孫の力: 誰もしたことのない観察の記録 (中公新書 2039)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020390

作品紹介・あらすじ

ニホンザルにも孫がいる。しかし、サルのおばあさんは孫を特別な存在としてとくに意識することはない。だが、ヒトはちがう。孫と祖父母とのつながりには、単なる生物的な関係をはるかに超えた、社会的・文化的な意味が隠されている。本書は、ニホンザルやアイアイの生態を研究してきた研究者が、その手法でみずからとその孫を観察した貴重な記録である。かつて孫だった人、これから孫を持つことになるすべての人へ。

感想・レビュー・書評

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  • 霊長類学者による孫娘の観察日記。
    不思議な魅力を持つ本。
    心があたたかくなる。
    孫っていいな。

  • 霊長類の研究者が孫の成長観察記録をまとめたもの。
    霊長類学者が書いたとあったので、学術的なヒト科の動物の孫とのかかわり方を書いたものかと思ったら、
    もっと孫への愛にあふれた観察日記だった。

    そしてその観察の内容も、
    肉体的な観察ではなく、「こころ」の成長を観察したもので
    とてもおもしろい。
    うれしい、かなしい、たのしい
    といった単純な感情の表現から、
    頑張りたい、励ましたい、ひみつにしたい
    などの豊かな感情をあらわすようになっていく。

    そういう心の成長を観察するのは、
    なるほど、他人ではなく親でもない祖父という立場はもってこいだ。
    愛情たっぷりの目線で、孫娘のこころがつぼみから花開くまで
    研究者の忍耐と細やかさをもって観察してまとめた本。

  • ほんとに淡々と孫娘の観察がつづられています。
    著者はサルの研究をされており、所々、猿の行動との比較が入りますが、思った程、多くなくて残念でした。
    湯川秀樹氏が小さい頃、祖父から中国古典の素読の手ほどきを受けていたのは初めて知りました。

  • サルの学者が孫の観察。でもどうしても孫が可愛いという気持ちがあふれていました。

  • 2010年刊。著者はNGO日本アイアイファンド代表(元財団法人日本野生生物研究センター設立者)。◆霊長類学者が自身の孫の幼児期までの観察を通じ、人間の成長のありようをビビッドに描こうとする。といいつつ、好々爺たる著者が孫を心底かわいがる生活記録だ。その意味でとても微笑ましく、祖父の孫に対するいわく言いがたい暖かい目線を感じる。勿論、観察記録としては細かく、著者のフィールドワークの経験を上手に反映してはいる。が、ニホンザル・チンパンジー等との比較の視点は余りなく、霊長類学者らしさは僅少である。
    ◆逆に、言語で関係を切り開くヒトと、それが不可能な他の霊長類とは相当異質ではないか、という感想を抱いてしまうほどだ。

  • 「親ばか」ならぬ「ジジばか」の本である。孫への溢れる愛情がすべての行間から滲み出ていて、思わず微笑みながら読了した。
    ただ、この「ジジ」は普通のジジではない。若き日より野生のニホンザルやアイアイなどのフィールドワークで世界を駆け回った研究者の「ジジ」である。孫娘の観察(?)には、「サル」で積み重ねられた興味深い知見がほの見える。
    さらにこの「ジジ」の著作を読むと、彼はかつて東大闘争において安田講堂落城を学生隊長として戦い抜き、逮捕起訴され2年間の獄中生活すら経験しているという。
    著作で、彼のその後の充実した学究人生と幸せな孫との生活をうかがい知ると、著者の人間性に触れるような暖かい感情を抱いた。

  • 三葛館新書 376.11||SH

    「孫は人にとってだけ、ことさらに意味を持つ子孫なのかもしれない。」ではじまる本書。
    ニホンザルやアイアイの研究者が、一人のおじいちゃんとして、客観的かつ主観的に、孫との6年間を記録した観察記録です。
    孫が祖父母と関わるとき、孫に、祖父母に、家族全体にほんわりした心地よい影響を及ぼしていることが、理論的な語りとともに伝わってきます。

