烏に単は似合わない 八咫烏シリーズ 1

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163816104

感想・レビュー・書評

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  • 昔から十二国記と守り人シリーズの大ファンで、装丁とタイトルからそんな雰囲気を感じたので、前情報なくたまたま手に取りました。
    読み始めから、あ、だいぶ軽いな(読み口が)、と思ったのですが、前半は世界観が明かされていくのが楽しくて期待感を持って読み…そしてそれだけでした。

    多数の登場人物が出てきますが、主役が不在です。
    あるいは群像劇かと思いきや、主軸がありません。

    人間の多面性を描きたい様ですが、物語自体の視座が低いので、読んでいても1人の人間としての一貫性を見出すことができず、最後にぽっと出される設定と終幕に違和感が強いです。
    場面と主人物と話の軸がグラグラ揺れるので、安定して読めませんでした。どこかに軸を定めて語ればかなり良い形になりそうなのに、その軸が途中でポキッと折られて接木され、育った途中でまた折られて接木され。
    結局はなんの植物を育てていたのかわからない、何か花は咲いたけど、といった有様です。

    コバルト文庫かパレット文庫かという少女小説感。
    十二国記もホワイトハートでしたけどね…



  • 新聞で紹介されていてので興味を惹かれた本。
    ラノベかと思っていたので、一般文芸、しかも単行本だったことに驚き。

    人間が烏にもなれる異世界の疑似平安朝ファンタジーでラブコメかな…と思いきや、サスペンス。

    皇太子である若宮のお妃候補として登殿を許された、大貴族四家の姫君たち。のほほんとしている主人公のあけび、男勝りな浜木綿、美人だが嫌味たらしい真赤の薄、そして大人しい白珠。

    それぞれの貴族たちの野望や、個人の思惑、そして過去の因果までが絡み、男女をめぐる悲劇が起こる。殺された者は誰か、誰が犯人なのか。すべての謎が解けたときのタイトルの真意、そして『烏太夫』の伏線など、なかなかうまい。

    設定はたくみに練られているのだが、文体がやや幼く感じられて、序盤読むのが苦痛だった。冬の章あたりからジェットコースター展開となり、終盤に若宮がお出ましになったあとの丁々発止のやりとりには注目。冒頭のミスリードから一転して、意外なダークホースが現れる。

    第19回松本清張賞だけあり、この年齢にして一級のミステリーではあると思う。ただ、人物造形がいかにも典型的なアニメっぽいという感じが否めない、からくりがどこかで読んだものに似ている、などの理由によって星一つ減らした。

    表紙にラノベみたいな絵は不要だったのでは。予想外に硬派なお話だったけど。

    非常によく構成されていると思うが、真犯人の正体の意外性を追求する余りに、筋がねじれすぎているようにも感じる。練り過ぎて、やや説得力に欠けたような。

    貴賤によって命の扱われ方が異なる、という大事なテーマを、著者は児童文学やファンタジーなどの読書体験から得て、下敷きにしてまんまとうまく書いた、という感じで、ご自分の人生体験から深く抉っていないようにも思われるので、ファンタジー以外の作風も見てみたい。

    なお、若宮の態度によって評価を落としているらしいが、この男は別にまともだと思う。むしろ「悪気がなかったら許される」女の、甘ったるい悪意の怖さを知っている人だったら、大いに共感できるのでは。

  • 表紙に惹かれたのですが、図書館に置いてあった。
    現実では全くあり得ない設定の異世界ファンタジー。

    ちょ・・・何このラスト!
    しょっぱなから東家のあせびを中心に描いているような展開だったから、絶対そっち寄りの話になると思っていたのに・・・

    ある意味度肝を抜くラストだった!・・・
    私の中ではいまだに納得がいかないんだけど、こういう展開もありなのかなァ。

    でもこれは買わないでよかったと思えた作品だった。
    貸し出しで充分ですこういうお話は。

  • 平安時代を思わせる八咫烏の世界。皇太子・若宮のお妃になるべく4家の姫がしのぎを削る。妨害や嫌がらせ、黒い陰謀が渦巻くなか事件が起こる。妃の座を射止めるのは果たして誰なのか。

