人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
3.57
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感想 : 146
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

感想・レビュー・書評

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  • 最近少しずつプランドハプンスタンスが時代に合うようになってんじゃないかってスタンスにシフトしつつある。
    この本で言うと「仕事が機械に奪われる事を恐れるのは、有用性を重視する資本主義思考に染まってるから」って論理と通ずるものがある。
    金利上昇を前提とすれば、「将来の為に今を我慢する」という山登り型のキャリア観は正しい。転職が前提になり「成長」がキーワードになっても”勝ち馬に乗る”という視点が生まれただけで本質的にはそんなに違いはない。
    が、これからはマーケットキャップが富を生む時代に更にシフトしていくと思う。ただでさえ身近な需要は飽和に向かっているのにこれから先は更なる生産性革命が起きるのだとすれば尚更。

    一方、内容としては、AIで雇用が減る論理がザックリだからBIの展開がトンデモに見えるのが勿体無い気がする。サービスの需要が飽和しない限り(そしてそんなことは当分ありえない)仕事がなくなることはない、と考えている派。
    BI自体の有用性は理解できたから別で議論した方が良さそう。

  • 著者的には、AIが知性の大部分を超えるとは思うがすべてを超えるとは思わない、全脳エミュレーションじゃないとだめらしい、感覚の通有性は出ない、需要不足による失業の問題が出る、マクロ政策はじゃぶじゃぶで行くべし、貨幣は長期的に中立ではない、AIとロボットで雇用は2045年に全人口の1割、純機械化経済では需要が制約になりうる、汎用AI研究進めるべし、資源制約はナノテクで何とかする(のだが結構大変そう)、純機械化経済では過剰性の社会が来る、対策としてはベーシックインカム、という立場。
    どうも資源制約のところが私としては引っかかる。それと、1割の人間の欲とAIの純粋性と。
    読んでると読めてしまうがどうも何べん読んでもうまく腑に落ちないし、毎回書けるマップも違う。ポランニーの時はすっと落ちたのになんでだか。

  • 全体として、具体的な数字を用いた説得力があったが、人間の感性の観点が欠如していたように思えた。合理的だが、現在の世界を動かしているのは資本家やその政治家多いので技術だけでは世界の貧富の差が広がるだけだと思った。



    ベーシックインカム制度を資本主義の頂点でもある政治家が導入するかどうか。

  • 人工知能が経済に与える影響を、論理的に推測しようとする試みは参考になる。

    過去何度かの産業革命と同様に、仕事の在り方を一変させるような変化が私たちを待ち受けていることは明らかだ。

    ただし、BIのコンセプトが出てくると途端に怪しくなるのはなぜなのだろう。AIからBIへ的な論説が出た途端に、日本の国家財政が破綻する的な胡散臭い本と同レベルに成り下がるような気がする。

  • この本を読んでからバタイユのことばかり考えている…AIとベーシックインカムを結びつける考えは面白い。ベーシックインカムは将来的に実現するような気がしてる。AIとブロックチェーンと電子マネーを組み合わせることで実現するような気がする。

  • 確かにベーシックインカムを真剣に検討すべき状況が近づいていると思う。グローバル社会が蔓延して人間の価値をその有用性に求める度合いが究極になってしまっている状況で、このコペルニクス的転換をどのように無血革命で成し遂げていくかが、この数十年の人類の最大の課題だと思った。久しぶりに新書で良書を読んだ。

  • AI がこれからどのような方向性で進化していくか、それによる将来を経済、産業の面から予想している。将来は多くの人が働かないことが普通になり、それによって当然収入がなくなるのでベーシックインカムが必要だという主張。自分の子供は将来どういう方向に進んだら良いか、単純にやりたいことをさせれば良いとか、夢を追いかければ良いとかではなく、本書にあるような将来を念頭に真剣に家族で考えなければと思った。というかまず自分が少しでも資本を増やしとかないとまずいってことだと思うが・・・

  • 人工知能の現状と発達の可能性・限界,発達が経済に与える影響を論じた上で,人工知能によって代替され失業する労働者の生活を保障する仕組みとして,ベーシック・インカムの導入を提唱する.人工知能にはヒトの脳の個々の機能をモジュールとして捉えてその再現を目指す「全脳アーキテクチャ」方式と,ヒトの脳の神経構造そのもの(コネクトーム)の転写・再現を目指す「全脳エミュレーション」方式があり,いち早く実現するとされるのは前者というのは勉強になった.本書とは関係ないが,以前NHKの番組で,ロボット研究の第一人者である石黒浩氏が,「遠い将来人間は自身の身体を機械で置き換え,有機物でできた身体を捨てて無機物からなる存在に進化する」という見通しを出していたのを思い出した.一方本書はそのように,人工知能をヒトが自身の脳機能に組み入れ・置き換えるという段階に達するには,まだ100年以上かかるという見通しで,そうした事態までは想定していない.人工知能に辛うじて勝てる上位の人間になれるとは思えないし,かと言って失業者の生活を保障する仕組みが,何かとレスポンスの遅い日本で整うのかという疑問もあり,数十年後の将来に対してやや暗澹たる思いを抱く.

