自民党―「一強」の実像 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024282

作品紹介・あらすじ

自民党は結党以来38年間にわたり政権を担い、2度「下野」したが、2012年に政権に復帰。一強状態にある。その間、自民党は大きな変貌を遂げた。本書は、関係者へのインタビューや数量的なデータなどを駆使し、派閥、総裁選挙、ポスト配分、政策決定プロセス、国政選挙、友好団体、地方組織、個人後援会、理念といった多様な視角から、包括的に分析。政権復帰後の自民党の特異な強さと脆さを徹底的に明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 時代による変化や首相の比較が興味深かった。

  • ふむ

  • 著者は日本政治研究者。55年の結党後というよりは、90年代以降の自民党を主に扱っている。

    自民党の実像を考える際避けることのできない、公明党との連立、団体(経済・宗教など)との関係、個人後援会、世襲といったトピックが満遍なく論じられている。ただ、統一教会についての言及はない。

    著者によれば自民党の支持基盤はかつてよりも弱体化している。しかし2度の下野を経験しながらも、その度に政権に返り咲いたことから、とりわけ地方の自民党の地盤は簡単に崩れないことを示しているようだ。

  • 『日本共産党』に続き読んでみた。
    良し悪しはわからないけれどどの党にも偏らず新書の範囲にあり得ない濃さをコンパクトにまとめていると思う

  • 『日本共産党』の著者が描く、自民党の強さの正体。
    組織内部、選挙戦略、支持団体との関係などから、自民党を支えるものの正体に迫る。

    『日本共産党』に比して、私のような素人にはやや込み入った記載が多かった印象で、読み進めるには少し時間がかかった。それでも読後は、テレビややかましい街頭演説でしか知ることのなかったかの党がすこし立体的に見えるようになった。

    時候がら、白眉と思われるのは支持団体との関係について書かれた部分。その中では宗教団体との関係にも触れられている。それを読んでわかったことといえば、特定の集団が自民党の政策を大きく揺るがすことはなく、影響力も限定されているということ。しかもその結びつきは緩やかなものであるということである。

    私は自民党員でも支持者でもない”無党派層”だが、いたずらに特定団体との過去の関係ばかり取り上げる野党やメディアは、一回この本を読んだ方がいい。

    無論、宗教2世の問題や霊感商法の問題に改めてスポットがあてられ、それに苦しむ人(もしくは自分が苦しんでいるということに気づけてすらいない人)の救済につながることには一定の意味があることは否定しない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689610

