ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書 2410)

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  • 中央公論新社
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感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024107

感想・レビュー・書評

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  • この水島氏の文体(スタイル)がもっとポップなものであったら(優しく語りかけるような、柔らかいものであったら)、もっとバカ売れしているのではないだろうか。と思うくらい面白い。
    ただ文体が硬質で、生真面目であるため少々とっつきにきい感がある。しかし各国のポピュリズムの伸長を具体的に丁寧に書いてあるので、非常に分かりやすい。この本を読んで腑に落ちたことは多い。
    おもしろかったです。

  • 最近、報道番組で「ポピュリズム」という言葉を聞くが、政治に明るくない私にとっては謎の言葉だった。
    (「ポピュリズム」は「大衆迎合主義」や「人気取り政治」とも説明される、とのこと。)

    本書では南北アメリカ、ヨーロッパ諸国の事例をあげて、ポピュリズムの様々な有り様が解説されており、分かりやすかった。
    日本はポピュリズムとは関係ないと思い込んでいたが、「維新」の躍進はポピュリズムの波だったのかと、認識を新たにした。

    あとがきによると、
    ・本書の執筆作業は2年余りに及ぶ。
    ・イギリスのEU離脱を問う国民投票が行われ、トランプのアメリカ大統領当選が決まった2016年の締めくくりに刊行、
    とのこと。
    更に今年2017年は、フランス大統領選挙も控えており、世界の政治から目が離せない。

    このタイミングで本書に出会えてよかったと思う。

  • 20170420〜0506 英国のEU離脱、反イスラムなど排外主義の広がり、トランプ米大統領誕生…世界で猛威を振るうポピュリズム。大衆迎合主義とも訳され、民主主義の脅威とみなされがちだが、ラテンアメリカでは、エリート支配から人民を解放する原動力となりヨーロッパでは既成政党に改革を促す効果も指摘されている。
    では、我が国ではどうだろうか。維新の会を著者は例示しているが、ポピュリズムも自民は内方しようとしているように思える。文章は、読みやすかった。

  • ここ10数年、日本も含めて世界をにぎわせている「ポピュリズム」というものに焦点をあてて、わかりやすく解説してくれる1冊です。
    テレビや新聞などの報道をみていると、「ポピュリズム」=極右で、民族主義的・排外的なイメージが強いですが、本書を読むとその性格が大きく変わってきていることを強く感じます。
    ヨーロッパにおけるポピュリズム勢力の伸長に際して、「リベラル」と「デモクラシー」という西洋近代世界が最上位に掲げてきた価値観をうまく活用していることがひしひしと感じられます。
    日本における報道(国内外どちらについても)においても、「ポピュリズム」というパッケージでとらえるのではなく、それぞれ異なっている各現象を個別に丁寧に伝えてほしいなと感じられました。

  • 17/03/30。

  • ポピュリズムなんて聞いたことなかったんだけど、こうして見てみると今はポピュリズムだらけなんだなあと納得。
    民主主義=言いたいことが言える、みたいなイメージがあるので、ポピュリズムvsデモクラシーみたいな風にはあんまり思えなかった。
    むしろ民主主義がなかったらポピュリズムも出てこれないよね?と思う。
    なので、前提みたいなのがピンとこなかったわけだけど、大変おもしろく読めました。
    前半のポピュリズムの歴史、みたいなのは頑張って読みましょう。
    やはりハイライトはEU離脱騒ぎの解説と思います。
    どうしてこんなことになったのか、不思議でしょうがなかったけど、これを読んで少し理解した気になりました。
    まさかトランプ騒ぎと根が同じだとは。
    昔何かの映画で見た、鬱屈とした白人肉体労働者達がパーッと思いだされた。
    こうしてみると離脱賛成派というのは、日本でいうところの団塊の世代ということに近いんだろうか。
    だとすると厄介だねーwとよその国のことながら同情する。

  • 今まさに知りたいことが簡潔にまとめてある。情報量も圧倒されるほどではないけれど、知識の幅が着実に広がる。久々に新書の力を感じる、分かりやすくて良い一冊だった。

    世界中でポピュリズム大旋風が巻き起こっている中、いわゆる「エリート」層がどう考えていくのかが非常に重要だと改めて思う。我々には我々の世界しか見えていない。彼らの視野と「取り残された者」たちのそれは交錯することはあるのだろうか。政治を語る上で不可欠な知識を得るとともに、これからの社会を担うために必要な姿勢とは何か、考えさせられた。

