69 sixty nine (文春文庫 む 11-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 256
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  • / ISBN・EAN: 9784167190071

感想・レビュー・書評

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  • これまで村上作品の読み方を履き違えていたのかもしれない。と思わざるを得ない程の傑作。

    社会がeuphoriaから醒めつつある時代、人間を家畜へと変える「退屈」の象徴である教師に、阿呆らしく反抗する矢崎がかわいい。

    「どんな時代でも若者は無力だ」。だからこそ、突出したエネルギーの源泉は、ただ「モテたい」というワガママで良いし、虚栄で良いし、自由で良いのだと思う。

    とある本の、仄かな短文に涙が止まらない。言葉というものがどれだけの威力を持ちうるか。人の心を救いうるか改めて感じる。文章を享受し続けられるだけで生きる価値があると思わせてくれる。



    •「校長から色々と言われる時、目を逸らしたり、下を向いたりするな、卑屈になるなよ。信じてやったんだから、堂々と、処分を受けてこい。」

    •「それで僕は、まあいいや、と思った、例えば、夏には、きれいなヒマワリやカンナが咲く、それをみるだけで、まあいいや、と思うんだ。」

    •高校生は家畜への第一歩なのだ

    •闘争は、具体的な要求があった方が広がりを得やすい、人民は具体的な闘争テーマを彼らの不満の拠り所とするのだ。

    •卒業式がいかに帝国主義国家の権威的行事であるか!

    •楽しく生きるためにはエネルギーがいる。戦いである。

    ————————————————————————


    ——-楽しんで生きないのは、罪なことである。

    変化のない成熟社会の権力に抗う唯一の方法は、「楽しみ続ける」ことでしかない。

  • 自分が高校ことが懐かしかった。私も筆者のように、突拍子もない思いつきで、あれこれただ面白そうとかハラハラドキドキしたいとか、ただやりたいという理由だけで、ものすごいエネルギーを出して一個一個を自分たちの頭で考えてやっていっていたなあ。そしてそこには何の迷いもなかったことに、今は羨ましく感じる。今はやること全てにこれをやって何意味があるのだろうか、将来役に立つだろうか、人と比較して生き残れるか、食べていけるだろうか、そんなことばっかり考えて何かをやるのも遅いし、高校生の時のような熱いエネルギーを今は出せていないことに少し残念な気持ちになる。本当は、高校生の時のように友達たちと思いついたことを、どんどん燃えるようなエネルギーで思いっきり楽しみながら突っ走っていきたいものだよ。あのときになぜが持っていた無敵感をまた持ちたいって思う。本来はもっと自由な世界なのに、社会に出てから、世間、社会、常識、恥、社会の役に立たないと、とかいろんなことを意識させられてしまう。そして、この高校生たちが政治や社会の関心を持って熱くなっているシーンも羨ましいと思った。それに比べて今の私たちは、、、、

  • 久々に読んだ村上龍さんの作品。
    半島を出よ、5分後の世界からの続きで読了。

    毎日を楽しむためにバカなことをやる高校生達の物語。
    村上龍さんの高校生の頃の実際のエピソードが入っているらしい。

    「安田公会堂事件、全共闘」等、時代背景的に自分には理解できないものがけっこうあった。
    が、女の子にモテるためだけにバリケード封鎖を敢行したり、目立つためだけにフェスティバルを企画したり、とにかく全力でアホらしいことをする若さ…
    読みながらここまでめちゃくちゃ笑った作品は最近無かったような気がする(笑)
    若者の勢いって良いなぁと、読んでいて爽快な気持ちになる。
    自分もココまでデカイことはやったことはないが、純粋に無意味なことを楽しんでいた学生時代を思い出し、すごく懐かい気持ちになった。
    きっとこれを読めば、みんな同じに気持ちになるはず(笑)

    とにかく文章が軽快で、テンポ良く面白く読める、この点は村上龍さんの筆力だと感じる。
    特に、文章中で何回も出てくる『〜というのは全くの嘘で』パターンで何回も笑ってしまった(笑)

    個人的には、親父さんがすごくカッコ良かった。
    警察に対しても『遜らずに自分の意思を通せ』と発言できるような大人に…自分はなれるだろうか…

    今回の作品で改めて感じたが、村上龍さんは作風が多彩で、本当に上手いなぁと。
    本作は学生もの+笑える作品だが、『55歳からのハローライフ』では人生の分岐点となる55歳を艶っぽい文章で書き上げ、『半島を出よ』では九州が北朝鮮に攻められるというバーチャルな世界をシリアスに描いている。
    このジャンルの多彩さは、他の小説家に類を見ないように思う。

