それでも、日本人は「戦争」を選んだ

著者 :
  • 朝日出版社
4.11
  • (307)
  • (345)
  • (149)
  • (21)
  • (8)
本棚登録 : 3221
感想 : 394
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255004853

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 近代史における日本の戦争の歴史に絡むのは韓国と中国である。 日本が安全保障を目的とするために日本の近海の外、朝鮮半島を安全保障とし、更にロシアが相手となると満州及び中国が安全保障となる。 過去の歴史から日本の戦争に絡むのは必ずこの二国であった。 日本の戦争は日本の安全保障と経済圏の確保であった。

  • 戦争とは、相手国の憲法を変えるもの、という指摘。また、憲法は大量に死者が出た時に変えざるをえないものである、と。我が国の憲法を変えようとする人々は、誰かに戦争で負けたのか、または大量の死者を出したのか、と考える。憲法メインの本ではないのだけど、歴史とは、特殊の中に普遍をみることだ、といわれれば、今の日本の特集の中の普遍とは何か、そんなヒントが「戦争を選んだ」ことにあるのかなと、いい気持ちはしない。
    中高生の時代の社会科の先生の思想というのは、結構後々に影響が残るものだと思う。今はどんな先生がいるのか知らないけれど、僕達の頃に高校でこういう授業があったら、歴史認識、というものをもっとまじめに考えるようになったのだろうなあ。

  • 高校の教科書では分からない教訓が得られる。「真実の満洲史」の著者の宮脇淳子は、この本を「初めに結論を決めて、それに合うように都合のいい事だけを並べ立てるという、私から見ればひどい本です。」と批評している。

  • 読了。借り本。

    それでも、日本人は「戦争」を選んだ。

    東大教授が高校生への講義をまとめたもの。
    日清戦争から太平洋戦争までの現代史です。

    日清戦争へどうして入っていったのか
    日露戦争のとき、政治と世論はどうだったか。
    なぜ日中戦争がはじまり、アメリカ参戦の太平洋戦争に発展していったのか。
    人と軍と政治と世論はどうだったかというのを当時の日記や手記、参考本などをつかいつつ高校生に語っている。
    そんな本です。

    この中高校生たちは歴史研究会とはいえよく知ってるよねーとか思いながら読んでました。私はまったく知らないことだらけでして、だいたいの流れはわかりますよ。こうなってこうなってこうなるみたいな感じで。でも私の知っていることは上っ面でしかないだということがよくわかります。

    中高の歴史の授業はどうしても近代史過ぎたあたりからさらっとしてるというか、授業時間的に間に合わないというか。
    まえにTwitterで授業での歴史という話題が出たときに、古代から始めると絶対近代現代史がおろそかになるから、古代中世と近代現代と分けて学ぶべきではないかとTweetしたことがありましたね。
    中高生に科目増やすな死ねとか言われそうです。というか私が中高生なら言ってるとおもいますw
    まぁ今だから言えることでですヨネー。

    リベラル過ぎるという前評判を聞きつつも授業ならこれくらいでいいのではないかなと思います。

    右とか左とか言ってる人も一度読んでみるといいかもしれないし、
    尖閣とか竹島とかやんややんや言ってるこの時期だからこそ読むべき本ではないかなーと思いますね。

    いやーいい本を読みました。
    貸していただきありがとうございました。

  • やはり歴史とは、その時代時代の人々の営みの集積であり、有機的で重層的なつながりの中にある。また発生した出来事は当時のコンテキストに照らしてみれば必然であったとわかる。さらにそうした出来事は時に自分にのみ都合よく物事を解釈しようとする人間と人間の誤解・すれ違いから起きる。こうしたことを史料をもとに実証していくのが歴史学である。
    こうした著者・加藤陽子さんのスタンスがとても小気味よく、凡百の本とは一線を画すものとなっているのであろう。

    しかし「日本切腹中国介錯論」をあの時代に訴え得た胡適という人は知らなかった。背筋が寒くなるほどの切れ者だ。こういう人を生むことができる土地だからこそ、中国はあのような歴史を育んでこられたのではないか。

  • こういう歴史の授業を早いうちからやって欲しいですね。
    中学校の歴史授業は高校受験のための授業になっていますし、
    高校の歴史授業は大学受験のための授業になっています。
    それも日本がどういう国であって、どういう過程を経て今に至るかの勉強が大事だと思います。
    なぜ、どうして、歴史の転換期が起きたのか?など深く掘り下げて授業をやって欲しいものです。
    また、歴史を学ぶことによって、歴史の中から見えてくる、自然科学や数学などの関わり、音楽の関わりなどをそのつど勉強すればいいのです。
    受験勉強の歴史のように年代や事柄を丸暗記するのではなく、
    なぜ・どうして・そのようなことになったのかを掘り下げれば理解力も高まるはずです。

  • 時々の戦争は国際関係・地域秩序・国家や社会に対してどのような影響を与えるのか。戦争の前と後で社会にどういった変化が起きるのか。本書はこれをテーマに著者が日本近現代史を中高生に講義した記録集だ。講義がもとになっているので読みやすい。イラストや地図もあり大変親切な作り。