    (もも)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=56436

  • 読了。人間は反抗する事で人格を形成する生き物だ。だからこそ子育ては大変だし、ジジババの役割は大きい。ニホンザルなどの生態を研究している学者さんがご自身のお孫さんを愛情ベースの観察記録として本にした。読書に非日常を求める僕としては、余りにも共感できる部分が多すぎて。。

  • ニホンザル研究の第一人者である島先生の孫観察日記。
    親ではつい怒ってしまうことや相手しきれないことも、じいじ・ばぁばはこんなにも暖かく受け止められるのかぁ・・・と半ば呆れ気味?に、楽しく読んだ。
    孫の心の発達や、孫の中で世界が構築されていく様子が大変興味深く、私も育児日記を書いてみたいと強く思った。会話も残しておきたいなぁ。ビデオを撮りながらなどして、具体的に残すと面白いなと思った。
    ・・・なるべく長い期間で。

    同時に、この本、私にとっては、じいさんばあさんの、孫に対する行動の観察記としても読める。
    明らかに、親とも、保育園の先生とも違う役割を担っている。
    子供からすると、時には何でも受け入れてくれる"はけ口"?であり、ほかの人にはできないとわかっていることをじいじに仕掛けてきたりする。
    それをわかった上で、さらに暖かく見守れる、親の愛情とはまた異なった、愛情の話でもあった。

  • 賛同できるところと、違和感を覚えるところが それぞれあった。何故か?観察眼や期間は良いが、対象がたった一人で、観察結果の検証や、その先が無いからかな。
    果たして、お孫さんは、この本を喜んでくれるか否か。

  • 猿の観察が専門の動物学者の孫娘観察記録。親という直接的な庇護者ではなく祖父という客観的かつ直近の子孫という目での観察は、もうメロメロに可愛いいだろうな。人間の社会的かつ生き物としての成長を観察することは自分の成育を追体験することに他ならない。人生の締めくくりの至福。
    メロメロジイジの時間をもてる人は幸いです。

  • 読み始めた途端、あまりに面白くてマズイ!と思った。
    早く先を読みたい。でも読みたくない。だって読んだら読み終わるじゃない。
    この恍惚の時間を手放したくない。だから日に日に読むペースが落ちる始末。結局読み終えるまで3ヶ月を要しました。(馬鹿)

    筆者はニホンザルやアイアイ研究の第一人者です。
    さすが研究者。観察が細かい。よくぞここまで書き留めた。いや書き留め続けた。なんと0歳から6歳までの膨大な記録と、そして考察です。

    「モリスの言うような無条件に『かわいい信号』があって、『幼児はその信号を備えているからかわいいのだ』というような動物行動学はエセである。」
    「イヌは命令―服従型だが、サルは命令―欺瞞型だと思うようになった(中略)禁止で赤ん坊が育つことはない(中略)人間はサルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す」
    「食卓のふちを伝い歩きしながら『あー』と赤ん坊が言う。新聞を読んでいた母親は、ほとんど無意識の様子で『あー』と答えた。聞いている私は驚く。それは、ニホンザルでは『鳴き交わし』と呼ばれている声のやりとりとそっくりだった。」
    「孫娘は坐り込んで、紙をばらばらと扱いながら、『うらうらうらうら』と何事か話し始めている。『意識化だ』と私はとっさに思う。」

    日常の些細な一コマが研究者の理性の目で輝き出す。
    でも理性だけではありません。

    「心は花のように開き」、「子どもは遊びを食べて育つ」。
    「ふくらむ心が始め出す表情を笑いと呼ぶのだろう。笑いをこらえるとき、体の中にはふくらむものが必ずある。」
    「なんと! 人は日々、自分を超えようとする動物なのだ。」
    「未来はすでにここに、孫たちとしてあるのだから。」

