それでも、日本人は「戦争」を選んだ

著者 :
  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255004853

感想・レビュー・書評

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  • (2011.09.30読了)(2011.09.22借入)
    二年前のベストセラーですが、まだこれから読もうという人が絶えないようです。僕もその一人です。二周遅れの長距離ランナーというところですが、めげずに走り切りたいと思います。
    この本は、歴史好きの中学生3名と高校生14名を相手に行った5日間の講義をもとに作られました。テーマは、明治から昭和にかけて日本が戦った5つの戦争です。どうして戦うことになり、戦争の結果どうなったのかということなのですが、随所で、聞き手に問いかけて、出てきた答えをうまく活用しながら進めています。
    生徒たちは、僕より優秀です。僕の場合は、太平洋戦争については、かなりの数の本を読んでいるのですが、それ以外は全く知りません。明治から昭和までを読まねばと思わせてくれました。
    章立ては、以下の通りです。
    序章、日本近現代史を考える
    1章、日清戦争
    2章、日露戦争
    3章、第一次世界大戦
    4章、満州事変と日中戦争
    5章、太平洋戦争

    ●報償(21頁)
    相手国が条約に違反したなど、悪いことをした場合、その違法行為をやめさせるため、今度は自らの側が実力行使をしてもいいですよ、との考え方です。中国が日本との条約を守らなかったから、守らせるために戦闘行為を行っている、というのが当時(1939年)の日本軍の言い分でした。
    ●北清事変(156頁)
    1900年、北清事変が起こってしまう。これは、「扶清滅洋」をスローガンとした排外的な団体である義和団が中国各地で勢力を得て引き起こした農民闘争です。外国勢力の象徴として義和団の対象となったのが、各国から派遣されていた宣教師でありまして、宣教師の首を斬ってしまうというような残酷な事件も起こった。また。北京にあった各国の公使館を包囲してしまう。これが義和団の乱で、これに乗じて、なんと清国政府は、列国に宣戦布告をしてしまうわけです。政府が関与してからの義和団の乱は北清事変と呼ばれることになります。
    ●日露戦争(166頁)
    日露戦争に関しては、どちらが戦争をやる気であったかという点では、ロシアの側により積極性があったのではないか・・・。戦争を避けようとしていたのはむしろ日本で、戦争を、より積極的に訴えたのはロシアだという結論になりそうです。
    ●第一次世界大戦後(207頁)
    この戦争の結果、日本国内においてたくさんの「国家改造論」が登場して、とにかく日本は変わらなければ国が滅びる、とまでの危機感を社会に訴える人々や集団がたくさん生まれました。
    どんな要求が挙がって来たのか。
    1、 普通選挙 2、身分差別の撤廃 3、官僚外交の打破 4、民本的政治組織の樹立
    5、労働組合の公認 6、国民生活の保障 7、税制の社会的改革
    8、形式教育の解散 9、新領土・朝鮮、台湾、南洋諸島統治の刷新
    10、宮内省の粛正 11、既成政党の改造
    ●第1次大戦の欧州の借金(241頁)
    各国のアメリカへの借金は天文学的な数字でした。何と1985年までの返済計画が書かれている。60年以上返済しなければならなかったほど、英仏はアメリカに借金をしていた。イギリスは42億ドル、フランスは68億ドル、イタリアは29億ドルものアメリカに対する戦債がありました。
    ●大東亜戦争の目的(339頁)
    来たるべき戦争は英米蘭に対するものであって、その戦争の目的は、東亜、つまり東アジアにおける英米蘭の勢力を駆逐、追い払って、帝国の自存自衛を確立し、あわせて大東亜の新秩序を建設するにある
    ●暗号解読(353頁)
    最近の研究によりますと、日本も意外や意外、かなりの暗号を解いていたことがわかります。「日本軍のインテリジェンス」小谷賢著、に詳しく書かれています。
    (2011年10月4日・記)

