廃墟に乞う

著者 :
  • 文藝春秋
3.20
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感想 : 183
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163283302

感想・レビュー・書評

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  • この著者の作品は初めてで、思ったより淡々としていました。
    警察小説ということで、もっと熱いのかと偏見があったのですが。
    全体的に、上品な仕上がりという感じがしました。
    休職中の警察官ということで、あくまで推理の手助けをしているためズバっとしたことを言わず。
    もっと深くしても面白いのでは?と思いつつ、そういうものかーとあっさり読み終わりました。
    北海道の地理に疎いので、いまいち入り込めなかったのかも?

  • 十三年前に札幌で起きた殺人事件と、同じ手口で風俗嬢が殺害された。道警の 敏腕刑事だった仙道が、犯人から連絡を受けて、故郷である旧炭鉱町へ向かう 表題作をはじめ北海道の各地を舞台に、任務がもとで心身を耗弱し休職した刑 事が、事件に新たな光と闇を見出す連作短編警察小説。第百四十二回直木賞受 賞作。

  • 休職中の刑事が個人的な依頼で捜査をする内容。
    事件は単純。
    人間のつながりをうまく表現している。

  • 後半になるにつれて、面白さが分かってきた。
    最後は一気に読んでしまった。

  • 読了日20120930

  • 【読間に】
    佐々木譲の直木賞受賞作、ようやく入手。
    確か連作短編だったかと。1編目「オージー好みの村」は、サクッと通過。只今表題作にとりかかったところ。

    うん、ワクワクするなぁ。
    2012.09.21.書。

    【読了】
    佐々木譲にハズレ無し!
    (実は1コだけあるけど:苦笑)

    相も変わらずの、グイッと引き付けられる文章、構成。一気に読まされた。
    連作短編ということで、最後にひとつの事件に繋がって………という展開を期待して読み始めたので、その点では不満もあるといえばあるが………。

    心の傷を負った刑事の、再生の物語、というドラマは、希望のある読後感を与えてくれた。“例の事件”の真相が語られないままに終わってしまうのか?と、ハラハラさせられたが、最後の最後で明かされて、ホッとした(笑)。

    ★4つ、8ポイント。
    2012.09.24.了。

  • 相変わらず好人物。相変わらずの北の大地への愛着。
    北海道のその土地の描写が秀逸で旅行気分を味わえる。北海道を舞台にした作品の時は、ずっとこんな風にその土地の匂いというか風を感じる作品を書いて欲しい。北海道の方便が出てくるのもクル。好感触!
    佐々木譲が創った道警の捜査官が一同に集まる話をいつの日か読めるといいなぁ(笑)

    設定的に難しい設定もありますが、まぁ、休業中の刑事のやれることなどそんなにないですよね・・・。

  • 読んだ

  • ハードボイルドな警官もの。


    重かったよ…

  •  この作家はこの頃、連作短編集というかたちをとても効率よく使っている。『制服捜査』は、道警の裏金不祥事への対策アピールで余儀なくされた大異動の犠牲となり、札幌で有能な刑事だった川久保が十勝の片田舎の駐在警官として単身、赴任する設定であった。そこで十勝という広漠とした農村、いわゆるこれ以上ないくらいの田舎ならではの事件にその有能ぶりを発揮するのだった。この設定は十勝の冬景色を知る者にとっては痛快無比ですらあった。道産作家でなければこれほどの事情は書けまい、というところに拠って立つ作品集は、北海道民にとってまさに快挙である。

     北海道の魅力を余すところなく作品に生かしている作家として、佐々木譲はまさに道産作家の旗手である。その作家がまた、連作短編集でやらかした。またも外れ刑事(デカ)とも言うべきヒーローを作り出したのだ。

     心的外傷後ストレス障害を煩っている休職中の刑事・仙道孝司は、個人的に道内各所の事件に何らかの形で関わってゆき、そこで難事件を解決する。こう書いてしまうと、本格推理畑の作家たちが書くような名探偵シリーズのようなイメージで、ありきたりになってしまうが、PTSDで休職中の刑事という設定が、メンタルを病む人の多い時代背景という部分がまず第一の仕掛けである。

     事件に少しずつ遠くから関わってゆこうとする姿は仙道のリハビリ風景である。最初の頃の短篇では、恐る恐る事件に近づいてゆく。それでも精神にダメージを与えない事件などはほとんどないから、仙道は傷口を痛めてしまうこともあるのだが、徐々に快癒の方向に進むにつれ、自信を取り戻してゆく。

     さらにこの連作短編集の楽しみは、事件の起こる場所場所に、北海道ならではの風土、地域状況、日本の抱える縮図のような風景が垣間見られることである。オーストラリア人が不動産を買いまくるニセコという観光地に始まり、夕張の隣町という設定でありながら道内ならどこにでもある、廃墟だらけの炭鉱の跡地だ。ぼくもダムの底に沈む町が壊される前に一眼レフを構えて大夕張を何度も訪れた。鉄路の跡が残り、石の橋が崩れ、炭鉱や住宅の跡が廃墟になっていた。映画館もダンスホールもすべてが廃墟になった町を。

     さらに作品は、オホーツク沿岸の魚村ならどこにでもある風景といった町。枝幸、紋別、網走、といった冷たい海に船が繰り出す町。それから日高静内はサラブレッドの産地で、博労の町でもある。最後に、『制服捜査』『暴雪圏』でもお馴染みの十勝へ。十勝はちなみに鳴海章の住む町でもある。

     もちろん道内全域で10年以上も仕事をしていたぼくにとっては、どこも馴染みのある土地なので、この本の主役は北海道という土地そのものと、町や村が抱えている問題なのである。そういった北海道の濃度の濃い紀行に、どちらかと言えばストーリーを載せたものといった味わいであり、個人的にはとても幸せな気分で読み通した。ホームシックを誘われて少し寂しくなるくらいの一冊だった。

     ※後にこの作品が直木賞を受賞した。この作家としては『廃墟に乞う』は掌編の集まりだったと思う。仙道刑事の復帰までの日々。それだけを描いた小さな作品集。スケールの大きな冒険小説や、躍動感溢れる警察小説を書いている佐々木譲が、なぜこの作品で評価されたのかを思うと、復帰までのリハビリの戦いと、北海道を時代の鏡のように切り出してみせた作家の地方魂のような部分が大きかったのかな、とぼくは想像するだけであった。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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