- Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270005620
感想・レビュー・書評
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文章を辿っていて、何気一文にぞわっとする瞬間がある。
読んでいるうちに毛穴が開き、そこに冷気が入り込んでくる。
一見その感覚は恐怖に近い。だがそれは紙一重で感動へと繋がっている、得がたい徴だ。
その感覚は既に何度か経験がある。
たとえば『8(エイト)』の停車場のシーン。
前後の文脈は覚えていないが、あの情景はいまでもありありと目に浮かんできて、彼の声が耳元に蘇る「スラーヴァ!」
この作品でもそんなシーンに出会えた。
こういう本に出合えるから、やはり読まずには居られない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●サラエボ紛争を乗りこえたユダヤの祈祷書ハガダーの修復を依頼された女性研究者の母親や恋人との葛藤と、残された虫の羽や染みから推測されるハガダーの流転の歴史とが交錯しながら展開。主人公視点以外は、おおむね1時代で1エピソードの連作っぽいつくり。
●途中まで快調に読んでたのだが、1609年の登場人物の心情描写に細胞て単語が出てきたところで急に(いまさら)違和感が。なんだ歴史のかわをかぶった他のなにかだったのかーとようやく気づいて自己解決。←それまで何だと思ってたんだと言う・・・・。
タイトルのカタさのわりに読みやすいと思います。意外に重量感がないんだよなあ。描かれた個々の人生は重いのに。(小声で)最後の展開が余計な気がしたりしなかったり・・・・。 -
主人公がバンバン謎解きをするのかと思いきや、神の視点?からの謎解き(というか、ネタばらし?)でちょっと肩透かし。
これまでの遺留品は偶然の産物だったのに、ちゃっかり自分で後世向けに謎を仕込む主人公。いいのか? -
「書物逍遥」のカテゴリに入れましたが、実はミステリ。実在の「ハガダー」が題材なので許して。
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100年前に行方がわからなくなった"ハガダー"(ユダヤ教の祈禱書)が、内戦直後の90年代のサラエボで発見。
本来なら偶像崇拝を禁止したユダヤ教の聖典に、大量の挿絵があるのは何故?
主役の豪州人女性古書保存修復家が分析し、発見した幾つかの痕跡ににまつわるエピソードが語られる。
500年間生き抜いた奇跡の書物は、どのように作られ、関わった人々をどのような運命に巻き込んだのか?
アルプスに生息する蝶の羽から、パルチザンのユダヤ人少女とイスラム教徒の学芸員が。
付いていたはずの銀の留め金から、ウィーンのユダヤ人医師が。
ワインの跡に混じった血から、イタリアの異端審問の聖職者が。
海塩の痕跡から、スペインのユダヤ人製本師の家族が。
そして挿絵の顔料に混じった猫の毛から、アフリカ人の奴隷が・・・
原題の"People of The Book"が示す通り、一冊の書物に関わった人々の物語が語られます。
ユダヤ教の書物なので、やはりユダヤ人の苦難の歴史が描かれます。
そして本論の主役もまた、この"サラエボ・ハガダー"との関わりによって、恋人の裏切り、母親との確執、実父の存在など、運命の変動に翻弄される。
キャサリン・ゼタ・ジョーンズが映画化権を獲得した作品。
ニン、トン♪ -
やや文章の雑さが気になるものの、読み進めるうちに、物語に引き込まれて、気にならなくなる。
『サラエボ・ハガター』とそれにまつわるユダヤ人の物語、そして、本の中の物語について思いをはせる。 -
2010.03.28 朝日新聞に紹介されました。
購入後、しばらく読まずに温めていた?!本。
全体的にどんよりした雰囲気の中、
話は章ごとに違う場所・人物について描かれていて、
それでも全て「1冊の本」と関わりがあるものでした。
表現の自由に制限がある国・時代・宗教の社会は
こういう感じなのかな・・・と思いながら読み終えました。 -
20100328朝日新聞書評