手紙 (文春文庫 ひ 13-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110116

感想・レビュー・書評

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  • もう剛志の最初の手紙を読んだ瞬間から涙がぽろぽろと...笑
    中学校の時に「人権」についての作文を書きなさいと宿題を出されて、その時に書いたのがこのお話にも通じる「犯罪者に果たして人権はあるのか」というものだったので、何年か越しに再び深く考えさせられました。
    差別はだめなことだとみんな教えられてるし、わかっているはずなのにどうしてなくならないものなのか。でも実際に直貴のような人が現れたら私は、心から仲良くしたい、はたまた結婚しようとおもえるのかどうか不安になってしまいました。
    犯罪を犯した人は許してはいけないし、ましてや剛志のような強盗殺人なら差別されても文句は言えないけど、でもその兄弟を、一緒になって虐げるのはそれとこれとは別じゃないかと強く感じました。
    でも実際に凶悪犯罪のニュースを見ると、犯人はもちろんのことですが、関係のない家族のことも恨んでしまうことが何回もあったのを思い出し、「なんだ。自分も結局だめだと思ってることをしているじゃないか」と悲しい気持ちにもなりました。
    でも剛志は、許されないことしたのは間違いないし、それなのに呑気な手紙ばかり送り続けていることに腹も立ちますが…それでも何故か恨めない、そんなキャラクターでした。
    あと由美子が一途で優しくて...泣
    最後はもう号泣間違いなしです。今でも思い出すと目頭が熱くなります。

  • おそらく、小説を読んで涙が出たのはこの本が初めてかもしれない。
    理不尽な差別に、どうやって生きていけばいいのかもがき、それでも生きていかなければならない苦しさを存分に味わった弟と、本当の罪とは何なのかを知った兄。
    最後の最後、その二人が初めて交わる展開にそれまで読んできたページが思い起こされて、涙が止まらなかった。

    登場人物では、白石由美子の存在が大きい。
    彼女には登場初期から好感が持てた。
    素晴らしい女性だと思う。
    そして、直貴も彼女に出会えたことは、そのどん底の人生の中で珠玉の出来事だったと思う。

  •  弟の為にと強盗殺人を犯して獄中生活を送る兄、剛志。彼の罪を背負いながら差別を受け続ける弟、直貴。切なすぎる物語。

     人と人はどうしてこんなにも分かり合えないのだろう。毎日顔を合わせていても、正直な人の気持ちを汲み取ることは難しい。手紙のやりとりでは相手の気持ちを理解することなんて限界がある。そう感じた。

     しかし、剛志にとって連絡する手段は月1度の手紙だけだった。償いと励ましだと信じて、弟と遺族へ手紙を送り続ける。きっかけがあり、それは彼らにとって苦しみを悪化させていたことに気づく。獄中生活でさえ苦しい日々、残酷な事実を突きつけられた彼の気持ちを考えると、悲しくて仕方がなかった。彼には「救い」が存在しないのではないかとさえ思った。


     読み進めていくうちに、何かが少しずつ芽生え始めている感触があった。

     ラストシーンは涙なしでは読めない。希望はどこかに必ずあると思えた。



  • 難しい世の中を見た。

  • たった1つの過ちが人生すべてを狂わせる。身近に起きてもおかしくないリアルさに共感。

  • 立場が変われば、考え方が変わる。

    差別がいけないとはっきりと言えるのは、
    自分が差別される側にも、する側にもならないときなのではないか?

    理屈でわかっていても、心がついていかないことがあると思う。

    難しいテーマだった。

    何が正しいのか答えは出ない。

    自分にとって最適だと思われる考え方や
    行動を選択していくしかない。

  • 読書を始めようとおもったほん

  • 「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。」
    この本が出てから十数年も経っているはずなのに、今の世界でも狂うことなく刺さる歌詞やな。

    先輩に東野圭吾さんのおすすめを聞いて、軽い気持ちで読んだが痺れた。


    強盗殺人犯の兄を持った直貴の苦悩がありありと読み取れる作品だった。

    正直、2章3章あたりの話は鬱でしかなかった。不遇な運命を背負ってしまうとこんなにもうまくいかないのかと同情せざるをえなかった。直貴は同情なんて求めてなかったのかもしれないけれど。

    この話を読み、やはり私は恵まれた環境で育ってきたのだなと思わされる。親の愛情をきちんと受け、何不自由なく大学まで行かさせてもらった。この環境で育てられた自分には想像のつかない痛みがあるのだ。

    思い出してみると、たしかに、育った環境の違いで人の痛みに寄り添えなかったことはあったと想起された。

    そんな見えない差別、偏見に気づくためにもこの本は重要なのかもしれない。


    今まで東野圭吾さんの作品は避けてきたけれども、やっぱり読書って大事だなと改めて思いました。

  • 事件の報道を見れば、被害者の目線で考えることばかりだった。
    自分が犯した罪ではないのに苦悩な運命を背負う加害者の家族。読んでいて辛かった。これは兄弟愛なのか。
    それまで深く考えたこともない加害者家族側の心情が伝わりました。

  • 小説も映画も気になってたけど、どちらも観ないままだったと気づいて。
    大ヒットした作品だから今さらながら、という感じだけど。

    端的に言うと、強盗殺人事件を起こした兄を持つ青年・直貴を主軸とした物語。
    獄中の兄から毎月届く手紙と、その手紙を巡る人間模様。
    自分は何も悪いことはしていなくても、そういう兄弟を持ってしまったことで、就職、恋愛、結婚、夢、あらゆることがうまくいかなかったり、差別を受けることになってしまう。とても重くて、辛い内容。

    読みながら、秋葉原の無差別殺傷事件のことを思い出した。その事件自体ではなくて、事件の後、犯人の弟が自殺してしまったということを。
    犯人が隣の市出身だから、たまに知ってる人がいたりして、少し話を聞くこともあって…こう言ってはあれだけど、事件を起こした人間はその後すぐに社会には戻らないで刑期を過ごすなり死刑になるなりするけれど、そういう家族を持った人間は変わらず社会の中にいて、もしかしたら受刑者よりも苦しい思いをするのではないかと思う。

    この小説もそうで、いつまで経っても兄の起こした事件が直貴につきまとう。それは理不尽に思えることばかり。
    でもこれは直貴にスポットを当てているからそう感じるだけで、もし実際近くに直貴のような人がいることが分かったら、自分だって小説に出てくる多数の人間のような振舞いをしてしまうのかもしれないと思う。露骨に避けはしなくても、腫れ物に触るような扱いをしてしまうかもしれない。それも無意識に。
    だからそういう差別はけして特別なことではないということ。
    私自身は法に触れるわけでもないことで差別されたことがあるくらいだから、世の中にはそういうことって溢れてるんだと思う。悲しいけれど、当たり前に。

    一度重大な過ちを犯してしまったら、それまでどれだけ真面目に生きてこようが、どれだけ優しい人間であろうが、そんなことは全く関係なくなってしまう。外から見ている人間の大半は、起きた事実にしか目を向けない。
    「本当は悪い人じゃないのに」って身近な人間が思ったとしても、罪を犯してしまえばみんな一様に「悪い人」にされてしまう。それも当然のこと。

    それぞれ色んな思いがあって起こってしまったことだからこそ悲しくて、どうにかして防げなかったのかと辛くなった。
    ほんの少しの気の迷いで周りの人間の人生までめちゃくちゃにしてしまう可能性がある。それは常に心に留めておかなければならない。

    東野圭吾さんの小説って数冊しか読んだことなかったけど、すごく読みやすくて、どんどん進む面白さがあった。売れてる理由が分かりました。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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