愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫 SF テ 3-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150107307

感想・レビュー・書評

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  • 1970年代に発表されたSFの短編。
    訳がよくないのか、前半のほうはさっぱり頭に入ってこなかったので、本のタイトルにもなっている物語のみ、読んだ。

    六本足をもった生き物の一人称で語られる。話を読み終えるとそれが何のいきものかが分かる、そんなお話。

  • ネビュラ賞を受賞した表題作のほか、ヒューゴー賞に輝く「接続された女」など、全12編からなる短編集。

    最初の2~3編を読んだ時点で、本をやぶって窓から投げ捨てようかと思った。
    訳のせいもあるが、文章が荒れてて、とにかく読み辛い。内容を理解しようと読み手が歩み寄らないといけない。それだけ読者を遠く見離してる感があった。

    とはいえ、以前読んだ「たったひとつの冴えたやりかた」が比類なき傑作だったから、我慢して読み進めた。
    すると、「エイン博士の最後の飛行」や「接続された女」あたりから面白くなってきた。

    この作者、発想もさることながら、その描き方が極めてエネルギッシュで力強い。本能に抗う生物の苦悩と陶酔を描いた表題作を読み終えた後なんて、たった40頁の長さなのに、その圧倒的パワーの前に打ちのめされ、ただ茫然と虚空を眺めることしかできなかった。

    他にも「断層」「男たちの知らない女」「最後の午後に」など傑作が続く。

    「断層」は、時間から取り残されるという着眼点が面白い。
    極限の状況下で、人類という枠から外れることを迫られた人間たちを、したたかに描いた「男たちの知らない女」と「最後の午後に」
    とりわけ後者には、再び打ちのめされることになった。暴れ狂う怪物の造形は目を見張るものがあったし、その衝撃的な顛末のせいで、読後は底なしの虚無感に包まれた…

    そして、これら傑作と肩を並べる作品が、解説(というか作者の紹介)であろう。「事実は小説よりも奇なり」という言葉をかっさらう作者の人生は、それだけでひとつの優れた作品になる。
    まったく、何度この本にノックアウトされりゃいいんだ…

  • うん、うーん・・・

    これは合わなかった。それも、1作目から合わない感をずっと感じていた。
    唯一「断層」が面白いと感じた。

    本編よりも最初と最後の解説の方がむしろ面白い。
    けど、これは女性の作品だろ~

  •  とっても刺激的な短編集。発想がいいし、彼女の哲学はもっといい。
    個々には「接続された女」はなんか頂点にあるような感じだし、「男たちの知らない女」も読んだ当時ショックだった。

  • 定められた愛だって定められた死には勝てない。死はすべてを包み凍らせる。煉獄のように綺麗な星の下で燃え続ける。それが人間であろうとも宇宙人であろうとも。

  • 人間、及び愛に対する作者独特の視点が面白い短編集。出てくる科学的、SF的ギミックはやはり古臭いが、30年以上前のものなのだからそれはどうしようもない。
    その登攀シーンが神々しい"そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見出した"、12モンキーズに似ている"エイン博士の最後の飛行"、男性社会の中で異物のように紛れて生きる女性の物語"男たちの知らない女"、逃れられない本能と知的生命としての自制心のせめぎあいを圧倒的な迫力で描く"愛はさだめ、さだめは死"、種を守るための自己犠牲の念と自己の進化(クラークのスターチャイルドのような)への憧れの狭間で揺れる男の話"最後の午後に"辺りが印象的。

  • 「たったひとつの冴えたやり方」の
    ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの傑作SF短編集。
    ヒューゴー賞、ネビュラ賞を取った短編をそれぞれ収載。

