追撃の森 (文春文庫 テ 11-21)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167812065

感想・レビュー・書評

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  •  ディーヴァーにしては珍しい作品だと思うのが本書の初期段階。オーソドックスなスリル&サスペンスですか? 森の中の別荘を舞台に、二人の男女が惨殺されるシーンに幕を開け、そこに駆けつけた女性警察官が巻き込まれる。それだけではなく、殺人犯二人組の視点でも書き込まれる。追跡と逃走の森のなかの物語。まさにタイトル通りのオーソドックスな冒険小説『追撃の森』といったシチュエーション。これは本当にディーヴァーなのか?

     ところがどっこい中盤に来て、どこかおかしいとなってゆく。意外なる展開。裏切りに満ちた展開。巻き込まれゆく、ヒロインの家族。一体、どうなってゆくのかがわからなくなる、追撃の終わり。予感は正しい。そう、ディーヴァーの小説がシンプルな対決構図だけで終わるわけがない。ここからがこのツイストが命な作家の面目躍如たるところ。

     そして登場人物たちの意外な裏の顔と、さらに巻き込まれてゆくヒロイン一家。女性主人公で必然とされるのが彼女の抱えるホームであり、男性一匹狼刑事小説のように暴力こそ仕事というのではないあたりに味噌があるのだ。愛する夫との間に不信の疑惑、不良化する噂を抱えた息子の子育て問題、そうしたホームドラマの要素も含めて、すべてを逆転させてゆく作家の錯綜した物語を追うにつれ、これがあのシンプル・プランみたいに始まった小説と同じ世界かと思わせる。

     そして対決構図は森から脱出後に予想した図面とは全く違ったものに変わってゆき、再逆転! ストーリーはすべてネタバレになるので書くことができないもどかしさをそのままに、といった趣きで口を閉ざすしかないのだが、リンカーン・ライム・シリーズの単純構図に飽きた御仁には、この人の短編作品と同様、本書も実にお勧めしたい一冊。ディーヴァーはひねってなんぼ、というイメージが定着しているが、オフ・シリーズ作品ならではの先の読みにくさも、読書の確たる醍醐味ではないだろうか。

     森と夜に始まり、警察署を軸にした終盤部分で、いろいろなことのつじつまが合ってくる。裏切りと懐疑と誤解とのフィルターが幾重にも仕掛けられていた一方で、人間の愚かさや弱さが見えてくる気がする。人は自分の信じている真相ではないものを見たいように見て、信じたいように信じ込んでしまう。そんな弱さと、弱さから脱すべき希望とを同時に与えてくれるあたり、作者が連続ツイスト仕掛けの果てに見せてくれる、読者への優しき眼差しなのだろう。

  • 人里離れた湖畔の別荘から警察への緊急電話。女性警官ブリンが様子を見にいくと夫婦の死体があり、犯人二人組の男達に狙われた。彼らから逃げる夫婦の友人と途中で合流し、森の中を逃げることに…。逃げるブリン達女性二人組と、追撃する男性二人組との駆け引きにハラハラさせられ通し。読みどころはいろいろあるけれど、一番の醍醐味は、タフで知恵者のブリンと、職人気質な犯人ハートとの、騙し合い。正義と悪、警察と犯人という相入れない二人が、相通ずる思考回路で分かりあってしまうところなんか、まるでリンカーンライムとウォッチメイカーみたいだ!なんて、ディーヴァーファンなら思うのでは。ラストが若干物足りない(というか、ある人の結末が呆気ない)気もするけど、このボリュームで飽きさせないのはさすが。
    The Bodies Left Behind/Jeffery Deaver/2008

  • 「別の結末を読んでみたい」
    解説の言葉がぴったり。
    もちろん、これもいい。でも他でも…
    と欲張りたくなる、いいストーリー展開とキャラ。

    どんでんがえしは期待を込めるけど、今回も、意表をつく。
    ああ、うまいな。
    今回もどっぷりと、森の中で、一緒に時間を過ごせた。
    ありがとう。

  • 面白かった。

    ディーヴァーなので、読み手もどんでん返しがあるんだろうなと思いつつ読み進めるわけです。そうして予想通りどんでん返しが(あきらかに変な言い回しだな)

    そのどんでん返しもさることながら、ラストの雰囲気の変わりようがスゴイと感じた。こんな、哀愁とほんわかする感じが混じったエンディングはなかなか無い。

  • 映画化された「ボーンコレクター」の原作などで有名なミステリー作家、ジェフリー・ディーヴァーの文庫版長編最新作です。僕の大好きな作家の一人です。本作はシリーズ物ではなく単独作品です。流石、外しませんね。シチュエーションは非常にシンプルで、人里離れた山荘のある森の奥地で行われる二人の女と二人の殺し屋の戦い。内容の7〜8割は簡単に言えば森の中の鬼ごっこで、彼の作品に慣れている方にとっては少々退屈にも感じる内容。しかしそこはディーヴァーですから、終盤でキッチリどんでん返しで落としてくれます。3クォーターまでの一見冗長に思える内容は長いフリだったかのようです。ただ彼の他の作品「魔術師(イリュージョニスト)」や「ウォッチメイカー」ほどスリルのある内容でなかったのは確かです。彼の作品を未読の方は一先ず上記二作をオススメします。ミステリ好きで彼の著作のを読んでいないのは、損以外の何者でもありませんので。

  • ジェフリー・ディーヴァーの作品は凄い。まさしく作品のタイトルにあるようにストーリーの8割は森の中での逃避行である。
    追いかけっこが、はらはらどきどきとスリリングで、それだけで十分楽しめる。加えて、ジェフリー・ディーヴァーのどんでん返しが何重にも用意されている。

  • まさにディーヴァーならではのtwistedな展開!
    でもなんだかとっちらかったままのエンディング。解説の「別の結末を読んでみたい」に同感。

  • ドキドキ感とどんでん返しはリンカーンライムシリーズの方がある。ハートを殺したのは誰なんだろう。グレアムかブリンか。マンキウィッツか。あやしいと思ってた人はみんな案の定だった。特にミシェルは絶対普通じゃないと思った。

  • 2008年発表
    原題:The Bodies Left Behind

  • 狭い範囲の行軍
    大自然と敵を相手に・・・
    イライラしたり
    いつものディーヴァー

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著者プロフィール

1950年、シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズ(『ボーン・コレクター』他)や“人間嘘発見器”キャサリン・ダンスのシリーズ(『スリーピング・ドール』他)は全世界でベストセラーになっている。ノンシリーズ長編小説、短編小説など人気作品も多数刊行
『ブラック・スクリーム 下 文春文庫』より

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