百歳日記 (生活人新書)

  • NHK出版
4.10
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本棚登録 : 159
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883327

感想・レビュー・書評

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  • 「年をとったからこそ新しい世界が開けるかもしれない」(p15)

    新しいノートを初めて使うときには、必ず「よろしくお願いします」とノートにもあいさつをします。(…中略…)あとからノート様が気を悪くしたら困るんで、あらかじめ予防線を張っておるんです。「ノートにあいさつする人はあんまりいない」なんて人によく言われますが、私くらいの年齢になったら、みなさんもそうなさるかもわかりませんよ。(p19)

    以上は抜き書きです。一番、今心にしみる言葉はp131のあたりです。全体に、ひらがなと漢字の割合や使い方が優しくて心地よく、何度も読み返しています。私も100歳になったころには、こうした心持ちになれますように…。

  • 以前NHKでまど・みちおさんのドキュメンタリーが放送されたが、それをもとに、詩と絵を加えたもの。

    「ぞうさん」「不思議なポケット」など一度は歌った歌の作詞者でもある。

    ちいさなものからのほのぼのとした視点の詩をつくったかと思えば、いきなり世界を裏返すような鋭いまなざしのものまで。

    百年、と一言で言うと、その年月を想像して途方もなく感じるけれど、一日一日一歩一歩のことだけ考えて繰り返すなんでもない毎日の積み重ねの思想がこうしてここにある、という感じでした。

    「地球の用事」という詩が好きです。

  • 百歳を迎えた詩人の、日々と思いを綴ったエッセイです。百歳ともなると、まどさんの身体にもいろいろ不便が生じてこられたようですが、病床にありながらもその感性は、いまだ衰えることなく瑞々しいままというのには驚かされます。ご本人は謙遜しておられますが、心の広い優しい人となりが伝わってくるようです。いくつになっても好奇心を持ち続けること、好きなことをずっとやり続けることというのは、誰にでもできるものではありません。まどさんにとって詩を書くことは、きっと天職だったのでしょうねぇ。
    まどさんの眼差しで世界を見れば、イライラすることが馬鹿げたことに思え、穏やかな気持ちになれますよぉ。

  • なんてまあるい心なのだろう。
    なんて温かな眼差しなのだろう。
    なんて可愛いお人なのだろう。

    百歳になられたまどみちおさん。
    感謝と感動と愛しさに溢れているまどさん。
    何も感動しないときは、自分が無感動であることに感動するまどさん。
    うっかり仁丹を落としたとき「こんな小さなものをあんなに一生懸命になって引っ張ってくださるかたはどなただろう?」と思わずにはいられないまどさん。

    まどさんは新しいノートを使うとき、必ずノートに挨拶をする。
    「よろしくお願いします」「私は粗忽者だからめちゃくちゃなことを書きますよ。覚悟しておいてください」
    まどさん曰く、「もともとは立派な木か何かだったのに、こんな紙にされちゃってね、ノートも犠牲者なんですから」

    最近、老いの苦しさ辛さを訴えることが増えた里の母にと購入したのだけれど、大いに励まされ癒されたのは私のほうでした。

  • (2011.01.17読了)(2011.01.10借入)
    まど・みちおさんは、日本人のほとんどの人が知っているであろう、「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」という歌の作詞者です。とはいっても、歌詞を書くのが仕事ではなく、詩人です。生まれたのが、1909年11月16日ということですので、100歳を超えてしまいました。僕の娘が通った高校の近くにまどさんの自宅があるので、何度か表札を眺めながら通り過ぎたことがあります。残念ながら、まどさんを見かけたことはありません。
    この本は、まどさんが、100歳前後のことを綴った日記と、幾つかの詩と絵で構成されています。まどさんは、詩を書くだけではなく、抽象画を書くのも好きなのだそうで、この本にも抽象画がいくつか収められています。
    神さんがまど・みちおさんのファンで、自分で読んでから、簡単に読めるから読んでみて、と回ってきました。
    ひらがなの多い文章なので、読みやすいのですが、書いてある文章には、百年生きてきた分の内容があるので、味わって読むことができるでしょう。

