天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書 2295)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022950

感想・レビュー・書評

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  • 震災史も手掛けているんだなぁ。地震というと理系の研究という感じがするが、歴史学的にも大きな研究対象なんだと知った。

  • 第一、事前に家族で地震時にどうするか話し合っているかで生死が分かれる。第二、いちど逃げたら、忘れ物を取りに家に戻ってはならない 松林はかえって危険。巨大津波では松はすぐに根こそぎ抜けて流され、人や住宅に襲いかかるのだと言う

  • 歴史という学問が現代や未来をどのように生きていくかの羅針盤となるものだということを啓蒙する優れた著作。歴史好きな私としては主語が「天災」よりも「歴史」の方がよかったが、それにしても素晴らしい仕事だと感じました。

  • 歴史ー過去の過ぎ去った事実ーを知ることに何の意味があるのか?と子供に聞かれたらどう答えるか。この本には、そんな問いに対する答えが詰まっている。と同時に、これだけの歴史が我々にありながら、人はやはり過去に学ばない・学べないものなのかと、歯がゆくなってしまう。それでもなお、まさに「温故知新」のために飛び回っている著者の努力には頭が下がる思いがした。

  • 「宝永四年亥の10月4日、昼の九つ時(正午頃)に大地震。高山がさけ、大地がさけ、自分の屋敷、上の山組屋敷、土蔵が押しつぶされたが、家内の者に一人もけがはなく前の畑へ逃げ出した。しばらく過ぎ、津波が打ち上げてきたので、山へ逃げ上った」(「寿栄公御遺訓 全」1738(元文三)年に今の浜松市西区雄踏町山崎にいた豊田九右衛門という男が、子孫に自分の人生経験を語り残したもの)
    これほど臨場感にあふれた記述もない。建物の倒壊からのがれ、さらに津波に追われて坂を逃げ登った恐怖が伝わってくる。(p.39)

    「この火炎に土砂が混じり、西風が毎日吹き、これにより、東国へ砂が降り、富士より東七か国が潰れた(甚大な農業被害が出た)。江戸も砂の厚さ4,5寸(12~15センチ)も積もった。火穴近所の村里は砂の厚さ一丈(三メートル)も積もり田畑はもちろん村里が潰れた」(金五郎日記歳代覚書)(pp.40-41)

     1680(延宝八)年閏八月六日の台風による高潮はとくに激烈なものであったという。
     この時の台風は江戸時代最大ともいわれ、江戸でも被害が甚大であった。『玉露叢』という記録に、このような記述がある。「(この台風が)江戸市中で吹倒した家は三千四百二十軒余。本所・深川で溺死七百人余。濡れた米が二十万石余。本所・深川・木挽町・築地・芝へ向って高潮があがった。所により家の床より四尺(1.2メートル)、五尺、或いは七尺、八尺(2.4メートル)である」。
     床面から測って2.4メートルの浸水だから、海抜三メートルを越える高潮が、現在の東京にきて、江東区深川から中央区銀座・築地、港区芝を浸けたことがわかる。東京都心の低地では、津波がこなくても高潮で海抜三メートルまでは繰り返し浸水してきた歴史があることは知っておきたい。(p.96)

  • 歴史学者が、日本列島を襲った天災を過去の記録から検証した本。周期的に起こる地震などの被害が、今を生きる私たちに教訓になるかも知れない。江戸時代に富士山が噴火した時の様子には驚かれたし、桃山時代に天災が政治に影響を与えたという話も興味深い。

  • NHK「英雄たちの選択」の司会をしている磯田先生、本でもテレビ同様に語りが熱いです。
    災害を研究するようになると、もう誰も災害で死んでほしくないと思うようになる、というのは自分にも経験がありますが、磯田さんもそんな思いがあるのでしょうな。

  • 日本史の1つの切り口、災害史。
    日本は歴史的に数多くの自然災害に遭遇している。
    このため、それを遺した古文書が数多くあるというのが、
    磯田氏が繰り返し伝えられている過去の災害の記録である。
    東日本大震災から月日が経つにつれて、地震や津波に対しての関心が早くも薄れつつあることを感じる。
    しかし、過去の歴史に学ばなければ、将来に来たるべき災害から自らの身を守ることはできない。
    改めて、身近な地域から自然災害について考えてみたい。、

  •  古記録に残る天災の資料のいくつかを紹介し、今後の防災に役立てようという趣旨である。わが国は世界有数の天災多発地帯にある。台風は低気圧による季節的な被害に加え、長期的で予測不可能な大地震や津波の害を繰り返し受けてきている。その数は膨大だ。
     にもかかわらず、私たちが日々の生活に恐怖を感じることがないのは、私たちの寿命と関係している。大災害が発生しても次に同じ規模のものが来るまでには人生のスパン以上の時間の流れがあるのだ。強い痛みも時間の流れの中で風化してしまう。
     それでも、先人の残した記録によって救われる命もあったようだ。本書で紹介されているエピソードの中には、古記録や口碑を尊重した集落が奇跡的に救われたというものがある。歴史に学べとは災害史以外でもよく聞かれる言葉だが、被災時ほどそれが切実に感じられることはないだろう。
     本書には災害が起きたときに何をすべきか、してはならないかという事例が先人の残した記録から示されている。これは語り部の翁の至言として記憶にとどめたい。
     本書でもう一つ興味深いのは、限界状況を迎えた時の過去の日本人の行動である。津波が来襲し老母と息子のどちらか一人しか助けられない時、我々ならどういう決断をするだろうか。記録では泣く泣く子を捨てて母をとったという。似たようなエピソードは説話文学の中でも見た気がする。儒教的な人生観によるものと考えられる。では、現代人の限界状況を支えるのは何か。それも気になってしまった。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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