天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書 2295)
- 中央公論新社 (2014年11月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022950
感想・レビュー・書評
-
<目次>
第1章 秀吉と二つの地震
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
第4章 災害が変えた幕末史
第5章 津波から生きのびる知恵
第6章 東日本大震災の教訓
<内容>
朝日新聞be連載の記事をまとめたもの。磯田先生の本はとても読みやすい。なぜだろうか?
日本史上の自然災害の歴史を得意の古文書解読の成果で丹念に拾い集めている。勿論、きちんと調べ論文にしている学者も多くいるのだろうが、この読みやすさのせいで、この本を読んだより多くの人に、過去の災害の歴史から学ぶことの多さに気づかせることが出来ると思う。
そういう意味で、タイトルがストレートなのだが、正鵠を射たタイトルで手に取ってもらいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
興味深かった。
筆者が『武士の家計簿』も著した方で、自分の足や目で得た知識から叙述するためかもしれない。
本書は生の哲学と結びついたベネデット・クローチェの歴史哲学に即して“天災に見舞われる現代”のために“天災から日本史を読み解いた”本である。
一章では災害が政治の流れを左右したことを豊臣氏の衰退に観察している。
二章では富士山噴火・南海トラフ大地震を主題においている。富士山噴火には南海トラフと近い時期に起こりやすいため、この2つは一つの章に収められているのだろう。
三章では、土砂崩れと高潮が扱われている。
四・五章では東日本大震災以前までに、どのように災害に遭い、どのように災害の後に行動したかを述べている。五章では特に、それで得られる教訓を書いている。
六章では東日本大震災からの教訓を記している。
科学を信奉したここ2世紀の流れからの変革を感じる本だった。
天災には上手な受け身を取れば被害を少なくできる。力ですべて押さえ込むのではなく、ある程度は最初から損なうこと等を見込む姿勢が求められる時代になってきた。近年の建築に減築という概念が採られてきたのも、これの一つの現れかもしれない。
日本史は天災に大きく影響を受けてきた。今もそうであり、今後もそうだろう。文明化により頭から追い出していた「災害」というものについて再考しようとする時代になってきた。
そして日本史の中に生きている我々は災害に遭った後、後世のために出来るだけ様々な方法で科学的・具体的かつ精密な内容を多く残していくことが必要だ。我々にはまだ点にしか見えないことが1000年後には線が見えるかもしれない。