、手つかずのまま返却。
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ショートショートの日本における創始者にして、レジェンド。おそらくもうすでに伝説。そんな星新一の伝記、評伝。
星製薬創業者にして、戦前、戦後に国会議員まで務めた星一を父親に持つ新一。森鴎外を叔父にもつ、一の妻、精の華麗なる家系。一はとんでもないバイタリティで、野口英世、新渡戸稲造、伊藤博文、後藤新平、張作霖・・・・などと関係を持ち、台湾や満州で利権を獲得して星製薬や関連する会社を拡大していくが・・・。戦後は一転、星製薬は傾き、一はアメリカで客死。長男の新一は会社の利権に群がる有象無象に翻弄される。いい時にはその利の分け前に群がり、傾きかけると徹底的に貪り尽くす・・・そんな人間たちの姿を見てきた新一は昭和31年、「日本空飛ぶ円盤研究会」に出会う。そして、SF界の巨匠となっていく。
しかし、ショートショートが文壇からは正当に評価されない。筒井康隆や小松左京など後輩たちは様々な文学賞を受賞する。認められたい・・。たくさん読まれる、教科書にも採用されるという栄誉の一方で、正当に評価されていないのでは苦しみ、苦悩が新一を蝕んでいく。少し寂しい、晩年。
でも、この人すごいや・・・・。 -
著者が書いているように自分も、星新一のショートショートには、ある時期ハマり、その後急に興味を失った。同じ経験をした人はきっと数多くいるだろうと思う。
そうした経験があるから余計に、星新一という実作者の立場から、本書を通じて産みの苦しみを追体験し、多くの発見があった。
子供がある時期、読書の通過儀礼のように読む本。それだけで星新一は十分幸せではないかと読み手からすれば思う。しかし実際はこれほど孤独に創作していたのかと思うと、デビュー作から順に、もう一度読み返したくなった。 -
星新一の大ファンというわけではないけど、もちろん名前くらい知ってるさ!だって教科書に載ってたし、なんか宇宙人から貰った種を勝手に育てたら超巨大化して大変だー、みたいなのとか。いや、適当だけど。でも大概この手の話を冷静に今考えると、但し書きをつけまくった説明書みたいで宇宙人嫌らしいな。美味い話には裏があるって言う。
なんていうような話とは無関係に伝記なわけで、とりあえずショートショートに心血を注いでもページ数で換算したら安くなるってのは東野圭吾あたりに言ってやるべきだとは思った。