天翔の矢 (C・NovelsFantasia ら 1-3 ヴァルデマールの使者 3)
- 中央公論新社 (2009年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784125010632
作品紹介・あらすじ
研修を終え宮廷に戻ったタリアだが、直後、「女王補佐」としての決断を迫られる。エルスペスにもたらされた、隣国の王子アンカーとの縁談を巡り、議会が分裂していたのだ。セレネイは一見申し分のない縁談に罠の臭いを感じて迷うが、証拠はなにもない。呼応するかのように、不穏な動きを見せるオーサレン卿。ついに女王の命令が下り、クリスとタリアは隣国の偵察に向かうが…。
感想・レビュー・書評
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たった今さっき、読了。
ちょっと、言葉が出なかった。なんて素晴らしい結末。
これでこそラッキー。これこそがヴァルデマール。
そう、心から思った。
タリアの物語、「矢」三部作。
創元のシリーズとは、ちょっと毛色の違った物語。
どことなく陰鬱な影が全体を覆っているかのような感覚を、ずっと受けていた。
思えば、シリーズ一作目の<a href="http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4125009996" target="_blank">女王の矢</a>から、その兆しはあった。
タルマとケスリーの物語も陰鬱なシーンからの始まりだったけれど、彼女たちのシリーズには、それを払拭する明るさがあったと思う。
タリアの物語には、その明るさが足りていないとずっと思っていた。
このシリーズにユーモアが足りないというわけではない。
軽快なユーモアのセンスはラッキーの作品に欠かせない魅力の一つであり、本作においてもまったく衰えることはない。
そうではなく、物語の背景や、その先に待ち受けていることを予感させるような、得体の知れない不気味さが、全体の根底にあるような気がしていた。
そして本書で、ついに、その「闇」が姿を現した。
矢三部作のあとに続くのが、<a href="http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4488577075" target="_blank">宿命の囁き</a>。この作品は、風三部作の始めの一篇でもある。
本書を読んだことで、風三部作はより一層の魅力を放つようになったと思う。
ヴァルデマール年代記は、すべての物語同士が、密接に繋がって紡がれている。
それぞれの作品として素晴らしい上に、すべてを並べて俯瞰したとき、とても壮大な一枚絵が登場する。
ここまでの物語を紡ぎ出すマーセデス・ラッキー氏は、ただただ偉大だという他ない。
ヴァルデマール年代記に共通している点がある。
それは、ラストシーンが極めて美しく、素晴らしく感動的で、最高のカタルシスを感じさせてくれること。
本書も例外ではない。
それどころか、これまでの作品でも一二を争うほど、美しく胸を打つ、そんなラストシーンだと思う。
物語を覆っていた霧が、さあっと晴れていくかのようだった。
単純なハッピィエンドではない。起こってしまった悲劇を消し去ることは出来ない。
哀しみに満ちた土壌に綺麗な花が咲き誇る、そんなラストシーンだと感じた。
そしてもう一度、改めて風三部作を読もうと思った。
訳者あとがきによれば、次はヴァニエルの物語になるような感じ。
創元のシリーズは別の方向で、中公は展開していくのかな。
訳のペースが圧倒的に遅れているみたいなので、こういう展開もありかのかも。
すべての翻訳権を中公が取った可能性もあるのかなと思ったりもする。
けど、山口氏の訳が読めなくなると言うのもちょっと寂しい。
澤田氏の訳も、充分な質を誇ってはいるのだけど、個人的には山口氏の訳が、やっぱり好きだなと思うので。
ということで創元側も、早く次の作品を出して欲しいなー、と。
何にせよ、途中で訳が止まるなんていう最悪の結末だけは、どうか勘弁願いたい。
ファンタジィは売れないのかもしれないけど・・・。
お願いしますよ、ほんと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「女王補佐」という特別な「使者」として一人前となったタリアは、政治の世界に足を踏み入れ、自分の周囲に悪意を感じ、しかしそれに対応することも上手くできず、とまどうばかり。女王の娘であるエルスペスの元へ敵国の王子アンカーとの婚約の話が持ち上がるが、それは破滅への序章なのか?