    ●百歳(12頁)
    歳をどんどんとっていくことは私のやることではなくて、神様が知らないうちにやってくださることなんです。ですから私は何とも言えませんが、こんなに簡単に百歳になってしまうとは思ってもみませんでした。
    ●生きていることは変化(15頁)
    生きているということは、何もかも全部生きているということです。生きているということは、いつも変化し続けているということです。
    ●ノートに挨拶を(19頁)
    私は、小さいノートを日記帳にして、そこに書き込んでいます。新しいノートを初めて使うときには、必ず「よろしくお願いします」とノートにも挨拶をします。もともとは立派な木か何かだったのに、こんな紙にされちゃってね、ノートも犠牲者なんですから。
    ●耳が遠い(24頁)
    耳の方はもう、遠くなりっぱなしです。何かを言っていることは聞こえるけど、何を言っているかは聞こえないことが多い。
    (僕も耳が遠くなってきました。)
    ●けしゴム(64頁)
    じぶんで じぶんを
    けしたのか
    いまさっきまで
    あったのに
    ●戦争(81頁)
    世界ではいまだに戦争が続いておりますが、敵と味方という分け方も、非常に下品な分け方です。本来、人間は生まれつき敵も味方もないんです。
    ●戦争の原因(85頁)
    何かと言うと嫌いだの、ひどいだのと言ってはすぐに刃物を持ち出したり、鉄砲を持ち出したりするようになることが戦争の元々の原因になることが多いのだし、それを大げさにするのが戦争ですから。自分と反対だという人のことを、否定するのは自由だけれども、だから駄目だと言ってそいつに害を与えようとするのは、いけないことだ。
    (戦争で人を殺すのも、殺人罪で罰することができるようにできないものでしょうか?)
    ●よく見る夢(106頁)
    一番多いのは無線乗車の夢です。電車に乗っていたら「無線乗車がいるぞ~!」って、車掌さんや乗っている人たちが急に私を追いかけてくるんです。普段、病院では財布を持っていないので、財布を持っていないと気づいてあわてて逃げるのです。
    ●涙(165頁)
    体からは、汗が出たり、おしっこが出たり、大便が出たり、あくびが出たり、しゃっくりが出たり、いろんなものが出てきますけど、そういうものの一つとして、一番頻繁に出るのが涙じゃないですかね。年寄りになってくると、本当にうれしい時にもいい顔をせずに涙を出すようになります。
    (2011年1月23日・記)

  • 去年のNHKスペシャルの内容を書き下ろしたもの。まどさんの、つねにおそれ、感謝し、感動し、祈る姿にうたれる。

  • 百歳の頭の中。ちょっと長生きしてみたくなる本。

  • 張り詰めた日々の中、涙を流す余裕をもらえた。
    まとめ:書くことが好きなら日記を書いた方がいいよ。赤と黒で書いてはどう?そうすれば、会話みたいで寂しくないよ。それに、日記を書くと、辛いことの多い人生の 中でも、少しほっとできるよ。

  •  番組自体、永久保存版と心に決めるほど感動したので、それを改めて読めるというだけで至福。まどさんのように歳をとりたい…まどさんの視点を知ると、老いることを魅力的に思う。自分をとりまくすべてに感謝して、ふしぎがって生きられたらいいなぁ。

  • まどさんはちょっと特別。
    百歳のまどさんは、病気が本職でお忙しい中、絵を描いたり詩をつくったりされているらしい。
    さりげないどのひとことにもやさしさとユーモアがあって、まどさんが百年生きて、こんなことばを語ってくださって、まどさん、ほんとうに長生きしてくださってありがとうございます、と何に向かってか感謝したくなる。
    百歳をお祝いする展覧会には行ったのに、NHKの番組は見逃し続けている。はやくアーカイブで探さなきゃ!

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著者プロフィール

1909年山口県に生まれる。詩人。作詞家。25歳のときに投稿した詩で北原白秋にみとめられる。終戦後、出版社での編集職を経て、詩・童謡の創作に専念。「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」「ふしぎなポケット」などの童謡で国民的な人気を得るとともに数多くの詩を書き、1994年国際アンデルセン賞作家賞を受賞。詩集に『てんぷらぴりぴり』(大日本図書)などほか多数。2014年逝去。

「2023年 『ぞうのこバナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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