巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)
- 河出書房新社 (2008年4月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (607ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709451
感想・レビュー・書評
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星新一と安部公房を合わせたような読後感。長いけど、読ませる勢いがある。
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ソ連批判というより文壇への私怨で書いているような・・・
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ソビエトに忽然と現れた黒魔術師と奇妙な部下たち。共産党特権階級をさんざんいたぶる彼ら。そこから時代は一気に新約聖書の時代、イエス処刑前夜にまでさかのぼる。二つの世界はどうリンクするのか。
時空を超えた愛の物語。
前回読んだ時にはひたすら「得体の知れない面白さ」にぞくぞくさせられたけど、今回の印象としては「ちょっと軽い?」。
まるでライトノベルみたいな手ごたえの、海外の長篇小説第27位。 -
3度目のチャレンジ。100ページくらいまで読んだ。が、挫折。タイトルは最高なのだけれど・・・。もう読まないことにした。
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全編約600ページの長編小説ですが、その物語に引き込まれ一気に読ませます。中盤までは不思議な出来事が続く幻想的な話ですが、その一つ一つをつないでいる、巨匠とマルガリータの愛の話が見えてくると、面白さが倍増します。
池澤夏樹編、世界文学全集のなかでも5本の指に入る名作だとおもいます。おすすめです! -
悪魔が来たりて笛を吹き、狂乱のカーニバルは幕を開ける。悪魔=ヴォランド教授とそのお供の道化達によって1930年代のモスクワは大混乱に陥るが、それは自著が発禁&執筆禁止とされた現実に対する復讐か。出版の目処も立たず10年近くの期間を費やして執筆された本作では、想像力がハレーションを起こしたかの様な仰天エピソードがてんこ盛り。神が死んだ社会と神の息子を殺した総督、二つの時代の話は巨匠を介して一本の糸となる。そう、原稿は燃えない。例え燃えたとしても、本作の歴史が証明している通り不死鳥の如く再生するものなのだ。
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アイン ツヴァイ ドライ!
さぁ何が飛び出るか?
滑り込みで今年の課題図書最後の1冊を読み切った。
元旦にブックオフに行って、半値以下でゲットした作品である。
それにしたって厚い。
今年の課題図書はどいつもこいつもボリューミーだったな。
ミハイル・ブルガーコフは、ロシアの作家、いや細かく言うのなら旧ソ連の作家であり劇作家である。
あまり名前はしられていないがロシア文学上ではゴーゴリに並ぶ存在とされている。しかしそれは現在の評価であり、共産主義側から目を付けられ不遇のまま彼は生涯を閉じた。
私がなぜこの人を知っているのか。
正直そこはあまりはっきりしないのだが、『百年の孤独』、『フリアとシナリオライター』などと同じでちょいとした本好きならこれは知っている作品で、一度は読んでおかなければと言ったものなのだ。
先に並べた二人が、ラテン作家なので私はてっきりブルガーコフもラテンの人だと思っていた。いやよく考えたら名前に”コフ”が付くからわかりやすくロシアなのに……ちなみにその流れでトマス・ピンチョンもラテン文学の人だと思っていた。いやピンチョンはさ、うん名前の響きがラテン的。
まぁ、相変わらずの思い込み話だ。
物語はヴォランドという名の悪魔一味がやってきた街の珍騒動、そして題名通りの巨匠とマルガリータとその巨匠のしたためたヨシュアことキリストとピラト総督の作中作を絡めた物語。