    研究者としての理性と祖父として深い愛情の見事な融合。
    決して人間の子育てを動物と比較した書ではない。命の物語を記した愛の書だ。
    読んでいるうちに孫が本当に欲しくなる。(自分の息子(2歳)は?)
    育児に悩み解決は大切だ。便利も自分時間も大切だ。でもそんなこと些細なことジャマイカ。何をさておいても子どもと関わりたくなる。育児書かくあるべし。

  • 猿の研究者である著者による、自らの孫(つまりヒト)が生まれてから小学校に入学するまでの『観察』の記録。

    動物学者だけに猿との比較もするのだけれど、孫の成長の様子がすごく生き生きと描写されていて、読んでいるこちらまで嬉しくなるように感じました。

  • 189 10/13-10/20

  • ほぼ半分を読んでいる途中です。
    思っていた以上に素晴らしい本だと思いました。

    まぁ・・・独身で子育て経験ゼロのオヤジに云われても説得力ないと思われますが・・・

    ただし、少子・高齢化が進んだ日本において、子育ては両親・祖父母だけでなく、地域を含めたおおらかなものである必要があるのでは?と感じている。

    もちろん、祖父母の代わりとしての、地域のオジサンオバサンの関わりの重要性だ。

    人類にとっての子育てとは、両親と子供だけの閉じた問題ではないということだと。

    本書の残りは大変興味深い!!!

  • 猿の研究者の「じいじ」の客観的かつ冷静な、孫観察日記。

  • 猿の観察が専門の動物学者の、孫観察日誌。0〜5才の保育園児の孫娘ちゃん、あの瞬間が重要な成長の証だったのか!と、我が事のように、楽しく読みました。観察の記録が専門的かつ愛情たっぷりでなごむ〜

  • [ 内容 ]
    ニホンザルにも孫がいる。
    しかし、サルのおばあさんは孫を特別な存在としてとくに意識することはない。
    だが、ヒトはちがう。
    孫と祖父母とのつながりには、単なる生物的な関係をはるかに超えた、社会的・文化的な意味が隠されている。
    本書は、ニホンザルやアイアイの生態を研究してきた研究者が、その手法でみずからとその孫を観察した貴重な記録である。
    かつて孫だった人、これから孫を持つことになるすべての人へ。

    [ 目次 ]
    1 ほほえみの生まれるとき
    2 心は花のように開き
    3 笑い
    4 新しい歌、新しい遊び
    5 遊びを食べて子どもは育つ
    6 恐怖とその克服
    7 心の枝は展がり
    8 「ごっこ」に夢中
    9 孫と祖父母
    10 心の香り
    11 彼方へ

    [ POP ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 平成23年1月27日読了。イヌは命令−服従型だが、サルは命令−欺瞞型だと思うようになった。
    人間はイヌではなく、サルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す。(P28)

  • 【書店】
    う~ん、終始一貫して単なる観察記録の域を出なかった。

  • 野生動物の研究者(特にサル)が自分の孫を観察した記録。というと研究者の視点で淡々と科学的に書かれているのかというと、半分は普通の孫大好きなおじいちゃんの観察記録になっているところがまたいい。
    精神的な成長が丁寧に書かれて2歳の娘を持つ自分にとっては共感もし、参考にもなった。
    6歳までの記録なので定期的に読み返したい。

  • 『孫の力』(2010,中公新書)は,おじいちゃんによる,初孫の成長観察記録です。目に入れても痛くないかわいがりようが察せられて,読んでいて愉快になります。

    でも,なぜ,そういった日常的な題材が新書に入ったのでしょうか。理由のひとつは,著者である島先生がサル学者だからでしょう。島先生は,たとえばご自分の娘さんとお孫さんのあいだで音声が交換されるようすを,ニホンザルの母子の場合と比較します。お嬢さんは,父親のそんな観察記録をあまりうれしく思わないかもしれません。

    著者は,ヒトの心[mind]が成長する過程を調べようとして,お孫さんの観察記録を始めたようです。本書では,お孫さんの誕生直後から小学校入学直後までの記録が示されています。しかし,そのあいだ,おじいちゃんがおじいちゃんであることをやめたわけではありませんから,観察者は観察対象を明らかに撹乱しています。いいのか? いいようです。

