ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102371

感想・レビュー・書評

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  • ひとつ思ったのは、ソラリス(というか海)とお客さんの関係は、いわゆるキリスト教における神と人々の関係に似てるのかなと。神が人を作り、人は神の意思が何かなど考えずに好き勝手に行動する。ソラリスでのハリーの自殺も、海自身の意思とは無関係であるのだろうという気はします。つまりハリーはハリー自身の意思で行動していると。海が何のためにお客さんを作り出しているのか、というのは、神がなぜこの世界を造りたもうたか、という問いと同様に、我々には推し量ることすらできない問いなのではないかという気はします。

  • 無意識とか夢とか宇宙とか・・・精神分析に似ている。SFなんて心理学さ。海に似ているのさ。曖昧なんだよ結局は。それがいいんだと思う。具体的に決めてしまえば、すぐに壊れて崩れてしまうんだ。形のないものだから人は大事にできる。ただそれだけなんだ。それが正義さ。

  •  水の惑星ソラリスにたゆたうその海は、実は意志を備えた一つの巨大な生命だった、という舞台設定が印象的な、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの代表作。SFにはファーストコンタクトもの、という再分化されたジャンルがあり、『幼年期の終わり』などがそれに属しますが、この作品も同様であって、主軸になるのは未知の存在と接触したとき、一体われわれはいかなる反応を示すのかという壮大な思考実験小説です。
     独創的なのは、その海の設定。海が備えている意志とは一体いかなるものなのか。知的生命体同士が接触したとき、われわれが考えている高度な知性という語の有効範囲は、必然的に修正されざるを得ないものですが、それ自体はSFそのものの古典的なテーマであり、地球に存在する論理や、あるいは倫理といったものが通用するかというのは、幾度となく描かれてきたものです。しかしこの作品ではそこからもう一押し、果たしてそれが理解可能なものか、という根源的な問いにまで突き進んでいきます。あるいは、容認可能なものか、といってもいい。さらにはいかなる選択をすべきか、ではなく、選択そのものが不可能であると思われる領域まで、周到に運んでいく。
     何を書いてもネタバレになるので差し控えますが、ここで引き起こされるのは人間同士の悲劇であり、だからこそ海の未知性は強調され、そして人間の悲劇は喜劇めいた響きを強めることになります(それは、ブラックユーモアといった話ではなくて)。
     文明の想像力が妥当する範囲には限界がある。だから……ではなく、その「だから」という接続詞そのものが失効してしまう極北がある、ということ。この小説に明確な着地点はありません。しかしその先に広がる深淵を垣間見ることはできます。つまりこの小説そのものがひとつの極北である、ということです。面白かった。

  • SFの素晴らしさが凝縮された一冊だと思う。何度も何度も読みたくなる一冊。

  • 過去に読んだ本。
    2006年頃かな?

    ファーストコンタクトもののSF。それも理解不能な生命との。
    かなり暗い作風だった。

  • 読みたいと思っていた小説をついに入手!
    序盤はホラー
    中盤は恋愛
    終盤は哲学
    的なSF小説。
    50年前の作品とは思えない。テープレコーダーあたりは時代を感じるけど笑、今読んでも面白いと思う。ソラリスに浮かぶ宇宙ステーションが鮮明にイメージでき、映像化されるのもわかる。
    最後がちょっと理解しにくかったけど、色々な読み方できそうなので、もう一度ゆっくり読んでみたい。
    (追記)
    終盤、寝不足でない頭で読んだらすっきり読めた。
    壮大なソラリスの描写が美しい。
    ☆5に格上げです。

  • 戸惑うことができずに戸惑った。

  • レムの小説は重いテーマのものと軽い警句ものの2種類に分かれますが、この小説は重いテーマのもので考えさせられます。タルコフスキーの映画もその重いテーマを表現していて感動したのを覚えています。

  • 二つの映画化作品も観るのをお勧め致します。映画を先に観た方が良いかも知れません。

  • 宇宙ステーションに死んだ妻出現

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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