わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
- 河出書房新社 (2010年10月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709659
感想・レビュー・書評
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2012年6月11日読み終わり
長い時間かけてダラダラ読んでましたが、中盤からは一気に読みました。タイトルからして主人公はいつか英国王に給仕するのかと思ったらちょっと違いました。
ホテルの給仕を生業とする主人公は、いろんなホテルに勤め、さらにホテルを持つようになり、多くの人を見ることになります。さらにナチス・ドイツが台頭し運命も変わることに…背景は重々しいものがありますが、ストーリーは基本的に勢い良く書かれた感じで軽快です。主人公も運命を淡々と受け入れていきます。
小説的なテクニックを楽しむというより、勢いとかノリを楽しむみたいな感じでしょうか。好き嫌いがわかれる本かもしれません。
エチオピアのあの料理はどんな味なのか非常に気になります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
風刺がちりばめられていて、プラハの春後、しばらく出版が許可されなかったらしい。
でも、風刺が全てじゃなくて、社会の通俗さを描きつつ、さらに人間のちっぽけさを見せるうえで、沢山の素敵なエピソードを盛り込んでいる。
中でもバンドが家の回りを囲む話が好き。素朴な美しさを感じる。 -
初チェコ文学!
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小説としては面白く読めたけど、段落とか改行とかいったものがないせいか文章を読むのはちょっと疲れた。
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上がって下って生きていくという運動とその本質をサッパリと、鮮やかに'語る'。素敵。
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一生をかけて完全な失敗を作り上げた男の、美しい話
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「これからする話を聞いてほしいんだ」。ホテル「黄金の都プラハ」のレストランに勤める、地方出身の、背の低い給仕見習いは語り出す。駅で、列車が来るたびに熱々のソーセージを運んで売っていた。旅行客が差し出す紙幣に、釣銭がないふりをして時間をかけているうちに列車は動き出し……。
チェコの作家が十八日間で一気呵成に書きあげた、壮大な物語絵巻。主人公は百万長者になることを生涯の目標に、ホテルからホテルへと職場を変え、仕事の輝きの頂点を、エチオピア皇帝に給仕する瞬間に迎える。しかしそこから人生は一気に奈落へと突き進み、ナチスの施設の給仕を経て百万長者になるのだが、陰りの色は深まるばかり。
客のすべてを見抜くようにと、かつて英国王に給仕した上司に教えられたが、仕事を極めたことで、自らの道化が見えるようになってしまった。ビヤホールで語られるような人生の悲喜が物語をつつむ。
(週刊朝日 2011/01 西條博子) -
チェコ人ホテル給仕見習いの少年のジェットコースターのような物語。ほぼ自伝か。描写はやけに生々しい。