アゴールニンズ

  • 早川書房
3.52
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本棚登録 : 45
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152086426

作品紹介・あらすじ

古き良きヴィクトリア朝を思わせるドラゴンたちの国ティアマト国。厳粛であるべきボン・アゴールニン啖爵の臨終の席は、いま騒然としていた。娘婿のデヴラク士爵が、横暴にも取り決め以上にその遺骸を食べてしまったのだ!遺骸を食らうことで、子竜たちは父の力と身体の大きさを受け継ぐ。力と大きさは社会的身分に直結するため、遺族の間で大騒ぎになった。この一件がきっかけで、やがてアゴールニン家の面々は、とんでもない騒動に巻きこまれることに…。登場するのはすべてドラゴン!亡き父の遺産相続とその娘たちの恋の行方をめぐるユーモラスな狂詩曲。2004年度世界幻想文学大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 竜の国ティアマト。成り上がり者ボンの遺児たちは散りぢりとなりそれぞれ苦しい立場に追い込まれて…。

  • 献辞、謝辞〜のページに、「ヴィクトリア朝小説の原理原則の多くが間違いであり、事実にもとづいた小説がこの本である」と書いたあったので期待したが。
    教会、牧師、伯爵といった人間世界をドラゴンに置き換えただけ。売春まででてきた時には。あまりのつまらなさに読み続けることができなかった。

  • 登場人物がすべてドラゴンのカワリダネ小説。

  • 2004年度世界幻想文学大賞受賞作。
    ちょっと前に紹介文を読んで、凄い読みたかったんだけど、
    こんなに早く訳されるとは。
    ヴィクトリア朝風世界のファンタジー。
    身分違いの恋。
    爵位の壁。
    新教と旧教。
    不公平で横暴な遺産相続。
    不必要に虐げられる使用人たち。
    弱い子供を奪われる農夫。
    と、お約束ガジェットが揃ってるけど……
    ボン・アゴールニン啖爵が亡くなった。
    牧師になった長男ペンと、長女の娘婿のデヴラク士爵は成功を収めているのだから、遺産は黄金一つずつ。
    残りは全て、次男エイヴァン、次女セレンドラ、三女ヘイナーに与えろと遺言したにもかかわらず、
    デヴラク士爵は一人で啖爵の体を半分も食べてしまう。
    ドラゴンは、ドラゴンの肉を食べることによって体が大きくなり、力を増す。
    彼らの世界では、体の大きさ=社会的な力でもあり、
    同族の肉を食べることは滅多にない、絶好のチャンスなのだ。
    しかし、食べてしまったものは、どうにもならない。
    ペンは臨終の間際に父からの告白に苦悩する。
    都会で都市計画美観局に勤めるエイヴァンはデヴラクを訴えることにする。
    エイヴァンの恋人兼秘書のセベスには、彼にも言えない秘密が。
    デヴラクに引き取られたヘイナーは、そこで召使いたちの自由を考える。
    そして、ペンに引き取られたセレンドラは、そこで出会ったシャー珀爵と恋に落ちるが、様々な壁が……
    彼らは幸せになれるのか?
    かなり好みのファンタジー。
    剣と魔法よりも、こういう捻ってある方が好きだなぁ。
    ドラゴンたちの生活と生態が面白く、それがヴィクトリア朝的常識とうまく絡んでいる。
    話の軸になっているのが同族を食べること。それによって強くなる。
    子供が産まれると、長生きできない弱い子供は食べられてしまう。
    また、農夫の弱い子供などは、そこの領主に差し出す。
    そのため、貴族はますます大きくなり、農夫は小さいまま。
    もう一つの軸が、プロポーズ。
    女性は意中の男性に触れられると鱗が赤系の色になる。
    したがって、その色になっても結婚していない娘は娼婦やふしだらなと、良い縁組みが出来ない。
    セレンドラの身に起きる事件は、後々まで尾を引くことに。
    他にも、帽子がおしゃれとか、ドラゴンに付き物の炎、翼、黄金の話も色々と。
    実は、この世界には人間もいて、国境で戦争状態。
    ヴィクトリア朝風と言うことで、
    主人公セレンドラとシャーは、エマとウィリアムに自動脳内変換(啖爵令嬢と珀爵だけど)
    オススメ。

  • ドラゴンのアゴールニン啖爵の遺産の分配をめぐって親族たちが骨肉の争いを。ドラゴンは、ドラゴンの肉を食べることでしか自分の身体を大きくしたりその力を強くしたりできない。争いの種になった遺産は老啖爵の遺体の取り分だった。

  • 体長70フィート、両翼と炎を吐く力を備えた名士、500歳近いボン・アゴールニン啖爵(だんしゃく)臨終の場面から物語は始まる。これがね、そのボン・アゴールニンの遺骸の相続を巡って親戚間紛争が勃発するのですね。デヴラク士爵は強欲、人間だけじゃありませんね、遺言に背いて自分の家族で大きく食べちゃうんだな。いやどうも、これが児童書であるはずがないじゃありませんか。育ちの悪い小竜(こども)なんかも食べられちゃうんですよ。
    「共食いは竜の性だ」、人間征服以前は「若いドラゴンは翼が育ちきると冒険の旅にでかけるならわしだった」、「こんなふうに寝そべると、黄金の味がお肌においしいと思わない?」なんてところは、ドラゴンらしい。でもね、都の都市計画美観局勤務のエイヴァン・アゴールニンは出世競争中(競争相手を食っちまうこともあるようだが)。ひと腹の卵同士の姉妹ヘイナーとセレンドラは涙もろい。お年頃の愛らしい娘なんて言われても、翼はあるし、うろこもあるし、どう考えたらいいのだろう。極めつけは牧師もいるんだな。ペン・アゴールニン。それだけならいいが、乙女たちの一竜(ひとり)を嫁にともくろむ、いやらしそうなフレルト牧師もご登場。
    全竜(みんな)結構欲深で、弁護士稼業も繁盛してる。確かUrsula K. Le Guinの「ゲド戦記」では「人間はくびきを選び 竜は翼を選んだ 人間は所有することを選び 竜は所有しないことを選んだ」はずなのに。でもまァ、いいことにしよう。息子に「だれか感じのいい嫁をわが手で選ぶこと」を夢見る母親ドラゴンとか、乙女の変色とか、『召使の隷属について』なんて著書も出てくるが、何と言っても最後は「めでたし、めでたし」なんですね。何でもありのお話に、付録「ドラゴン暦について」も付いている。お買い得。目をくるくる回して読んでみましょう(笑)。

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