人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

感想・レビュー・書評

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  • 2030年ごろに、汎用人工知能が開発される。汎用人工知能の活用とベーシック・インカムの組み合わせ。

    AI、IOT、ビッグデータ。3Dプリンター。
    技術的失業の再現がおきる。

    貧富の差の拡大の理由=肉体労働、事務労働、頭脳労働に分けると、中間の事務労働が減り、肉体労働または頭脳労働に移行する。その結果、貧富の差が拡大する。

    ディフュージョン=拡散、普及の時間が短くなる。その結果失業の受け入れが追いつかない。

    データマイニング、テキストマイニングのあとに、ディープラーニングによるブレイクスルーがおきた。
    プロ棋士の真似をするのではなく、新しい手を指すことができる。

    容易に収穫できる果実は食べつくされた=イノベーションが生まれにくくなっている。

    肩車効果=新しい発見が新たな発見を生む、による技術開発の加速と、取り尽くし効果=新たなアイデアの発見が難しくなる、による停滞のせめぎあい。

    ボーモルのコスト病=労働集約型産業の相対価格が上昇する=労働集約型産業は生産性が上昇しにくい。

    技術進歩はそれによって需要が増大すれば雇用を増やすが、無ければ雇用を減らす。
    技術的失業は摩擦的失業であれば吸収されるが、需要不足による失業になれば、解決できない。

    金本位制または金属貨幣ではデフレ不況が度々発生した。貨幣は中立的である、という命題は間違い。ヘリコプターマネーが必要。

    2030年ごろは、siriのようなものがもっと賢くなる。事務作業ができるようになる。

    機会に奪われにくい仕事=クリエイティブ系、マネジメント系、ホスピタリティ系。
    経済学者もデータサイエンティストに近い(トマ・ピケティの著作など)。これもAIのほうが優れている。

    世界は工業化することで、欧米とアジア・アフリカで大分岐がおきた。収穫逓増の経済が登場した。

    機械化経済では、超長期的には2%程度の経済成長に落ち着く。純粋機械化経済では、労働がボトルネックにならないので成長は無限(ただしサプライサイドのみを考えた場合)。

    価格を決定するための需要と供給は要因が無数なので市場に任せる以外に決定する方法がない=社会主義がうまく行かなかった理由。

    クーポン型市場社会主義の可能性(ジョンローマーが提唱)=政府がクーポンを配り、それで企業の株を買う。すべての会社は個人株主の所有となり、利潤が個人に配分される。死亡時には政府に返す。
    企業利益を全員に配分する方法。

    ベーシックインカム=イランやアラスカの天然資源による収益は分配されている。

    ハイパーインフレになる心配。少しずつ増やす。
    生活保護のほうが実質的コストがかかる。
    マイナンバーと紐付ければBIはかからない。
    BIのお金は、国内で使われるからなくならない。
    ただし、大幅増税になる。半数はBIより税金が多くなる。

  • 希望の党が選挙公約に盛り込んで、にわかに脚光を浴びている「ベーシックインカム」。本書は、ざっくり言えば、人工知能が進化していって、人間の仕事が人工知能に置き換わっていくと、人間はみんな失業しちゃうよね、失業したらどうやって生きていくの?その答えがベーシックインカムあるんだ、というはなし。

    本書の中では、AIはひとつの仕事を特化してこなす「特化型AI」と、どんな仕事もこなす「汎用AI」に区別して議論が展開されていきます。プロ棋士を打ちのめした最強将棋ソフトPonanzaは、特化型AI。iPhoneに入ってるSiriも特化型AI。将棋や会話(+α)しかできません。というか、今世の中にあるAIは全部、特化型AI。まだそこまで技術は進んでないんですね。ドラえもんが生まれたら、汎用AIです。

    特化型AIであるうちはいいんですよ。人間の仕事の多くは(手始めに会計とか事務作業でしょうか)AIに置き換わっていくかもしれませんが、それでも仕事をさせるのは人間です。人間は、特化型AIよりも得意な作業をしていればいい。

    でも、汎用AIになったら話は別です(何年先の話になるのかわかりませんが)。汎用AIが特化型AIに自ら仕事をさせ始める。そうすると経済は人間抜きに回っていく。人間が仕事をする場面はなくなるわけですね。みんな失業状態です。(バーテンダーとか、人間性が重要な仕事は一部残るでしょう。でもやっぱりごく一部。著者に言わせれば約1割。)

    じゃあみんな失業したから餓死するのか、というとそうじゃありません。AIは勝手に仕事をしてくれますので、食料その他もろもろを生産します。それを(お金として)みんなに配る。これがベーシックインカム。生活保護は資力調査とか行政コストがかかるし、ソビエト的計画経済は市場を通じて需要と供給の調節ができないから情報の吸上げに難がある。だからベーシックインカム。まあ、実際には、ほとんどみんな失業している極端な世界でなくても、仕事が人からAI(機械)に移っていったところで初めていくことになるでしょう。