    <印象に残った言葉>
    ・一九六九年、僕達は一七歳だった。そして、童貞だった。一七歳で童貞ということは、別に誇るべきことでも恥ずべきことでもないが、重要なことである。(P24、ケン)

    ・フクちゃんはそんな男で、どげんしたら女ひっかけられると?と聞くと、いつと同じことを教えてくれた。高望みはいけん。(P35)

    ・ ちゃんと、考えてある。「跋折羅団(ばさらだん)」というんだ、梵語で、エロティックな、怒りという意味だ、どうだ、かっこいいだろう?(P67、ケン)

    ・ 想像力が権力を奪う(P80)

    ・ ナカムラは苦しそうに脂汗を垂らして、首を振った。違うて、なんがか?そう問い質してもナカムラは首を振るだけだ。アダマが肩をつかみゆすった。言うてみろ、言うてみろ、俺もケンも恐かとぞ、恥ずかしゅうなかけん言うてみ…「ウンコです」(P91)

    ・ 武器の「武」ば、試験の「試」て書いたでしょう?ちょっと話題になっとったんですよ、こがんバカは北高生やなかと漢字の書きとりのテストばすれば犯人のわかるとか、みんな言いよったですよ。(P109・ナカムラ)

    ・ フェスティバルの名前も決まった。「モーニング・エレクション・フェスティバル」、朝立ちの祭だ。(P167・ケン)

    ・ ケンさんやアダマと一緒におったら、なんか、自分まで頭の良うなったごたる気のしてきて、確かによか気分ばってん、何ばするにもボクは関係なかやろ?よう言いきらんばってん、調子よう自分まで偉うなった気になって、そがん自分のみじめに思えてきて、ちょっと、たまらんもんね(P195・岩瀬)

    ・ いや、あの、あのネグリジェはですね、別に裸の上から着るとじゃなくて、ちゃんと純和の制服ば着て貰てから、その上にネグリジェば着て、つまり、その純真な少女のですね、乙女心と、その、セックスへの憧れとば同時に表わす衣装と言うか(P203・ケン)

  • 最高の青春小説。映画も面白かったです。
    この時代に一気に興味が湧きました。

    • アセロラさん
      >円軌道の外さん
      こちらにもコメントありがとうございます♪こちらこそ、いつもたくさんの花丸、とても嬉しいです♪

      本当におバカなんだけれど(...
      >円軌道の外さん
      こちらにもコメントありがとうございます♪こちらこそ、いつもたくさんの花丸、とても嬉しいです♪

      本当におバカなんだけれど(笑)真剣に楽しんでいる小説ですよね。文化的に見ても、いい時代だったんだな〜と思います。エネルギーがあって。

      村上春樹、まだ一度も読んだ事が無いんですよ(^^;なんか、「考えるな、感じろ」的な小説なのかな〜?とか、哲学的で普遍的な物語なのかな〜、とか、皆さんのレビューから勝手に妄想して楽しんでいます(^^ゞ←読みなさい
      2013/05/03
    • 円軌道の外さん

      アセロラさん、こんばんは!

      初めて村上春樹を読むなら
      「カンガルー日和」が可愛くて、読みやすいし、

      ホラーやラブストーリ...

      アセロラさん、こんばんは!

      初めて村上春樹を読むなら
      「カンガルー日和」が可愛くて、読みやすいし、

      ホラーやラブストーリーや
      お腹が空く話や
      考えさせられる話など
      バラエティー豊かなショートショートがたくさん入ってるので
      通勤時や家事の合間にもピッタリですよ(^O^)

      最近の村上人気は
      ちょっと異常だし、
      神格化され過ぎてて
      一種の宗教みたいになってますよね(^_^;)

      自分はいつもカバンに
      「カンガルー日和」を入れて、
      何度も何度も読み返してます(笑)

      ブレイクする前の昔の作品は
      シンプルで微笑ましいものが多いですよ♪

      2013/05/07
    • アセロラさん
      円軌道の外さん、こんにちは~!

      村上春樹本のオススメ、ありがとうございます!
      カンガルー日和!
      家事の合間にもピッタリ、というのが...
      円軌道の外さん、こんにちは~!