    平安時代がベースとなって作られた世界なんだと思うので、その時代が苦手だと読みにくいかもしれません。
    ストーリーの展開は途中まで「もしや変哲のない恋愛もの!?」と思わせておいて、しっかりドロドロした腹黒いミステリー(?)になっていくのが面白かった。
    しっかり読者をあせびに寄り添わせておいて、、、、
    どの登場人物も食えないキャラでかなり個性的。だからこそ、4人の姫が出てきても混乱しないですんなり読みやすかった。

    このちょっと変わった八咫烏の世界。面白い世界なんで、続編とかサイドストーリーとかも読んでみたいな。

  • 八咫烏が支配する世界、という設定の和ファンタジーです。
    帯に「后の座を巡る姫君たちの熾烈な争い」と書いてあったので、野心に燃える女同士の策略たっぷりのガチバトルを想定して読み始めたのですが、そこは姫君ということからかソフトな争いでした。
    どちらかというと女房が躍起になってる印象。
    それだけに、五章でのどんでん返しは、やや唐突だったけど驚きました。途中の違和感はこれだったのか、と。

    しかし、悪気がないとはいえあれだけのことをした彼女が特にお咎めなしだったのが…。根本的解決にはなってないけどいいのか?いいのか…。

    若君もあまり魅力的ではないかな。白珠のエピソードが、王道って感じで好きでした。

  • 面白かった NHKのアニメがなかなか面白いので手に取ったけど予想以上に華やかで怖くて続きが気になった 四季折々の描写も美しさが伝わって良い 「…この男の幸せを願わない日は、一日だってなかったのだ。」 とラストの「お前はいつだって、一番強くて素敵だった、と。」にほろり

  • 978-4-16-3816-10-4

    C0093¥1350E

    烏に単は似合わない (からすにひとえはにあわない)

    2012/06/25.第1刷発行

    著者:阿部智里(あべ ちさと)
    装画:苗村さとみ
    発行所:株式会社文藝春秋
    ---------------------------
    カバー袖より
    八咫烏が支配する世界”山内”で始まった
    日嗣の御子たる若宮の后選び。
    春殿のあせび、夏殿の浜木綿赭赭
    秋殿の真赭の薄、冬殿の白珠(しらたま)

    大貴族四家から集められた四人の姫は 陰謀や恋心を胸に美貌と再起を競い合う。
    だが、肝心の若宮不在のまま次々と事件が起こる。
    后に選ばれるのは誰…?

    ---------------
    あせび
    楽人を多く輩出する東家の二の姫。春殿を与えられ、うこぎら侍女と住まう。

    浜木綿
    商才にたけた南家の一の姫。夏殿を与えられ、芋麻ら侍女と住まう。

    真赭の薄
    文化芸術に優れた西家の一の姫。秋殿を与えられ、菊野らと侍女と住まう。

    白珠
    武力を誇る北家の三の姫。冬殿を与えられ、茶の花ら侍女と住まう。
    ----------------------------------------------------------------

    お話の展開については、ほかの方も書いておられますので割愛。

    このお話の面白さは、トラップが上手に仕掛けられていること。

    この本、表紙には4人の女性(入殿した各家の娘たち)が描かれ、それぞれのキャラクターをほのめかしている。
    日嗣の御子の后「桜の君」が統括する桜花宮の見取り図
    ●山内衆:宗家の近衛隊。藤花宮と桜花宮を含めた御所の警備
    ●頸草院:山内衆の養成機関。
    ●藤宮連:普段は宗家女房として使え、有事の際は敬語・戦闘に当たる。

    次に、宗家・四家 家系図

    それから大前提に至るあらまし(メモへ)がありまして、序章となります。

    序章には「私」という人物、「すみ」という人物、桜模様の着衣を身に着けた巻き毛の人物の3人が登場し、いずれも5.6歳の子どもとして描かれている。
    --------------