    本書を読むと日本近現代史が奥行きをもった立体図として把握できる。むちゃくちゃおもしろい本だった。

    個人的には日中戦争のとき、中国の外交戦略を担った胡適に興味をもった。こんなキレ者がいたとは・・・。

    近現代史に興味がある人はもちろん、10代の子たちも読んで欲しいよね、と思う。おすすめ。

  • 「日本が中国を侵略する。中国が日本に侵略されるという物語ではなく、日本と中国が競い合うという物語として過去を見る。」p84。単に戦争責任を追及したり否定するだけではなく、当事者たちの立場を振り返って歴史を理解しようというお話。中高生に語りかけている(ただし登場する中高生のレベルは超絶的に高い)ので平易な文章になっている。

    日清戦争は朝鮮をめぐる清と日本の争い、日露戦争は満州と挑戦をめぐるロシア(ドイツ・フランスが財政支援)と日本(イギリス・アメリカが財政支援)の争いという代理戦争としてのとらえ方。
    日露戦争では、1920年に調印された日英同盟の影響が大きい。

    スタンフォード大学のピーティー先生の言葉「日本の植民地はすべて、その獲得が日本の戦略的利益に合致するという最高レベルでの慎重な決定に基づいて領有された。」が興味深い。欧米の植民地拡大目的は、貿易と宣教であった。

    日清、日露、第一次世界大戦、日中戦争という戦争の流れの中で、日本にとっては朝鮮や清が常に戦略的に重要であったことが間違いないが、アメリカとの関係が悪化していった経緯が今一つピンとこなかった。もっと勉強が必要。

    当時の人物の手紙や日記など一次資料を取り上げて考察する手法は歴史を学ぶ姿勢として正しいと感じた。中国のエリート胡適「日本切腹、中国介錯」論には驚いた。肉を切らせて骨を断つ捨て身の国策。そこまで考えていた人物が実際いたとは。

  • 東大の教授である著者のヒトが5日にわたって中高生を相手におこなった歴史の講義をまとめた本で、明治維新以後、国家の近代化を図る日本が、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争を経て、太平洋戦争で敗戦するまでの経緯を、各局面での当事者の心情も踏まえながら細かく教えてくれています。
    タイトルやオビにある、フツーのニッポン人が「それでも、戦争を選んだ」理由については、「陸軍に煽られた」としか語られていないのでそこは肩透かしを喰らったカンジですが、いろいろベンキョーになった本でした。

    とくに強く感じたのは、ニンゲンっていうのは、戦争をくりかえしていたかつてのニホンがそうであったように、仕掛ける側にあるときは極めて戦略的に物事を推し進めるようにできてるのに対し、いまのニホンのように、平時においてはなーーんにもしない傾向がある、ということ。
    なんか子供のころ、あの手この手を駆使して同級生の背中に「バカ」って書いた紙を貼ったら、4時間目くらいにやっと気づいたソイツが「だれだよ~」とか半笑いで紙をはがしていたというようなことがよくありましたが、そんなカンジ。
    中国やロシアがあれだけ戦略的に仕掛けてきているのに、わが国のエラいヒトらがまだ「平時」だとおもっているようでは、すぐにやられちゃうとおもうよ。まじで。
    実際いま、「バカ」って貼られてる状態だとおもう。

    そういうイミでも、有事、平時に関わらず、国の中枢を担うヒトは優秀な戦略家じゃないとホントは務まらないんじゃないでしょうか。
    あと。戦争で直接国民の命を預かる立場にあったことも影響しているのでしょうが、あの時代に国を動かしていたヒトらはみな、ジブンの意思を貫くことに命がけだったようだし。

    そんな、能力と覚悟をもった優秀なやつらをもってしても、70年前のニホンは戦争に突き進んでいってしまうワケですが、いまのやつらみたいに、能力も覚悟もないやつがヒトの上に立っちゃあダメだろ。やっぱり。

    まあまあ。
    そんなことをいろいろ考えさせてくれたのでオモシロかったのですが、講義の風景をそのまま書き起こしてあるような本なので、中学生時代「体育を含め全教科居眠り制覇」という肩書きをもつホド根っからの授業ぎらいの私にとっては1、2ページ読んじゃあ眠くなるタメ、読み進めるのにすげえ苦労しました。

    戦争反対。
    ヒトが死ぬるから。

    http://blueskyblog.blog3.fc2.com/blog-entry-1632.html

  • 今更ながらですが、ようやく読み終えました。
    とても出来のいい良書です。少なくとも学校で習う程度の近代史では知り得なかった内容盛りだくさんで、戦争に突き進んだ日本を通しで学ぶ事ができます。
    戦争の良し悪しなどを語ったものではなく、「どうしてそうなったのか」を考えるための本。歴史とは本来そこにあるのだという事を知らせてくれる。

全394件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2023年 『「戦前歴史学」のアリーナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加藤陽子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×