  • 日清戦争~第二次世界大戦まで。中~高校生との授業形式になっています。
    史実に基づいて当時の人や物や国や組織の動きを解説していることと、学生さん(ただし彼らめっちゃ賢い)との対話形式になっていることで、受験勉強のような暗記科目としての歴史ではなく、とても理解しやすいものでした。
    右とか左とかそういうのは抜きにして・・
    面白かったのは、最後の学生さんのお話のように、松岡洋右と胡適ですね。へぇぇと。
    終わり方がちょっと気になりますね。反省が十分になされていない、と。

  • 日清戦争から、太平洋戦争に突入していく日本の状況が少しリアリティを持って感じることができた。

  • 2021/09/22読了

  • 図書館で借りた。
    タイトルからは、「左か右か、なんかイデオロギー強めのお話かなぁ…」と訝しんだが、読んでみてびっくり。東大の先生による近現代史の深い授業だ。歴史の授業と言っても、ただ事実を並べている訳では無い。それがこの本の良さであり特徴だ。
    中高生相手に授業をしている講義録の形式。ただ、受け答えのレベルが異常と言えるほど高い。「そんなの高校生知ってるのか!?」という流れが多かった印象。興味を持つ人が多いのは分かるが、授業という枠組みはかなり超えているかと感じた。

    近現代史を深くしるには良本。ただ、ほぼゼロ知識で挑むには高い壁があるかな。この本を読むための教養・前提知識が求められている気もした。

  • 当時の戦争に関することを様々な目線で見ることができた。一般市民の目線から考えると自分の事に忙しい日常の中で、あまり深く考えず世論や軍の表面的な言葉になんとなく流されてしまうのもわかる。なんなら「戦争すんのも仕方ない」とも思ってしまっていたかも。今の日本には「どんな状況になっても戦争だけは絶対に起こしてはならない」という価値観が広まっている気がする(そもそも戦争できない、というのもあるけど)。この価値観を守り伝え続けていくこととが大切だと思った。当時の日本が歩んでしまった過ちにも目を向けることで、よりそれが認識できた。

  • 数年前から何度か読んでは途中で止まってしまい…今回初めて最後まで読み終えた。
    この時代の歴史こそ、学ばなければと感じた。
    日本が戦争をしない道を選ぶことができたのか、という問いの答えはハッキリと分からなかったが、色々な本を読んで探っていきたいと思った。
    太平洋戦争は兵士にとっても、国民にとっても悲惨な戦争だったため、日本の場合、受け身「被害者」として語られることが多いが「加害者」の側面も忘れてはならないと感じた。

  • 満州事変前には東大学生でも満蒙を守るためには武力行使やむなしとのアンケート結果が9割。満州事変は陸軍の暴走というイメージだったが、すでに国民全体に戦争への空気が醸成されていたという事実は考えさせられる。自分がその時にその場にいたらどう判断したのか。
    世論に流される無垢な国民の1人なのか、補助金目当てに満州に多くの農民を送り込んだ役人なのか、それとも反対した村長なのか。

    また、当時の日本は日中戦争を戦争と思っておらず、討匪戦との位置付けだった事と、9.11の後のアメリカの対テロへの感覚が同じというのは面白い見方。

    今の日本は国防への関心が高まっており、勇ましい意見が国民に醸成されつつある。
    空気に左右されず、自分で情報を取捨選択し自分の頭で考える事を肝に銘じたい。

  • 著者は日本学術会議の任命拒否で話題になった人物で発行が朝日出版社。想像に反してイデオロギーの偏りはない。
    石原莞爾や松岡洋右には甘めの記述で「日本切腹、中国介錯論」など初めて知る内容が多く勉強になった。

  • 日清、日露から第二次大戦終結まで。高校生への講義として平易な言葉で解説がなされてはいるが、”過去を振り返る”歴史ではなく、その時代、その状況だったらどう考えるだろうか、という歴史家の視点が明確で、読みごたえがある。19世紀末~20世紀の戦争と政治、経済を取り巻く世界の重層的な動きを捉える入門書として、高校生の副読本(教科書でも)にしてほしいくらい。

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著者プロフィール

東京大学大学院人文社会系研究科教授

「2023年 『「戦前歴史学」のアリーナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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