クロコダイル・ティアーズ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915982

感想・レビュー・書評

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  • クロコダイル・ティアーズとは噓泣きのこと。美しい妻は、夫の殺害を依頼したのか。家族の間に疑心暗鬼が広がって—— 夫を殺した犯人は、かつての恋人だった。この男が裁判で「妻に殺害を依頼された」と証言。美しき未亡人は、悪女なのか、それとも。謎解きでもなく犯人探しでもなく一風変わった作品のように思える。直木賞候補にもあがった作品。2日間で読んでしまった。評価がわかれるだろうが私は★5

  • クロコダイル・ティアーズとは噓泣きのこと。嘘泣きもひとつのキーワードだが、それに関連するように人が人を疑う人間模様が黒い。人はとことん人を信じることができる一方で、とことん疑うこともできる。本作品は男女関係や嫁姑問題、再開発に伴う対立など、まあよくあるいざこざが表面にある。その渦中にある登場人物は事件に関連する人々を信用できなくなり疑心暗鬼に陥る。作品中でずっと疑われるのは想代子だ。元交際相手に夫を殺害されるが、犯人の元交際相手からは想代子が黒幕であるかのような捨て台詞があり、大事な瀬戸物が紛失した事件の犯人と疑われ...。人を信じるかどうかはその人によるが、疑いが生み出す恐怖のようなものを作品から感じた。

  • 何とも言えない後味の悪さ。物事は、見方一つで180度変わる。何を信じるか。どの言葉に耳を傾けるのか。何が正しいかなんて、結局わからない。そのことを私たちはよく分かっているはずなのに、都合よく解釈し、真実と定義づける。世の中矛盾だらけだ。

  • 後味悪い…!!白黒はっきり書かず、もやもやしていることで成り立っている小説だとは思うけど、このもやもや具合がなんとも気持ち悪かった…

  • 老舗陶磁器店を営む貞彦、暁美夫婦の息子康平が殺された。犯人はすぐに捕まるが、犯人の隈本は康平の嫁の元カレだった。裁判結審の場で隈本は嫁の想代子から夫殺しを頼まれたと騒ぎ立てる。警察も信じない隈本の言葉だったが、家族はその毒に侵されていく・・・・

    想代子・・・怪しい・・・( ゚Д゚)
    いや、怪しくない?周りが疑いすぎ??
    結局どっち??私は怪しいに一票(・∀・)/ 

    白黒はっきりしない状況ってこんなにも人を惑わせて、その疑心暗鬼の心って体も蝕んでいくんだな~って怖かった。その一部始終を、しら~っと見て過ごしている想代子って白だったとしても私はそばにいたくない人ww
    最後にどっちかはっきりするような証拠?が出てくるかと思い読み進めたけど・・・すっきりしないままの読了で、それが私にはそこまでの過程を間延びさせたような感じがしてシラケてしまった(´・ω・`)

  • 読み終わると、タイトル秀逸だなと思った。この主人公凄いな。こういう人っているんだろうな。知り合いにはなりたくないし、関わりたくないよ。ワニ嫁ミステリー」って評してる書店員さん、まさにな!って感じで笑った。疑心暗鬼、グレーなら白。ラストまで読んでもワニ嫁を信じてない自分がいました。

  • 最後まで何が正しいのか、わからなかった。

  • Amazonの紹介より
    この美しき妻は、夫の殺害を企んだのか。
    息子を殺害した犯人は、嫁である想代子のかつての交際相手。被告となった男は、裁判で「想代子から『夫殺し』を依頼された」と主張する。犯人の一言で、のこされた家族の間に、疑念が広がってしまう。

    「息子を殺したのは、あの子よ」
    「馬鹿を言うな。俺たちは家族じゃないか」

    未亡人となった想代子を疑う母親と、信じたい父親。
    家族にまつわる「疑心暗鬼の闇」を描く、静謐なサスペンスが誕生!


    題名を日本語に訳すと「ワニの涙」。目の潤滑のために涙を流しているということで、悲しんでいるという訳ではありません。これが、偽善者が悲報に接して噓泣きをするような、偽りの不誠実な感情表現のことを指す言葉だそうです。(Wikiより)

    果たして本当に悪女なのか?「火の粉」や「望み」などを彷彿させるような、人を疑うことへの警鐘や心を右往左往させるような揺れ動きを仕掛ける手法がうまいなと思ってしまいました。

    小さな疑惑を持ったら最後、何でも裏があるのではと思ってしまう心理にとても共感しました。
    現実でも、関係者ではないのに、ネットの信頼できない情報などちょっとでも疑惑が入ると、「シロ」から「グレー」な印象へと変化してしまうので、何とも耳が痛い気持ちになりました。

    序盤では、様々な登場人物が登場し、こんガラってしまうのですが、相関図を作ることで、整理がつきました。

    陶磁器を扱っている貞彦。その妻・暁美。
    貞彦の父・嘉男。
    貞彦の息子・康平。その妻・想代子。
    貞彦の孫(康平の息子)那由太。
    暁美の姉・東子。その夫・辰也。

    基本的に暁美や貞彦の視点で、物語は進行していきます。
    疑われている想代子の視点は、最後まで語らないので、ずーっと疑いの目で読んでいました。
    最後に登場するのですが、なるほどこういう思いだったんだと妙なスッキリ感がありました。

    それまでの心のモヤモヤ感が気持ち悪くて、ある意味不思議な感覚がありました。
    犯人が判決までの間、なぜ想代子が加担したと言わなかったとかがあるため、想代子はほぼシロだと思っていたのですが、想代子の行動が怪しくもあったこともあり、暁美の気持ち同様に疑うばかりでした。

    大きな盛り上がりはなく、沸々と静かな時間は流れているものの、内情では心のマグマが爆発しているかのような時間が流れていて、結果的には凄まじい家族ドラマだと思いました。
    明確に真実が語られているというわけではないのですが、多分こうした事実だろうとは読み解けます。その状況での想代子の人生は凄いなと思ってしまいました。

    もし実写化するのであれば、想代子は木村多江さんがピッタリだと勝手に思ってしまいました。

  • 疑心暗鬼によるすれ違い。一度こうなると、なかなか抜け出せない。老舗という守らなければならない財産があると、一般の家よりも疑り深くなってしまうのではないだろうか。
    ずっと暁美夫婦目線で書かれているので、読みながらも想代子に対して、白黒どっちなんだ?と落ち着くことができないまま読み進んだ。暁美とは結局心通うことなく、こんな風に姑から見られていたら、嫌で仕方ないよなと思っていたが、暁美も疑心暗鬼による被害者なんだなと思った。想代子強いな。

  • 息子が、嫁の元恋人に殺された。嫁が息子の殺害を依頼したのか。嫁・想代子視点の描写がなく、姑たちの視点で話が進んでいく。その視点の一つ一つが読み手にいろんな真実の形を見せてくる。どのように見るかで人の印象は姿を変えていく。長所も短所でありまた短所も長所である。とても意外な結末だった。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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