  • ポピュリズム≠右翼、左右というより上下の構造。最近では移民受入れと結びつくが、イスラムの思想が排外的故に多文化思想に反するという考えに基づく。

  • 【181冊目】2016年はまさにポピュリズムの年だったといって良いだろう。その代表が、代表的なデモクラシー国家と思われていた英国におけるEU離脱国民投票と米国におけるトランプ大統領の誕生だ。しかし、実はイタリアやフランス等の先進諸国、あるいはハンガリー等の東欧においてもポピュリズムが表出させたと思われるような現象が起こっている。フィリピンで犯罪者を超法規的措置によって殺害しつつも圧倒的な人気を誇るドゥテルテ大統領が誕生したことは、アジアとてポピュリズムから自由な地域だとは言えないことを示している。こうした政治情勢を目の前にして、この本に引かれない人がいるとしたら、それはニュースに触れていないか、あるいは政治や社会に興味が全くないかのどちらかだろう。

    著者は、オランダの政治研究者であるが、本書ではポピュリズムを横軸と縦軸の事例研究で見せてくれる。すなわち、初期のポピュリズムとしてアルゼンチンを、そして、ポピュリズムが政治経済的に安定していると思われていたヨーロッパ諸国においても勃興していく様を明らかにしてくれる。
    本書の興味深い点は、ラテンアメリカにおけるポピュリズムの発展と西欧諸国における発展は、その背景にある事情・論理が全く異なるということにまで言及していることである。すなわち、前者は社会経済的な格差を縮小させるため数々の福祉政策を御旗として掲げ大衆の支持を得ていくのに対し、後者は社会に根ざしたリベラルな価値観を守るためには移民・難民を排斥しなければならないと唱え、それらの排斥に二の足を踏む既存のエリート層を民意に鈍感な人々として対置するのである。

    事例研究を通して著者が明らかにするのは、ポピュリズムのポジティブな面である。すなわち、初期は極右の強力なリーダーによって率いられていたと思われたポピュリズム政党は、自らの生き残りと大衆からの支持を獲得するため、自らその主張や体質を変えていく力がある存在であるということである。さらに、最も重要な事は、ポピュリズム政党は、大衆の政治参加を促し、政治という場面を活発にする。のみならず、大衆からの支持を獲得していく様を見せつけることによって、既存政党に改革を促すという効果をも持っているのである。ただし、筆者は最後に、ポピュリズムが野外にとどまらず、与党や大統領になってしまった場合、それは本当に良いことなのかということについて簡単に疑問を呈す。

    筆者が正しく指摘するとおり、ポピュリズムとはデモクラシーに対置される概念ではなく、むしろ内在するものであろう。2016年の米国大統領選挙を見ていると、対置を唱えたくなる気持ちも分かるが、それは各州の代表人総取り制という米国の独特なシステムの帰結であって、対置することを正当化しない。むしろ、いにしえの人々が指摘したように、大衆による政治は衆愚政治に陥る危機を常にはらんでいるのである。三権分立において司法が独立しているのは、そうした場合におけるセーフティーネットの側面があるとぼくは前々から考えてきたし、また、英国が議院内閣制を採用しているのは、民意をすくいあげるシステムを担保すると同時に、国を率いる行政府の長を衆愚政治の醜い産物にしないためのものだと考えてきた。
    人々の不満を放置しておくことは絶対に良くないし、そうした不満は革命やテロといった形で噴出してきたことは歴史が教えるとおりである。しかし、国を率いる人間に求められるのは、場当たり的に人々のガス抜きをすることだけでなく、崇高な理念の実現と将来を見据え国を良い方向に導くことである。実は大衆もそれを望んでいるのであって、そういう意味で政治家とは、医師と共通する性質を持つ職業なのだろうと思う。すなわち、個別具体の要求の実現というよりも、むしろ、「良い結果をもたらしてください」という曖昧な希望を叶えるための職業なのである。

  • 世界同時多発のポピュリズム。民主主義と相反するものではなく、「デモクラシーに内在する矛盾を端的に示すもの」「デモクラシーの原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果としてポピュリズムを正当化することになる」やはり民主主義は道半ばなのだ...ヨーロッパがやけに詳しいわりに韓国が入ってないのが?著者の専門はヨーロッパらしい。私としては韓国こそポピュリズムが行きすぎてパンギムンが大統領選辞退するような明らかに政治が後退するような状態になっているのだが。今、書くなら入れてほしかった。選挙制度に応じていかにのしあがり、イスラム憎悪に便乗していかに大衆の心をつかむ。読んでいるうちに疑問がわく…背景にあるのは多様性なのか。総中流社会でなくなったことで、互いに憎しみの心がわくのか。私たちはまだまだ未熟者だと気づかされる。

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著者プロフィール

千葉大学大学院社会科学研究院教授(千葉大学災害治療学研究所兼務)

「2022年 『アフターコロナの公正社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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