- Amazon.co.jp ・本 (147ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104669059
作品紹介・あらすじ
女と暮らす東京を逃げ出した乾。新潟で人を好きになり、富山のジャコメッティと邂逅し、そして故郷・呉から見上げる、永遠の太陽-。不愉快な本を握りしめ彷徨する「異邦人」を描き、文学の極点へ挑む最新小説。
感想・レビュー・書評
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スピン3号の「絲山秋子 デビュー20周年」で改めて、著者の作品に向き合う。
中期の作品、意外に知らないものも多く、その中の本作を選ぶ。
退廃的な中に本来の優しさが潜んでいる、著者独特の人間観。
登場人物みんなどこかアウトローでいて、人間臭くて、見放せない、そんな日常でもあり非凡な世界でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“ボクは言葉を捨てることの快さを初めて知った。言葉によって規定された自分自身も冬の服みたいに脱ぎ捨てて、裸の物質になるってことが、こんなに気持ちいいとはまさか知らなかった。そこにはボクの倒錯した過去もなく、ろくでもない未来もなかった。”(p.97)
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確かに不愉快な内容ではあるが作者のエネルギー感じた。一気に読み終えられる分量でよかった。
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あれ、『異邦人』読んどかないとダメですか。
宙ぶらりんな人生とか、地方が舞台とか、このまえ読んだのと似てはいる。だいぶ暗くなったけれど。 -
数ある絲山作品の中でも、特に観念的。
流されるままに流れ、先々で周りに寂しい思いをさせる主人公。
でも何故かちょっと好かれたり。
とにかく寂しい。 -
まさか、「ニート」の最後の一編に出てきた、乾くんが主人公で一冊とは。だから、最初は、不愉快な本の続編の"不愉快な本"、って「ニート」の事かと思ってしまった。そうではなくて...。「ボクの不愉快な本をユミコに渡すわけにはいかない。口が裂けても自分の性癖については言うまいと思った。彼女のために、ことごとく文法をやり直す必要があった。」/呉、東京、パリ、東京、新潟、富山、呉と流されるようにめぐる乾。/さらりとして、人を見下しているようで、もろくて、自分の不愉快な本を持て余し、捨てたいのに捨てられず、もがき、投げやりになり、ユミコと結婚してやり直そうとして果たせず、投げ捨て、杉村に迫られても断り、過激な方法で彼女の盗癖を思いとどまらせ、最後は現実感のない地点へと読者を誘い込み。/ドライなロードムービーを見続けたかのような読後感。/「あっという間に死んでしまうっていうことは、一瞬しか生きていないみたいだ。人間って本当に簡単に死ぬんだなあ。」
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絲山さんの小説が好きだったんだっけ…と、久しぶりに思い出して手に取った一冊。
久しぶりに読むには、結構な作品でした。緑茶でも飲むかーと思ったら、抹茶出てきた感じ。
淡々としているのに、物語の印象が強く残ります。文章のタッチが変わらないのは、出戻り読者である私には何となく嬉しく、懐かしい。 -
日本版「ライ麦畑でつかまえて」みたい。サリンジャーと弟がいる家を燃やしちゃう主人公ってことでげんふうけいの「ひーちゃんとはーちゃんの話」だったかな、そんなのを思い出した。 どうしようもない主人公の男がなんだかんだ生きていって死ぬっていうか本になっちゃうメタ系。北陸の冬は暗いっていう一文にふふってなった。確かにそうだ。乱暴な口調で書かれていて一話ずつが短いので簡単に読める。主人公が格好よくて女の子にモテるのに不思議と嫌味じゃなかった。良作。2016/04/24 図書館