  • ★2018年1月20日読了『人工知能と経済の将来 2030年雇用大崩壊』井上智洋著 評価B+
    しばらく期待外れだったAI(人工知能)の発展が急速になり、いよいよ人類と人工知能の共存が真剣に問題になる時代が近づいている。
    その先には、どのような人類の未来が待っているのか?この本では、その解決策は、選別主義的社会保障である生活保護ではなく、普遍主義的社会保障たるベーシックインカム給付が予測されると述べている。しかし、それで、人類はその先生き残っていけるのか?やっても、やらなくても同じ、人と同じような待遇に甘んじていられるに慣れて、人類の発展は止まってしまい退歩し始めるのではないかとも危惧してしまう。

    1800年代初頭のような人手労働を奪う機械装置を人々が襲撃して壊した機械打ち壊し運動(ラッダイト運動)のようなことが再び起きるのか?

    間違いなく情報技術を使いこなす高いスキルを持った労働者の需要が増大する。その一方で、定型的な入力、事務処理労働は急速にAIで取って代わられ、それらの職は減少すると予測されている。著名な発明家のカーツワイルは、2045年にSigularityすなわちコンピュータが全人類の知性を超える時がやってくると予言している。

    過去人類の歴史であったような技術進歩に応じた需要の拡大がないと、人々の失業が長期化する懸念もある。それを補う政府によるマクロ経済政策も必要かもしれない。

    一方、残る仕事と見られるのは次の3系統 1.Creative系 2.Management系(Social Intelliigent) 3.Hospitality系である。

    今後AI化の進歩により生産活動自体は機械装置(AI,ロボット)に任され、その生産技術と製品の開発、研究には人が携わる。生産装置の進化によって生産性は必然的に高まっていくため、潜在的な経済成長の可能性は高まるものの、実際には需要はそれに追いついていくとは考えられない。

    脱労働化社会となっていき、賃金のみから収入を得る労働者と利子、配当だけで収入を得る資本家に二極化していく。

    最終的には、機械が究極の生産を担う形になっていくとすれば、必然的に労働者は不要となり、多くのものが失業する可能性が出てくる。
    ジョン・ローマーは、その場合に、クーポン型市場社会主義と呼ばれる企業の株主に、国民が割り当てられ、企業の利潤を配当として個人株主に配当する、その代わり株主は死ぬまで止められず、死んだら株は国へ返還され、他人に渡されるシステムとなる。要はクーポンのような仕組みで、国民の生活を支える形とする。また、Basic Incomeの保証として、毎月全国民に一律適正な定額は支給される形も想定される。

    こうなってくると、賃金によって測られる人間の有用性はさほど問題ではなくなり、残された余暇時間の多くは未来利得の獲得のためではなく、現在の時間を楽しむことが重要となる。

    ジョン・メイナード・ケインズは、『われわれはもう一度手段より目的を高く評価し、効用よりも善を選ぶことになる。我々はこの時間、この一日の高潔でじょうずな過ごし方を教示してくれる人、物事の中に直接喜びを見出す事ができる人、汗して働くことも紡ぐこともしない野の百合のような人を尊敬するようになる。』と予言している。

  • 【文章】
     読み易い
    【気付き】
     ★★★★・
    【ハマり】
     ★★★★・
    【共感度】
     ★★★★★

    汎用AIへのアプローチ
    ・全脳アーキテクチャ…脳をスキャンして機能をコピー(※トランセンデンス)
    ・全脳エミュレーション…脳の部位毎に機能を作って統合

    自発的な欲望獲得の有無が、AIと生命の壁

    純粋機械化経済への移行からベーシックインカムが実現するまでの期間を、如何にやり過ごすかが問題

    有用性から至高性への転換
    「誰かの役に立っている」ということに価値を感じてしまうのは資本主義が生み出した幻想にすぎない、「人間の"生"そのものに価値がある」という価値観への転換が必要

    やはり、AIが抽象化能力を獲得したのは大きいと思う。もうその段階で、ある一定数の人間の知能を超えてしまっている気がする。

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著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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