まずは、完結おめでとうございます。旧版の「ヴァルデマール王国年代記〈1〉女王の矢 上」を読んでから十五年くらい。まさかこんな日がくるとは。思っていたよりずっと展開が早いし。最終巻の前半は政争、そして後半は国の外へ出るアクションと、盛り上がる展開だった。盛り上がるのは盛り上がるんだけど、そ、そこまでやる?というくらい、ずたずたにしてしまうんだもんなあ……。まあ、終わりはハッピーエンドだし、この後の物語(「運命の剣」「宿命の囁き」)はすでに出版済みなので、安心していいんだけど、とてもそうはできない展開だった。ああ、しんどかった……。後半は一気読みすることをおすすめします。しんどかったけど、それだけのカタルシスはありました。満足。 -
14:「ヴァルデマールの使者」シリーズ読了。大作のなかのいちシリーズという位置づけなのか、このシリーズだけでは消化不良感が残りました。ハードーン国はどうなったのか、オーサレン卿は何だったのか。訳がとても読みやすくて、あまりにさらっと読めてしまうので、メリハリに欠けたなあと思う部分もあります。スキッフやシェリルなど、好きなキャラクターが多いだけに残念。他のシリーズとのリンクを探すのも楽しそうだけど、ひとつのシリーズという枠内で話は終わらせてほしかったです……。
面白い設定がたくさん登場しただけにとても残念。 -
タリアさんシリーズ最終章なのかな?個人的にはええ?っと思うような展開でした。
まず、女王補佐って一人しかいない結構重要なポストなのに気軽に先行で出して良いの?…と言うのが一つ。しかも2人だけで。前回の修行は正使者になるための通過儀式だったのでわかるんですが。もう少し情報収集してから行かないのかな?情報収集こそが彼らの役目なのだとしたら情報伝達方法をきちんと考えていなかった辺りも杜撰だし(鳥とか使うのかと思った)。初めて訪れる土地なのだし10名ぐらいで行っても良かったんじゃない?とこちらの方がハラハラしました。後、敵の行動も結構いきなりですよね。なんだか怒涛の展開に違和感を感じました。
後半、ダークの行動は献身的ではあるのですがそれ以前の行動がマイナス過ぎて正直、今更…という感じが拭いきれませんでした。っていうか周囲の人間もう少しフォローしたれよ!と思うがそれどころではなかったのか(そりゃみんな忙しいしね)。それにしても最後の方でタリアがダークに私の受けた傷よりあなたの心の傷の方が重い、みたいなことを言った時は目を疑いました。正直、この本を書かれたのが男性作家だったら問題になりかねない暴言だと思うんですが。いや、どう考えたって敵に捕らえられて精神的・肉体的に拷問受けたタリアさんの方がどちらの傷も重いでしょうに。
ぶっちゃけクリスはなんだったんだろう…。なんか物語の展開に都合よく使われた気がしてならないです…。(二人の絆を深める為、の)最後の結婚式でもそれ以前の裏切りと残虐な拷問シーンと戦争の後味の悪さは拭いきれませんでした。と、色々とすっきりしないのにハッピーエンドと言われてもちょっとどうなの?と言う感じです。序章ということなので続きのシリーズで問題が解決することを期待して。 -
ヴァルデマール王国の「矢シリーズ」第3巻、最終巻。
3巻は前もって、タリアがかなり悲惨な目にあうと分かっていたけどやっぱりきつかった。ヒロインがこういう目に遭うのって他でもないわけでもないが、しんどいのが相手が名無しモブってのが・・・無造作に書かれたのが逆にショックだった。
クリスー!正直ダークより好きだったから分かっててもこの展開にはかなりへこんだ。3冊通して読むと、やっぱり創元よりも、中央公論の方が読みやすい。翻訳の澤田澄江さんとマーセデスラッキーの相性がいいのかな。 -
再読ー。
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ハッピーエンドなんだけど、スッキリしなかった。ちょっと…ガッカリ。
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ようやく読破。
最終巻だけあって、息もつかせぬ展開。まさか、彼がああなるとは……という。私は彼が一番好きだっただけに、何と言うか、衝撃的でした。
まあ、黒幕は予想がついてたけど。
ラストシーンは、涙しました。ああいうの大好き。 -
2009年4月25日読了。
かなりハードな内容でした。
怒涛の最終巻・・・。いきなり主人公がここまで痛めつけられてしまって、結構びっくり。
一気に1日で読んでしまいました。
ここからまだまだ先が長いシリーズ。
ぼちぼち読んでいきます。 -
これを読んでようやく話がつながりました。