    「たったひとつの冴えたやり方」よりもちょっと先鋭的で
    脂の乗ってる感が伺えます。
    読者の想像力に挑むような挑戦的な部分もあり。

    話がたくさんあるのでとても語り尽くせませんが、
    とにかくどれも面白いです。

    中でも
    「乙女にしておぼろげに」
    「断層」
    「最後の午後に」
    が印象的でした。

    「乙女にしておぼろげに」
    突然未来からやってきた少女と対面することになった
    新聞のお悩み相談コーナー担当の熟練ライターが、
    およそコミュニケーション不能なレベルまで文化の違ってしまった
    未来の少女の悩み(らしきもの)を聞き、アドバイスをし、
    恐らく普遍的と思われる問題を解決した(ような気がする)話。
    未来から来た少女の言動はとにかく意味不明で、
    会話の合間に急に全裸になったりするのだけど、
    主人公は辛抱強くこれを受け止めて、
    どうやらこの子は気立てのいい子だぞ?という判断に至ったりする。
    人として変わらないはずの部分を見定める視点が面白いです。

    「断層」
    異星人によって"時間からスリップ"させられてしまった可哀想な男の話。
    時間からスリップするという概念が興味深いです。
    物事と時間を繋げている摩擦が無くなって行き、
    流れて行く時間からどんどん滑っていってしまう男と、
    なんとかその男の時間に追いつこうと試みる妻。
    時間を滑っていく夫が向かえるであろう瞬間に合わせて
    まだ何もない空間に手を差し伸べる妻の様子が切ないです。
    え、タイムスリップってそういうこと?

    「最後の午後に」
    思いもかけない終末を見せられることになる最後の一編。
    ひとつ前の表題作「愛はさだめ、さだめは死」で
    未知の生命の生態系に思いをはせた後だけに、
    主人公達を滅亡の淵に追い込むことになる生き物が
    純粋とさえ思えてしまうのが不思議。
    話の中には2種類の地球外生命が出てきて、
    片方はフィジカル担当で破壊の限りを尽くし、
    もう一方はメンタル担当で救いの光を差し伸べるという。
    生存のための戦いを描くように見せて、
    その実、生きることの意味を問われているようです。


    「たったひとつの冴えたやり方」の後書きで
    ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアという作家について
    衝撃を受けたわけですけど、
    今回の後書きでも驚愕することになりました。
    なんだ、なんなんだこの人は。

    ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアという人物そのものがひとつの小説のようです。

  • オチがよめてしまわないわけでもない。

  •  接続された女、が好きだった

  • SF史に残るこの作家の強烈なプロフィールを知ってしまってから読んだので、感動の度合いが下がるかと思いきや、圧巻でした。粒ぞろいの短編集です。

    鴨がこれまで読んだことがあるのは「接続された女」1本だけで、サイバーパンク寄りの作家だと思ってましたが、収録された全作品を読んで実は作風にかなり幅のある人なんだということがよくわかりました。「全ての種類のイエス」「アンバージャック」あたりはまるでビートニク文学のようなサイケデリックな作風ですし、一方では「恐竜の鼻は夜ひらく」(←名意訳ヽ( ´ー`)ノ)のようにロバート・シェクリイを彷彿とさせる洒落た小話タッチの掌編もお手の物です。

    が、何といっても圧巻なのは、SFの体裁を取りながら個人の魂の相克へと切り込んでいく、エッジの利いた鋭い作風です。鴨が特に気に入ったのは「そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした」「男たちの知らない女」「愛はさだめ、さだめは死」「最後の午後に」の4作。ストーリーこそ違えどもどの作品にも共通して描かれているもの、それは(一般には当たり前と思われている)世界/社会/環境への「違和感」です。登場人物はその違和感を克服しようと努力し、苦しみ、そして敗北して自滅していきます。ハッピーエンドの物語はひとつもありません。でも、後に残るのは虚無感や脱力感ではなく、何故か不思議な程に静かな諦観です。カタルシスを突き抜けた後に来る涙に似たようなものでしょうか。
    この「違和感」を向けられる相手が宇宙人であったりタイムスリップ後の別世界であったり、なーんて設定ならフツーのSFにまぎれてしまうんでしょうが、ティプトリーのすごいところは「違和感」の相手が自分と同じ人間であり、自分の暮らす社会であるということです。まるで作家自身が自分の人生において感じてきた違和感を、作品の形で表現しつつ吐き出そうとしているのではないかと思えます。やはり作家の強烈なプロフィールが書かしめた作品群なんですかね。
    機会があったら、他の作品にも挑戦してみたいと思います。

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ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの作品

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