こう書いてしまうとさっぱりなのだが、間違ってはいない。
でもけして悪魔対キリストなんて戦いではない。
私は内容を全く知らなかったので、正直悪魔だとは思わなかった。いやキリストもだけど。
てゆーか内容がここまでファンタジーとは思わなかった。
いやでも完全にファンタジーと言い切ってしまってよい浮世離れ感はそうもない。ほどよく足が浮いている。
何というか。発想と文章の弾みがすこぶるよい物語なのだ。ここまでの厚さで私を楽しませ、尚かつ一気に駆け抜けさせてくれた小説は未だかつてなかった。
おもしろかったな。
で、すこし色々な文献をのぞいてみて知ったのだが、第二部の頭ぐらいまで推敲をして、ブルガーコフは亡くなってしまったらしい。
未完の大作。今年の課題図書の『カラマーゾフの兄弟』と同じだな。
しかし、納得もしてしまった。何というか第一部と第二部で話の流れが急なのだ。
巨匠とか、主人公のはずなのに出番が極端に少ない。そしてマルガリータが舞踏会に出るくだり、正直読んでいて突拍子ないな、と思った。えらそうな指摘だが前後とのつながりがあまりにも希薄なのだ。さらに加えるとヴォラント一家とヨシュアの繋がりももう少し掘り下げて欲しかった。
ここまで散々くさしたが、しかしそれでもかなりおもしろいのだ。
そう。おもしろさに遜色はない。私の個人的な趣向としては第一部の方が好きなのだが、(もうヴォランド一家のおもしろさと言ったら本当に痛快・愉快)第二部の演出も物語の流れも終結もやはりよい。キリスト教に対してすこしばかり知識がないと多少内容がわかりづらいが、情景は鮮やかでわかりやすく書かれていると私は思う。
だからこそこれは惜しいって話なのだろう。
仮にブルガーコフが正気を保って全てを書き尽くしていたなら、今以上の評価を受けた20世紀を代表する大作になったんだろうと思う。
いや、今でも十分に名作ではあるんだけど、おもしろいもの。池澤夏樹個人編集世界文学全集の中では他の出版社からも別訳が出ているのにも関わらず、売り上げはトップらしいしね。
ロシア語なんて一文字も読めないけれども、『罪と罰』以来その魔力にだいぶ引っかかっている。
何というか、視点がとても私は好きなのだ。
やはりキリスト教との葛藤がおもしろいんだよな。『カラマーゾフの兄弟』の大審問官のくだりはピンとこなかったのにこの差はなんなのだろう。
今回は想像していたよりも現代を舞台にした物語だったが、これもよかった。
今のところソ連の文学しか手を付けたことしかないが、現代ロシア文学ってどんなものか興味がある。
いや、……そういや『チャイルド44』って読んだな。
まぁあれは娯楽大作、扱いかな。
記念すべき200冊目の感想だったのだが、曖昧な感想になったな。しかし、どうも私は”悪魔”って響きが好きみたいだと言うことに今回気がついた。
ヴォランド達が出てくる部分では非常にわくわくした。
それで考えたのが、ついに『ファウスト』に手を出そうかと言うこと。
あれ戯曲なんだよな、たしか、おまけに誰訳版で読むかで結果が変わりそう。
うむ。 -
〈図書館本〉暑い春の日のモスクワに悪魔ヴォラントが降り立つ。メフィストフェレスを思わせるこの設定だけでたまらないのだが、文字通り狂気が渦巻き人々は混乱に陥る。展開が速すぎてついていけずに置いてけぼり感を味わい、舞台はヨシャア(イエス)の処刑に移ったりとで話の内容が???だったが、遅めの主人公である巨匠の登場により落ち着き出した。第二部になりマルガリータも登場し翼を纏い山を飛び谷を超え、いざ魔界?へ。悪魔の舞踏会が素晴らしかった。「原稿は燃えない」この本が日の目に当たることになり、読むことができてよかった。
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[31][121127]<mo 感触をまとめるのがむずかしい。たとえばビーフストロガノフとかみたいな、ちょっと変わったスパイスが使ってあってもの珍しいけどエキゾチックではなくむしろ新鮮なノスタルジーでちょっとほろ苦い後味の洋食…のようなかんじ。宮澤賢治とかも私の中ではこういう味わいがする。自分では選ばない本だと思うけどまちがいなくおもしろかった。