  • 自民党の歴史 組織の内側がよくわかった

  • 自民党について、派閥と総裁選、党と官邸、友好団体、地方組織と個人後援会の関係からデータを元に分析する著書。自民党の変遷の中で、特に大きな影響として挙げられているのは、中選挙区制から小選挙区制への移行と、小泉純一郎の新自由主義的改革による派閥と地方組織の解体だ。また、小泉との比較で、安倍晋三の選挙と政治手法の違いが述べられている。
    総裁選は、自由党と民主党の合併に伴い、公平性を保つために定められたが、その結果として派閥が多数派工作として成立した。派閥は、人事ないし利益に依存しており必ずしもイデオロギーと一致しない。それぞれ会則や常勤職員など機関として成立しており、党の中に党があるような制度だ。したがって、自民党は派閥連合政党のようなものである。加入のメリットは、総裁選、国政選、政治資金、ポストが派閥内で交換要素となることだ。
    ・吉田茂→佐藤栄作→田中角栄木曜クラブ→竹下登経世会→平成研究会
    ・吉田茂→池田勇人宏池会ハト派リベラル派→森喜朗不信任同調の加藤の乱で分裂、再統合するも分離→一部は谷垣禎一有隣会へ。
    ・岸信介清和会タカ派右派→森喜朗、小泉純一郎で最大派閥→安倍晋三
    ・鳩山一郎→中曽根康弘→渡辺美智雄→亀井静香→二階俊博志師会
    ・麻生太郎為公会
    1.2章派閥、総裁選
    総裁・副総裁、幹事長・総務会長・政調会長、衆参議長は派閥を離脱するが、小泉首相の後ろ盾で無派閥議員の研修、情報共有の場を提供し、小泉チルドレンなる無派閥の流れを作った。→結局は人脈作りの点から派閥へ加入する傾向へ。
    石破茂水月会
    支持者がばらける中選挙区制(2〜6人)の同選挙区争いを避けるため、最大政党に有利な小選挙区制(1人)への改革は自民党にとって必至だった。自民党の政治家は、派閥に所属→企業や団体から派閥へ流れる政治資金で、個人後援会の維持→派閥からポストを得て発言権・集金力を強化→派閥内の出世・総裁候補を目指すようになる。
    リクルート贈賄事件による政治の金権腐敗を契機に、政治改革。小選挙区制となり、派閥は分散化し資金力が減退→党の公認がなければ当選しにくくなり、党の統率力が増した。
    総裁選では、選挙の顔であることが条件となり、派閥をまとめる力とは一致しなくなった。そこで台頭したのが青嵐会を前身とする中川昭一の真・保守政策研究会で、死後は安倍晋三の創生日本となった。「戦後レジームからの脱却」のために中国を非難、外国人参政権、夫婦別姓に反対、尖閣・竹島への強硬、改憲、歴史教科書の従軍慰安婦記述見直し。
    小泉政権により抜擢人事で派閥の人事関与の慣習が弱まり現在に至る。
    2004には人事自己申告制度が導入され、議員が直接総裁に自らの関心分野、専門能力を伝えるようになった。
    3章政策決定
    政策決定は省庁区分にほぼ相当する部会によって行われる。議員だけでなく、法案作成修正をする官僚が参加し、議員に要望を伝える業界団体が部会に参加することもある。60年代後半から、官僚よりも、政権が長くなり、調整力がありポストも入れ替わらない自民党の族議員(中堅議員)優位に政策決定を行うようになった(官邸主導)。官僚は縦割りでポストが入れ替わる。特にその傾向が強いのは税制調査会で、一握りの幹部が多様な団体と調整を図る。→小泉政権で無視、経済財政諮問会議(大蔵省不祥事解体で内閣府設置)で内閣主導にした。特に郵政民営化では、反対を抑えるために衆議院を解散し、抵抗勢力と呼び、自民党公認を外し、全員に対立候補を立てた。
    →安倍首相は、諮問会議のほかにも政策会議を多数乱立するが、それは自民党の事前審査も通してスケジュール付きで多数投入することで、修正を乏しくさせた上で、党議拘束も担保できるので、官邸主導の補完的な役割として成立させた。農協改革に顕著。民主党が政調会・事前審査を廃止して、政策に関与できない議員の不満を溜めた失敗の反動もある。
    中選挙区制では専門分野で族議員として棲み分けが求められたが、小選挙区制によりオールマイティである必要が出てきた。2009の政権交代もあり、族議員の情報減少で追い討ちをかけた。
    4章国政選挙
    小選挙区制で得票率が重要になり、無党派層を取り込む必要から、橋本龍太郎を総裁にするなど「選挙の顔」ポピュリズムに傾倒した。小泉の新自由主義改革は既得権を抵抗勢力とし、普通の人々の味方として、劇場型政治の手法をとった。無党派層はメディアを通じてしか情報を得られないため、広報改革をすすめた。1999連立した公明党は創価学会の票が固く、不況や財政抑制で減少した自民党の固定票を補った。公明党の都市部の貧困層と、自民党の地方農村部との補完関係にある。
    5章友好団体
    業界団体から自民党団体総局の委員会を通じて、政調会の部会に要望がいき、政策の見返りとして票・カネが動く(利益誘導政治)。財界(大企業の経団連、中小の日商、経営者個人の同友会、ITの新経連)は、社会党阻止と利益誘導政治の抑制を訴えた。中選挙区制を背景とした金権腐敗、個別企業から個別の政治家には、直接渡ることは避けられる。
    小泉構造改革、民主党政権で離れた友好団体は、アベノミクスの三本の矢「金融緩和、財政出動、規制緩和」で再度強固な関係となった。また、経団連も献金で政策をカネで買うと批判されるようになった。
    6章地方組織と個人後援会
    小選挙区に自民党支部を置き、個人後援会でネットワークを築かせ、人脈を世襲することで安定的に有力議員を維持する。
    終章変化する組織と理念
    小泉郵政民営化は田中派経世会・平成研の利益誘導政治を崩すことを目指していた。
    安倍晋三の影響で、2009政権交代で民主党との差別化を図るため憲法改正を押し出し右傾化し、2012案では国防軍、天皇元首を打ち出すまでに至った。
    安倍は、小泉と比べ無党派層よりも地方組織や友好団体の固定票を軸に公明党への配慮を欠かさないことで政権を安定させている。

  • 自民党の歴史と勢力図を理解するための「派閥」、近年の総裁および幹事長ポストの権力増大を理解するための「総選挙とポスト配分」、支持の源泉がどこにあるかを見るための「友好団体」「地方組織と個人後援会」といった具合に、複眼的に自民党の正体に迫ろうとしている。〈現在の自民党は、政治改革への対応を経て、民主党に対抗するなかで形作られてきたといってよい〉という結論にいたる道筋は、本書のなかでおおむね裏打ちされていると思う。野党勢力が民主党政権「失敗」の痛手から立ち直りきらず、低い投票率が続いているなか、相対的に多い固定票を持つうえに公明党と選挙協力ができる自民党が有利に国政選挙を戦っているという分析も、うなずける。すごく面白いかというとそういう本ではないが、自民党の現在地点を理解するという意味で、非常によくまとまった一冊。

  • 派閥の性格の変化、事前審査制度の変化などから自民党の政治的強さを論じている。中北さんの政治史系の本は読んだことあったが、現代の政権を分析している本は読んだことなかった。しかし、非常に緻密な分析をしており読みごたえがある。

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著者プロフィール

一橋大学大学院社会学研究科教授。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)(東京大学)。大阪市立大学法学部助教授、立教大学法学部教授などを経て、2011年より現職。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。
著書に、『現代日本の政党デモクラシー』(岩波新書、2012年)、『自民党政治の変容』(NHKブックス、2014年)、『自民党──「一強」の実像』(中公新書、2017年)、『自公政権とは何か』(ちくま新書、2019年)、『日本共産党』(中公新書、2022年)など。

「2022年 『選択的夫婦別姓は、なぜ実現しないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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