      村上春樹本のオススメ、ありがとうございます!
      カンガルー日和!
      家事の合間にもピッタリ、というのが気に入りました(笑・主婦じゃないのにw)

      つい先日の講演会も凄かったみたいですね。
      あんな作家さんが同じ時代、同じ日本に生きているのが不思議な気がします。
      講演の内容は、どこかで活字になるのでしょうか。ちょっと興味があります。

      ツイッターでも、村上春樹はエッセイや旅行記の方が読みやすくて面白いと言われたので(笑)
      まずはそちらの方から読んでいきますね~♪
      2013/05/08
  • 死ぬほどおもろかった

  • やばい。面白すぎ。一気読みした。
    先が見えない不安。終わりゆく青春時代。
    そんな中で抱くやるせなさを何にも昇華せず過ごすなんて勿体ない。
    必ず終わる高校時代の一瞬にむくむくと湧き上がる刹那的な衝動を無理やり押さえつけるのではなく大事にしたい。
    高校生の時にしかない爆発寸前の若いエネルギーを限られた時間の中で何に使うか考えさせられた。
    アイハラが登場するシーンを読んで真っ先に思い出したのが学校で私の成績が悪いとか提出物を出していないとかで怒ってきた社会科の先生とテストの点が悪いことで嫌味を言ってくる数学科の先生。
    とりあえず、そんな大人達の言いなりになる学校生活は嫌だなあって思った。(提出物も出してなくて勉強もしてない私が悪いから文句言うのは全部ちゃんとやってからにするべきなのも分かってるけど、!)

    ラジオをつけたってビートルズの音楽は流れてこないし(スマホ一台で聴けちゃう)映画館に行ったってアラン・ドロンが主演の映画はやってないし(家に居て映画が見れる)そんなエンタメ超サブスク時代の今まさに高校生の私にも自分達の力で一から楽しい面白いを掴みにいくケン達が眩しく見えた。

    死ぬその瞬間まで楽しんで生きよう。

  • めちゃくちゃ面白かった。たまたま図書館で目に付いてなんとなく手に取ったんだけど、こういう出会いがあるから読書はやめられないし、図書館や本屋でなんとなく小説のコーナー歩くのは好き。
    主人公の語り草がとても心地よくて「こういうことって物語の中でしか起こらないよな~」っていう、若干現実を生きている読者の自分からすると少しうらやましい出来事を、平気な顔で、雄弁に、あたかも現実に起こったかのようにこちらに語りかけてくるのが超上手い。
    全部嘘なんだけど(笑)
    「東京大学が入試を中止した」という表現からわかるような昭和全盛期の1969年。もちろん自分の父親や母親がようやく生まれた頃なので、世代を隔てた自分がその当時の世界なんて知っているわけじゃない。でも起こった象徴的な出来事や当時の写真から、その世相を感じることはできる。
    でも、それは教科書に載っているような「第三者」的な資料からしか自分らは情報が見えなくて、実際を生きていた人の心なんて何ひとつわからないから「ああ、政治闘争をやっている人ってバカなんだなあ」なんて軽い気持ちで傍観している立場だった。自分がその年代にいたらどうなっていたのかな、なんて考えたこともなかった。
    当たり前だけど完全に他人事のように「歴史の一場面」としてとらえていた。
    でもそりゃやることなすこと違うことはあれど、みんな高校三年生の男子が思ってることなんて、半世紀前も変わってやしないんだなって感じた。
    行動に起こせる主人公もカッコいいし、現実で起きる問題を冷静に対処するアダマの存在もすごいカッコよかった。
    主人公の目から見える1969年の世界とその赤裸々な心のうちが軽妙な語り口と不格好な方言の台詞でリアルに映し出されていて、自分がその時代を透明人間になって生きているような気持になった。
    諸所大きなフォントで強調される言葉や台詞がとても良い味を出していて、時間を忘れて笑いながらページをめくることができた。
    校長先生の机のくだりはマジで図書館とか電車で読んだらダメ(笑)
    だけど、やっぱり主人公のそういう雰囲気を肌で感じるためにも、そういったところで読むのも一興かな……(笑)
    涙出るくらい爆笑した久しぶりの読書でした。

  • おもろかった。
    妻夫木主演くどかん監督の映画もあるとか。
    今度見てみたい。

  • 高校生の時に読みたかった!
    本編は娯楽作品。とても面白かったし、すごく共感できた。
    ウンコで笑うシーンなんか、情景がありありと想像できる。自分ももしあの場にいたらあんな風に苦しくなるだろう。
    そんな時間を、かけがえのない友人とともに、濃密に過ごしたのはうらやましい。

    また、本編とはうってかわってあとがきが刺激的だった。あとがきを読んで、高校生の時に読みたかった!と強く思った。

    まだ自分も若者の領域だと思って日々サバイバルしていきたい。

  • 実話だったことにびっくり。
    あんなに面白い学生生活羨ましい。
    若さが溢れ出して眩しかった。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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