    その反作用で,本書の観察者は,観察対象によって撹乱されます。さらに,孫をかわいがりながら,自分をかわいがってくれた祖母の心を,著者は理解しようとします。そのとき,この観察は文学に接近します。

    本書には感動的な記述がいくつかあります。著者は,幼いころに聞いたメロディーを,お孫さんにピアノで弾いてほしいと頼みます。このくだりを読むと,人生が一周するとはどういうことかが,たいていのひとに肌で感じられることだろうとぼくは思います。

    それに比べると,お孫さんが自転車に乗る練習に著者がつきあっているくだりは,すこし分かりにくいかもしれません。

    「孫娘」は,小学一年の夏休みが過ぎたころ,「じてんしゃにのる」と祖父母に宣言します。そこで,「まえに自転車の練習をしていた近くの大学に行く」。著者は,はじめ孫娘が乗る自転車のうしろをしっかりおさえていますが,やがて黙って手を放します。しばらくして,孫娘が,もう手を放していいよと著者に言いますが,

    ■■■■■
    ……うしろから私は声をかける。「もう、離してるよ」
    「ええ!?」
     孫娘は少し驚いて振り返ったのでちょっとふらついたが、持ち直して銀杏並木を走り出した。
    ■■■■■

    著者が1969年に安田講堂のなかで闘った東大生のひとりであること,そういった卒業生に東京大学は図書館の本一冊さえ閲覧させようとしないこと,フリーランスの研究を続けた著者が本書で他大学の教授を恩師と呼んでいて,その大学から博士号を授与されていること,そして,著者が(著書『親指はなぜ太いのか』の記述によれば,すくなくとも2003年の時点で)いまなお東京都文京区に在住していること,などを考えあわせると,「銀杏並木」のある「近くの大学」構内でおじいちゃんがお孫さんの自転車の練習につきあっている姿が,ひとつの映画のラスト・シーンのように思われます。

  • じいじからの視点で孫を観察しているところがおもしろい!
    霊長類と人間の生育スピードの比較もなるほどとうなずける。
    親はついつい視点が近くなるけれど、一歩下がってこどもを見るということを意識できて、私は良かった。

  • 自分の子供と重ね合わせて、当事者には見えないことに気づかされたり、振り返ったりすることができたのは面白かった。

    時々入るサルの観察なども参考になる。

    何より、孫に向けられる著者自身の温かいまなざしが感じられるのが心地よい。

  • 霊長類学者が書いた本なので、サルの子供との比較にページが割かれているかと思いきや、孫LOVEなジイジの観察日記だった。その点では拍子抜けだが、文章にユーモアがあふれていて楽しい読み物だった。

  • 2010.02.21 日本経済新聞で紹介されました。
    2010.02.21 朝日新聞で紹介されました。

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著者プロフィール

1946年下関市彦島生まれ。東京大学理学部卒。理学博士(京都大学)、マダガスカル国五等勲位シュヴァリエ、雑誌『孫の力』監修。1978年(財)日本野生生物研究センターを創設、主任研究員を経て、国際協力事業団(JICA)派遣専門家として2001年までマダガスカルに6年3か月滞在。アイアイなどを上野動物園に送り、2002年より日本アイアイ・ファンド代表としてマダガスカル北西部アンジアマンギラーナ監視森林の保護管理を行って、現在にいたる。2012年、ルワンダ共和国でマウンテンゴリラの名付け親となる(日本人初)。ANAグループ機内誌『翼の王国』にて阿部雄介氏とともに『日本水族館紀行』(2007~2012年)、『どうぶつ島国紀行』(2012年~)を連載。『はだかの起原』(木楽舎)、『親指はなぜ太いのか』、『戦う動物園』(編)、『孫の力』(3冊とも中央公論新社)ほか、著書、論文・報告書多数。

「2004年 『はだかの起原 不適者は生き延びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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