    表紙の絵。家系図。桜花宮の見取り図。ここまでで読者は(少なくとも私は)
    ふ~ん、この4人がおきさき候補で、女の駆け引きがあるのか?
    見取り図が乗っているとは事件性 有だな。 と考えた。

    次に 序章で3人の人物(幼い子どもとして)登場し、このうち一人だけが「娘」と書かれ性別がわかる。が、この文章の終わりには、風景、景色が書かれ、雅な雰囲気で、のどかな、やさしい余韻を残す。
    これが、物語の導入部の雰囲気作りだけではないとこの時点で気が付く読者がどのくらいいるだろう?

    一通り、四家娘たちのキャラクターを色濃く感じさせる出来事がつづき、中でも東家の姫(あせび)は好意的に(緊急の代打で登板し、芸の才を持ち、悪心なく)描かれる。
    たぶん多くの読者は、この人が主人公で、后に選ばれてほしいと応援する気持ちになるような出来事が多々仕込まれている。
    物語はこの姫から始まっており、印象も強い。

    家系図にもあり、代々のしがらみ、宗家の力と四家の力。
    この物語では、子は卵で生まれるそうだから、その辺りはよくわからないが、戦国のお家騒動と国盗り合戦の女性版のよう。
    男性版との違いは 「女の性のような、産む性のしがらみ(執着)も含めた部分」なのかも。

    終章では、序章がリフレインされ さらに若宮の内面をうかがわせて終わる。



    この作品はまだまだ続きがあるので、この巻は作品全体としたら、舞台設定と、立ち位置のお披露目なのかもしれない。

    この宗家の若宮(つまりは后を選ぶ)が強烈なキャラクターで、しがらみと運命に縛られて、諾々とそれを受け入れるだけのぼんくらではないらしいところも、次巻の展開を期待させる。山内サイトに対抗する適役も必要になってくるだろうし、その存在は強烈そう。

    アニメや漫画はみやびやかなシーンだけでもファンがつくかも。類似品がなければ。

    長編としての作品を楽しむには、この巻の、これまでに至る先代の絡みも忘れないようにしないと。


    松本清張賞(良質な長編エンタメ作品に贈られる賞)

  • 最後のどんでん返しが気持ちいいぐらい凄すぎた!
    誰が好きなんて無くなるぐらい4人とも魅力的。

  • 2作目を読んでから、1作目へ。
    どんでん返しのある謎解きが面白かった。
    心理描写もいい感じ。
    設定が、ある程度日本の古典に似ているのでファンタジーの世界に入りやすい。

  • 初めましての阿部智里さんは群馬県前橋市出身です。同郷ということで以前から気になっていたこちらは八咫烏(やたがらす)シリーズの一作目。

    阿部智里さんは早稲田大学在学中の20歳の時にこの作品で、なんと史上最年少で松本清張賞を受賞しデビューされました。こちらのシリーズは現在第一部6冊、外伝1冊、第二部4冊の計11冊刊行済みですが、まだ完結はしていないようですね。

    日本神話にも登場する三本足の伝説の烏「八咫烏」…人間の姿に変身することができる彼らを主人公に異世界・山内を舞台にして描かれる異世界ファンタジーです。

    「八咫烏シリーズ」というファンタジーだということくらいしか知らずに読み始めたところ…いわゆる「後宮もの」らしいことが判明。個性豊かな4人の美しい姫たちが、日嗣の御子である若宮の后の座「桜の君」をめぐり、さまざまな思惑が絡まり合います。

    漢字の読み方に苦戦しつつも慣れてきた頃にふと気づく…あれっ、これってもしかしてミステリですか?俄然おもしろくなってきました〜続きがめっちゃ気になる。

    そして最後は…驚愕!怒涛の伏線回収…すっっっかり騙されました。こういう騙され方って正直あまり好きでは無いけれど、いやいや、お見事でした!

    今作では「八咫烏」はさわり程度でしたが、次巻以降はもっとメインで出てくるのかな?

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2023年 『烏は主を選ばない(4)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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