- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140885178
感想・レビュー・書評
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まだ読み始めて100ページ程だが、読むのを中断したくない程、興奮している。
最後まで飽きさせられる事なく読めた。
司馬遼太郎のエッセンスを短くまとめて読み解いてくれる。日本及び日本人を、今に生きる日本人として内省させてくれる人良書。
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愛読書って何と聞かれたら、「坂の上の雲」か何かの司馬遼太郎作品を答えるであろう俺。
話題の新書で平積みになっていたので手にした本。
「小説家」であり「歴史家」でもある司馬遼太郎を歴史学者が、彼の作品を紐解く。
俺の日本史の知識の基礎を作ったのは「まんが日本の歴史」ですが、そこに彩りを与えたのは司馬遼太郎でした。
これまでは、幕末や明治の作品が中心でしたが、戦国時代を描いた「国盗り物語」や、小説には描かれなかった昭和を語った「この国のかたち」は読まないとなと思います。 -
磯田さんが司馬さんの言いたかったことを代弁してくれています。司馬作品は20年以上に読みましたが、この本で久々に読みたくなりました。
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司馬さんの作品は,読み始めたらきっと面白いのだろうと思いつつ,長大であることから,恥ずかしながら今も未読です。
本書により,司馬作品のエッセンスや魅力を知ることができましたので,いつか腰据えて読んでみたいという気持ちが強まりました。 -
「はじめに」に書かれていますが、歴史学者が「司馬遼太郎」をあえて正面から取り上げ、司馬作品から入って、体系的に戦国時代から昭和までの日本史を学ぶ珍しい本であると著者は位置付けました。
そして、序章 司馬遼太郎という視点 として
歴史をつくった歴史家/頼山陽と徳富蘇峰
日本人の歴史観への影響/司馬作品のオリジナリティ
歴史小説と時代小説/歴史を奇想で崩した作家
動態の文学、静態の文学/なぜ歴史を学ぶのか
第1章 戦国時代は何を生みだしたのか
第2章 幕末という大転換点
第3章 明治の「理想」はいかに実ったか
第4章 「鬼胎の時代」の謎に迫る
終章 二一世紀に生きる私たちへ
おわりに
その国の人々が持っている「くせ」「たたずまい」、簡単に言えば「国民性」といったものは、100年や200年単位でそう簡単に変わるものではありません。
であるならば、20世紀までの日本の歴史と日本人を書いた司馬遼太郎さんを、21世紀を生きる私たちが見つめて、自分の鏡として未来に備えていくことはとても大切ですし、司馬さんもそれを願って作品を書いたいったはずです。
と総括しています。
私たち現代に生きる日本人が司馬さんの思いを受けとめ、未来の世代の為に司馬作品をどう読めばいいのか、そのことをうまくまとめた素晴らしい本でした。 -
史伝小説、歴史小説、時代小説 史伝が史実に近い
武士は兜を被るためという名目で、頭頂部を剃って月代(さかやき)をつくり、ちょんまげを結う
世界的に見れば、国民国家への移行は時代の風潮で、それができない国は植民地になるというのが国際情勢の現実でした
長州の陸軍 第1段階の預言者が吉田松陰、2段階の実行者が高杉晋作、革命の果実を受け取るのが山県有朋
思想は人間を酩酊させる
松本良順 順天堂のもとをつくった人物
司馬さんがリーダーの資質としてより重く見ていたのは、「常識を破るリーダーシップ」
次、自分が登用した人物を最後まで守り通すこと
勝海舟 曽祖父が視覚障害者 視覚障害者は当時お金を貸すことを許されていた その盲目の曽祖父が築いた巨万の富によって、身分の低い幕府の御家人から御家人株を購入して、お金の力をもって江戸幕府の末端に加わった家のものだった
咸臨丸(かんりんまる)は勝海舟や福沢諭吉が乗っていたがために後年有名になりますが、遣米使節のトップが乗っている船(ポーハタン号)ではなく、それに随行していた随行艦だった。
江戸時代の負の遺産 東アジアへの蔑視の姿勢
僭上(せんじょう) 分相応
さらに問題となったのは、日露戦争に勝った際に、数多くの軍人たちが、公侯伯子男の爵位をもつ華族になったこと。日露戦争で下級武士出身の維新の功労者が主君の大名や上級公家を追い越して、爵位の上で偉くなった
司馬さんが子供たちに伝えたかったこと
共感性を伸ばすこと、いたわり
自己の確立が大切
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司馬作品の礼賛でもなければ単なる読本でもなく、国盗り物語から花神、坂の上の雲を通じて近代(から現代に通じる)日本の変遷と成り立ちを捉えていく内容。司馬遼太郎の一貫した軍部へのアンチテーゼが作品の根底に流れている点、改めて気付かされた気がする。関ヶ原や燃えよ剣ではなく、前述の作品が取り上げられたのもそれが理由で、所々著者の歴史観も挟まれるが、英雄物語に終始しない司馬遼太郎の楽しみ方のひとつの提示にはなっていたと思う。
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司馬遼太郎氏の歴史小説を題材にした一冊。
司馬氏の作品は、歴史小説でありながら、多くの日本人にとって、幕末や戦国時代のイメージの作成に大きな影響を与えている。この著書は、複数の司馬氏の作品を通して、どのような考え方で日本の歴史を捉えていたかを検証するという試みのです。
自分自身、幕末維新を中心に司馬氏の作品を多く読んだので、興味深く読み進められました。
もっといろいろな作品の引用しながら、もっと深く切り込んだ内容も読んでみたいという感想です。次回作が楽しみになってきました。
▼斎藤道三の存在が、やがて信長のような天下人を生み出し、その天下人が公儀と呼ばれる権力体(国家)を生み出し、幕藩制がつくられる。
その国家が壊れるなかで、朝廷と結合した勢力が幕藩由来の官僚制や軍事組織を引き継いで明治国家を創設
その明治国家の最後の帰結として、司馬さんの言う「鬼胎の国家」つまり、あの戦争を起こした昭和の軍事国家ができあがる。
その昭和の軍事国家が無茶をやって壊れ、形を変化させたのが、私たちの現在の社会であるー司馬さんは、そんな歴史観を背後に持っていた
▼この国に暴力でもって国内を統御するという、中央集権的な権力を信長がつくり上げた。司馬さんが「国盗り物語」で描きたかったのは、その後の日本、あるいは日本人のあり方のふたつの側面
①合理的で明るいリアリズムを持った、何事にもとらわれない正の一面
②権力が過度の忠誠心を下の者に要求し、上意下達で動くという負の一面
▼「組織は変質する」というのは、司馬さんの重要な歴史観の1つ。最初は理想があるけれど、だんだん老化して、おかしなことを始める。『花神』を描いた思いがここにある
▼日本人というのは、前例にとらわれやすい「経路依存性」を持っている。「合理主義」の対局にある日本人の性質が「前例主義」(経路依存性)
<目次>
序章 司馬遼太郎という視点
第1章 戦国時代は何を生み出したのか
第2章 幕末という大転換点
第3章 明治の「理想」はいかに実ったか
第4章 「鬼胎の時代」の謎に迫る
終章 二一世紀に生きる私たちへ -
司馬史観の平易な解説書。