TVピープル (文春文庫 む 5-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167502027

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。一つひとつが何かの寓話的に書かれているのかな。以下に自分なりに解釈したものを簡単に書く。



    ・TVピープル
    私たちは無意識的にテレビというコンテンツを消費してる。考え無しにテレビの画面をつけて垂れ流している。そのことをTVピープルが持ってくる、一見無意味に見える現象で表してるのではないか。
    一昔前の短編ということもあり、盲目的にTVを消費している世の中を風刺している。

    ・我らの時代のフォークロア
    めっちゃいい。青春のひと時の迷いが描かれている。
    僕らはみんなどこか似ている。中~高校くらいで抱いた言葉に出来なかったモヤモヤがしっかりと登場人物に代わって描かれている。その枠組みの中にいたかもしれない人々の思いを掬いとった作品。胸が苦しくなる痛みがあった。

    ・眠り
    眠りとは起きている世界とバランスを取るためにある。無い方がいいと1度は思うかもしれないが、それは間違い。一日の三分の一を休めなくなった人間は思考を止められなくなる。そして、眠りに隠されていた暗闇の中(思考の渦)に落ちていく。平和的に暮らしている世の中の悪いところ。死とは何か。そんな考えが浮かんだら、もしかしたら私には眠りが足りないのかもしれない。


    ざっと気になった3つの私なりの感想を書いてみた。もう一度大学入り直せるなら、次は文学部かな。

  • 日常のなかのちょっとした違和感から底のない暗闇にひきづり込まれていく感じ。理解できないものへの恐怖ではなく、自分ですらも気づいていないことを追体験をしたような恐怖。非現実なようで、どこまでも現実的に感じる不思議。この現実と非現実の狭間で揺れられる時間、最高の娯楽だなぁ。

  • 不思議な短編集。
    星新一の短編や世にも奇妙な物語のような、わかりやすい不思議さよりもわかりにくい不思議さ。でも、不思議であることは間違いない。
    「我らの時代のフォークロア」は不思議ではないけど。
    全体的に、細々と出てくる描写がなんのメタファーなのかわからんなあとなるが、それが説明できなくても、その描写から立ち上る"感じ"が捉えられているならまあいいのかもね、と思った。


    「眠り」「我らの時代のフォークロア」が好き。

    「眠り」は様々な哲学が重層性を持ちながら散りばめられている。
    主人公VS夫&息子の対比。
    金縛りに出てきた老人は何を暗示してるんだろうか。

    「我らの時代のフォークロア」は、好きではあるけど"違う"という"感じ"が全体として立ち現れていて良い。
    なぜかと聞かれて、明確に単純な言葉で表すことはできないが、でももう会うことはないとはっきり言える、そういった"感じ"を文章で出すのがすごいね。

  • 短編の村上春樹が特にすき。

  • 加納クレタの話が読みやすくて好きだった。とにかく男に強姦されるというとんでも設定が春樹さんらしくて好き。

    あと元カノに別の人と結婚するまでできないという約束をされた男の話も春樹らしくて好き。そこまで病的に拘られる処女性って何なんだろうと思った。したいときにすればいいと思うよ。

    表題のTVピープルは微妙にホラーでなんかTVを見ない人にTVを与えたかったんだろうなとは思った。私もテレビみないのでTVピープルがやってきてしまうかもしれない。

    あとゾンビで紳士でフェミニストっぽい春樹が女性をボロカスにディスっててびびりました。まあ、あくまでも小説ですけど。のびきったゴムみたいなあそこって何?笑

  • 奇想天外な設定や登場人物などは、読者の想像力を操る点で言うと、言葉の彩りを操ることで美しさなどを表現する「詩」に近いものがあるかもなぁと思いました。光の当て方によってはそういう見え方もする文学です。

  • 村上春樹の短編ならこの話が特に面白いよと、この短編集に収録されている「眠り」を薦められた。本当に「面白い」と言ったかどうか思い出せない。歪んだパイプイスに座っていたような浮遊感から、知らない道を一時間ほど歩き回ってみた。

  • 眠りはよかった

  • 最初、短編集と分からず「tvピープルの再登場は?」等を予想しながら、読み進める。
    しかし、一向に出てこないので、短編集と理解。
    短編間の相関性?も無さそうなので、フワフワしたまま、終了。
    短編自体は面白いけど、何だかモヤモヤ。

  • 「飛行機」「眠り」「我らの時代のフォークロア」は自分が奥底に閉じ込めていた主体性がふとしたきっかけで疼きだすという感じか。
    TVピープルや騎士団長など、春樹作品に登場する小さな登場人物にはなんだか愛着を感じてしまう。
    「人は眠りの中でかたよって使用された筋肉を自然にほぐし、かたよって使用された思考回路を鎮静し、また放電する。」 
    確かに。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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