くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151823015

作品紹介・あらすじ

読後に壮絶な余韻を残す表題作をはじめ、著者の傑作群を収録した短篇集がついに文庫化

感想・レビュー・書評

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  • わかったようなわからなかったような…。

  • それまでは微塵も形のなかった悪意が、不意に現れては肌を粟立たせる。普通のなにげない会話のやりとりに、徐々にきしみが見えてきたと思ったら、ただじっとりとした後味の悪さを残すばかり。そんな短編が大半を占めた、とても厭らしく、けれど惹きつけられてやまない作品集でした。

    それは、ほの見える悪意や偏見といった感情は、レベルや形の差こそあれど、だれにでも覗くものだからなんでしょうか。危険だとわかっていても、高いところから地上を覗き見せずにはいられないような、不穏な高揚を呼び起こす、そんな物語たちでした。

  • 久々の文芸系短編集 特に派手な事件は起きないが、日常によくある情景を切り取って殊更強調するわけでもなく、描写する
    怒り、焦り、悔しさ、蔑み、そういう形になる以前のモヤモヤとしたものを
    それとなく提示してくる
    なんかオチのようなものがないからこそか、あっという間に読んでしまった
    くじという掌編は、意外にも日本ではかなり古い頃のSFマガジンが初出だったらしい
    福島氏が編集長をやってた頃のようだ

  • 色々考えたり、深読みしたりしなきゃいけないんでしょうが、そんな暇はないし。「結局何だったんだ、今のは?」となる話がほとんど。

  • 日常と完全に切り離すことができないからこそ、心の奥に黒いインクが滲み出すような恐怖に包まれる感覚を覚える。

    色合いも、出てくる食べ物の香ばしさも、空気感すらはっきりとした輪郭を持ってポップでリアルに浮かび上がるのに、その鮮やかさとのギャップが好き。

  • 私には合わなかった。
    短編集なのに、1/5あたりで読むのに耐えられず、読了できなかった。

  • 『ずっとお城で暮らしてる』のシャーリイ・ジャクスンの短編集。

    『ずっとお城で』は、メリキャットの無邪気さ、お姉さんの潔癖さなどが次第に不穏な雰囲気を生み出してゆくのだけれど、一番怖かったのは村人たちの理由がよくわからない悪意。

    『くじ』の短編はあちこちに人間の悪意が、時にあからさまに、時に目に見えない形で(このほうが怖い)ただよっていて終始ザワザワとした気分になります。

    表題作『くじ』が発表されたのが1948年とのことですが、対象を決めたらいっせいになぶり殺しにかかるあたり、今見るとSNSいじめのような残酷さ。この頃からずっと人間は変わらないということでしょうか。

    原題が『THE LOTTERY OR, THE ADVENTURES OF JAMES HARRIS』とあるように22篇の短編のあちこちにジェームズ・ハリスという謎の男性が登場します。
    訳者の深町さんは彼を「悪魔の化身」としていますが、人は誰しもジェームズ・ハリスであり、彼がつけいる心の隙をもっているような気もします。

    https://chiakih.blogspot.com/2022/10/blog-post_26.html

    以下、引用

    21
    「なぜかしら、教会がまず真っ先にやられるという気がする──エンパイアステート・ビルよりも先にね。」

    「授業でカエサルの新しい章を読みはじめるたんびに、ふっと考えるのよ──ひょっとしてこの章が、わたしたちの習う最後の章になるんじゃないか、って。ひょっとしてわたしたちのこのクラスこそ、カエサルを読む最後のラテン語のクラスになるんじゃないか、って」

    99
    その横にハンドバッグと『パルムの僧院』とを並べて置いた。この本ははじめの五十ページばかりは熱心に読んだが、あとはただ恰好をつけて持ち歩いているだけだった。

    156
    「ジョニーったら、いったいボイドになんて真似をさせてるの? この木切れはなんなの?」
    「日本兵の死骸さ」と、ジョニーはこともなげに言ってのける。「これを地面に立てて、戦車で押しつぶしてやるんだ」

    255
    「ブロンテ姉妹、ディケンズ、メレディス、サッカレー」

    310
    ひとびとは、毎時間を四十五分、毎日を九時間、毎年を十四日ずつ長くしようとして、狂おしい動きのなかへとびこんでゆくかに思えるし、食物は目にもとまらぬ速さで出てきて、あっというまに食べられてしまうので、ひとはいつも空腹をかかえているし、たえず自らを新しい顔ぶれとの新しい食事へと駆りたててゆかねばならない。


  • 様々な形の悪意が詰まった短編集。
    じんわりと嫌な気持ちにさせる話ばかり。

    善意のふりをした無意識の差別が痛々しい『どうぞお先に、アルフォンズ殿』、『アイルランドにきて踊れ』。
    こどもが関係してくるゾッとする話『魔女』、『チャールズ』。
    このあたりは特に好き。

    そして一番有名でインパクトの強い話『くじ』。
    これは以前別の本で読んだことがあるけど、やっぱりすごく良い。話自体は最悪だけど。

  • どれもこれも、読後感があまり良くない話。
    70年も前に書かれているけれど、人間の悪意や黒い感情は今も変わらないなと思う。

  • 読むと黒い気持ちになることはわかっているけれど、それでもその黒さを摂取したい時があります。
    そんな時用に積読していた本書をチョイス。

    露骨な悪意や嘲笑はもちろんだけど、特に怖かったのは「どうぞお先に、アルフォンズ殿」や「アイルランドにきて踊れ」で描かれた、無意識の差別意識です。
    肌の色や身なりで相手が自分よりも下であると見て、恵んであげよう、施してあげようという独りよがりな善意を押し付け、それを拒否されれば不機嫌になる人々。
    そのふるまいを見て不愉快な気持ちになりつつも、はたして私は人のことを言えるのかと、我が身を振り返らずにはいられませんでした。

    本書の中で一番嫌な気持ちになったのは「曖昧の七つの型」。
    良い本が本当に必要としている人の元ではなく、本のことなど何も知らない見栄っ張りの金持ちの手に渡ってしまう苛立ち。
    商売とはいえ、それを黙認して売ってしまう書店主への不快感。
    コップの水にインクをポタリと落としたときのように、黒い感情がどろりと心臓のすみずみまで広がる感覚を味わったのでした。

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