    「働かざるもの食うべからず」という格言がありますが、AIが進化している世界で、この概念はもう古い。人間が労働から解放されるのは、素晴らしいことだとぼくは思うけど。

    最後にちょっと批判的なコメントを。AIの発展により需要不足が発生した場合のマクロ経済的解決手法として、金融緩和政策があげられています。じゃぶじゃぶに緩和すれば、それで需要が発生するので万事解決、みたいなことが書いてありますが、それでうまくいくのかというのはかなり疑問。まあこれはマクロ経済学上の宗教戦争に発展するので、ここまでにしときます。

    もうひとつ、いまベーシックインカムを導入した時の財源問題ですが、かなり楽観的かなと思いました。ベーシックインカムがあるから(フルタイムで)働くのやめよって人も出るはずで、そもそもの全体の税収は落ちるはず。財源問題は慎重に検討する必要があります。

    とはいえ、ベーシックインカムは(いろんな問題をクリアして)導入できれば素晴らしい制度だと思うし、AIの進化に伴って技術的失業の議論は避けて通れない。ベーシックインカムなんて突拍子もなくて馬鹿馬鹿しい、という見方もあるようだけれど、正しく理解してもらいたい政策です。

  • ところどころ「?」なところがあるものの、極かいつまんでAIの脅威を解説できていると思う。

    特に後半のイノヴェーションやBIについては興味深く読んだ。イノベーションは仕事を奪う側面、それに伴う新しい雇用需要を生み出すこともある、ということであった。

    しかしすべての仕事をAIが行うようになれば、どうなるであろうか。著者は1割しか社会で働かない社会がそう遠くない将来来るであろうとする。著者はBIというか、負の所得税を算出している。財源的にも問題ないであろうと考える。

    資本主義が始まってまだ300年経っていない。延命措置を行いながらも、だましだまし続けている。あともう早くて50年、遅くとも100年以内にAIが経済の屋台骨を支え、BIが配られる世の中になるかもしれない。それはかのシュンペーターが説いた、「安楽死された資本主義社会≒社会主義」へと至るであろう。しかしそれでも、人類は技術革新を続けるであろうか。

  • 2017年10月

  • AIとBIをつないで語る論説は初めて。大学の先生と居酒屋で話しているようなざっくり放談みたいだけど、でも、そうなるよな…という納得感。AIとは何か?とかシンギュラリティは来るのか?とかの先の、人工知能の時代はどんな社会制度になるのか、という意味で大雑把でも必要な議論だと思いました。資本主義の終わりが社会主義的なものになるという歴史感、刺激になりました。前原代表の「all for all」期待していたけど、尻窄みになりそうな今、ベーシックインカムを社会保障の観点だけでなく、テクノロジーの視点から光を当てる試み、さらに活発になるといいな…

  • ・機械に奪われにくい仕事。CMH。

    ・ベーシックインカム。

  • 1つの例外があれば経済の基本理論を間違いだと言い切り,1つだけの例で違う理論を言い立てる,そんなの理論でもなんでもなくて思いつき。
    AIの理解も正しいのか非常に疑問。

    ヘリコプターマネーとほとんど同じ記述が散在する。

    純粋機械化経済になってほとんどの人が働かなくなってベーシックインカムだけの生活になった時に,生産性が向上して生産されるものを誰が消費するの? 生産性は向上しても消費量が増大しないから生産量はそんなに増えないだろ?

  • 去年出てたんだ、売れてるのに最近まで知らなかったが、読んでよかった。大胆な未来予想図だが、ここまでぶち上げて社会的影響を考えていると、1つのモデルとして指針になっていいと思う。ベーシックインカムの議論は、若干、無理やりAIに繋げてきた感はあるが、筋も通っている。なによりあとがき部分がよかった。注部分をパラ見したときから気になっていたが、後書きではバタイユの有用性批判とケインズをひいて資本主義的考え方、特に時間認識を批判する。欲を言えば、著者のよって立つケインズ主義側じゃなく、新古典派側がAIによる社会問題をどう見るかは気になった。

  • AIのスタートアップでのインターン面接に際し読破。
    AI開発エンジニアや業界人とは全く違う経済学者からの視点でAIが今後経済にもたらす影響今後の動向を述べている。

    技術的失業は避けられないがその中で生き残るクリエイティブとソーシャルインテリジェンスという2つの業界があるなどなど学ぶものが多かった。

  • 直近10年以内の話だけでなく、2040年・45年の内容も記載されており、AIについて中長期的な展望を知りたいときに効果あり。
    読みやすく、内容もしっかりしていた。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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