ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102371

感想・レビュー・書評

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  • 不気味でとても切ない哲学的な物語。閉鎖空間での話ということもあり最初から最後まで息苦しい印象。SFビギナーには読み飛ばしても問題ない部分も多く、プロットはそのままでもう少しエンターテイメントに振っていれば間違いなく泣かされていた。ただそのハードな部分こそがソラリスがソラリスたる所であり、作者が書きたかったものであるため仕方ないのだろう。

  • 宇宙で人類が出会った知的生命体は、ある惑星の表面を覆う海だった。海そのものがおそらくは巨大な一個の生命体であり、明らかに知能があるとしか思えない反応を見せるが、その一方で意思の疎通がまったくできず、意識と呼べる活動があるのかも不明。なんとか意思の疎通を図ろう、あるいは意識の存在をさぐろうと、人類は研究を繰り返してきた。あるとき研究センターに忽然と姿を現したのは、人の姿をした奇妙な存在。研究員たちそれぞれの中にある、もっとも触れられたくない記憶の中から蘇った、そこにいるはずのない死者たち。容姿も行動も本物そっくりで、記憶さえもっており、触れても生きているとしか思えない彼らは、しかし睡眠も食事も必要とせず、殺そうとしても死なない。「海」が人類のことを理解しようと送り込んできた、つくりものの存在とわかっていても、かつて死なせた恋人にそっくりの「彼女」に、主人公は情をうつさずにはいられなくなり……。意思とは、心とは。どうしようもなくわかりあえないものと出会ってしまったとき、人はどうするのか。

  • 未知のもの。理解しようとするわけではなく、害をなしたり友好を結ぼうとするわけでもない、無邪気な好奇心とでもいうべきもの。そのあまりに巨大な理解しがたい存在は、どこか癒しでもあるのだな、と思う。名作SFキャンペーン。

  • うーん。なんというか。宇宙の果てに行った人の宇宙船の中の話。
    なんとなく、最近、宇宙に行っても
    そこには、閉鎖された空間しかなくって、数人しかいないことを考えるとあまり宇宙に行くことに夢を見ないのだが。
    地球を外から見る ということに特化するとなれば、面白いのだろうか。
    私は、宇宙に関するこの手の本を読むと、どこにいっても誰が誰を殺して、、、っておそらく地球上のどこでも起こっている話を読むと、なんだか覚めてしまう。
    自分が、人間であることが変わらないと 改めてつきつめられているような気がするから

  • 未知の人智を越えた生命体らしきものにであったとき、人類はどうふるまうのか。人間を仮託するか、全く度外視するか。

    ハリーとソラリスの二重において、他者性について考えさせられた。

  • オールタイムベストSFとか本屋で見かけたので借りてみました。
    確かに面白いというか興味深い。所謂テンプレの地球外知的生命体と人類の出会いとは全然違う作品。そしてこれが大分前に書かれた作品というのが面白い。

    でもある意味人間は同じ脊椎動物とはなんとなく意志の疎通が出来ているような気がしていますがきちんと分かり合っているかと言われると難しい気もするし。昆虫とか植物も組織構造とかは研究されているけれども生物としてコミュニケーションが取れるかと言われると取れないし。そもそも知的だとか知的でないとかどこで線引きするんだろうとか考えだすとSFって奥が深いなあと思うのです。設定や想像力を働かせて世界を一つ作り上げるってのは大変な作業だろうなあと。読んでいるだけの自分はそれにケチを付けたりしながら読んでいるのだからいい気なものだなあとは思います。

  • ファーストコンタクトものの名作。『砂漠の惑星』『エデン』と本作で三部作(?)のようになっているらしい……が、『エデン』は品切れ。残念。まぁそのうち復刊される……かな? してくださいw
    映画化が2度あったのも頷ける、映像映えしそうな内容。『海』を映画にすると迫力がありそうだな〜。
    筋立てとしてはメロドラマではあるが、SFとしては思考実験に分類されるのかな。登場人物同士の議論が楽しい。
    『砂漠の惑星』と本作を続けて読んで思ったのだが、どちらも人間と野生動物の関係に似ているような気がする。あちらさんとしては人間のことなんか特に気にしてないんだよ〜的な何かを感じた。

  • タルコフスキー版の「惑星ソラリス」のチラシを学生の頃部屋の壁に貼ってたけど、映画自体を観たことは無かった。もちろん原作にも初めて触れた。こういう物語だったのか。

    頭があまり働かない時に読んでしまって後悔。抽象的な事があまり理解できず。海の描写とソラリス学の歴史についてのくだりが長くて少し眠くなったりしたが(大事なとこなのにな……)、先が気になる感じで最後まで読み通せた。ハリーがかわいそうだな。

    うーん、もう一度読まないと駄目なようだ。

  • 請求記号:BK/989.8/L54
    (経営学部経営学科 水谷正大 教授)

  •  十年以来の再読。未知の知的生命体を理解することを主題に置いて、人間の矮小さを描いたSF。
     とにかくすんごく読みにくい、僕の頭では意味を理解するのに時間がかかった箇所も少なくなかった。けれど、汲めるところも少なくなかったかな。意思伝達のドッヂボールっぷりにイラつきつつも、まぁこうなるわなぁと納得してしまう節もあったり。まあでもそりゃそうだよね、初めて邂逅した知的生命体との交流が、友好的であったり敵対的であったりするのは、価値観やものの見方、とらえ方が共有されてないと成立すらしないんだから、海と研究者たちが色々と噛み合わないのは全然おかしくない。ストーリー性偏重では絶対に気付かない視点だよね。根気がある人は読んでみるといいんじゃないかな。

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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