わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309709659

感想・レビュー・書評

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  • 2012年6月11日読み終わり
    長い時間かけてダラダラ読んでましたが、中盤からは一気に読みました。タイトルからして主人公はいつか英国王に給仕するのかと思ったらちょっと違いました。
    ホテルの給仕を生業とする主人公は、いろんなホテルに勤め、さらにホテルを持つようになり、多くの人を見ることになります。さらにナチス・ドイツが台頭し運命も変わることに…背景は重々しいものがありますが、ストーリーは基本的に勢い良く書かれた感じで軽快です。主人公も運命を淡々と受け入れていきます。
    小説的なテクニックを楽しむというより、勢いとかノリを楽しむみたいな感じでしょうか。好き嫌いがわかれる本かもしれません。
    エチオピアのあの料理はどんな味なのか非常に気になります。

  • 風刺がちりばめられていて、プラハの春後、しばらく出版が許可されなかったらしい。
    でも、風刺が全てじゃなくて、社会の通俗さを描きつつ、さらに人間のちっぽけさを見せるうえで、沢山の素敵なエピソードを盛り込んでいる。
    中でもバンドが家の回りを囲む話が好き。素朴な美しさを感じる。

  • 何の予備知識なしに読んで驚きました。舞台は終始チェコだったんですね。
    好みのブラックジョークのオンパレードで電車の中で思わずにやにやしてしまいました。それにしても、悲惨なエピソードほどげらげら笑える仕様にしてしまうのは作者が「周縁」のヨーロッパ人だからでしょうか?中でも印象的だったのが「頭はもはや見つからなかった」でした。日本人でああいう書き方できる人がいたら読んでみたいです。自分で探すのは大変そうですが。

    あと、カバーが素敵なグリーンだったのと、インクのせいか山椒みたいな香りがしたのが印象的でした。

  • 初チェコ文学!

  • 小説としては面白く読めたけど、段落とか改行とかいったものがないせいか文章を読むのはちょっと疲れた。

  • 上がって下って生きていくという運動とその本質をサッパリと、鮮やかに'語る'。素敵。

  • 一生をかけて完全な失敗を作り上げた男の、美しい話

  •  語りのスピードにあわせてエピソードを爆発させていく手法が面白い、という作品であって、個々のエピソードがどうであるということよりも、総体としての語り方が印象に残る。
     前半はその面白さが際立っていて、特に二章までは、どんどん加速度を増していくエピソードの集積に感情を揺り動かされながら一気に読んだのだけど、後半にいくにしたがって、失速していく感じがして、三章以降は、あまりのめりこめなかった。
     語りたいことと戯れているだけだった前半と比べると、語るべきこととして取捨選択されたエピソードが増えてきて、それを上手に同じスピードの語りに乗せられなかったのが、問題であるように思う。っていうか本来真面目な人なんでしょうね。語りに対する意識が分断されて、そのまま二重化してしまっている。同じテンションで語り通さなければいけないところ、明らかにテンションが変わってしまうのは、あまりよろしくない。そう思います。
     とはいえ、後半は真面目な部分に光るところが多く、もう一歩、モンティ・パイソン的に爆発させてくれれば言うことなしだったとは思いますが、読後感にスパイスを与えるという点では、試みは成功しているように思えるし、だからそこに評価の重点を置けば、テンションの差は些事である、といえるのかもしれない。読みを失速させちゃう点で私は些事とは思わないですが、ラストの雰囲気は、二重化していなければ出なかっただろうなあ、とも思います。そこをどうするか、ですね。
     私は単純に、もうちょっと推敲してくれればよかったんじゃ……って感じですが。

  • 「これからする話を聞いてほしいんだ」。ホテル「黄金の都プラハ」のレストランに勤める、地方出身の、背の低い給仕見習いは語り出す。駅で、列車が来るたびに熱々のソーセージを運んで売っていた。旅行客が差し出す紙幣に、釣銭がないふりをして時間をかけているうちに列車は動き出し……。

     チェコの作家が十八日間で一気呵成に書きあげた、壮大な物語絵巻。主人公は百万長者になることを生涯の目標に、ホテルからホテルへと職場を変え、仕事の輝きの頂点を、エチオピア皇帝に給仕する瞬間に迎える。しかしそこから人生は一気に奈落へと突き進み、ナチスの施設の給仕を経て百万長者になるのだが、陰りの色は深まるばかり。

     客のすべてを見抜くようにと、かつて英国王に給仕した上司に教えられたが、仕事を極めたことで、自らの道化が見えるようになってしまった。ビヤホールで語られるような人生の悲喜が物語をつつむ。

    (週刊朝日 2011/01 西條博子)

  • チェコ人ホテル給仕見習いの少年のジェットコースターのような物語。ほぼ自伝か。描写はやけに生々しい。

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著者プロフィール

20世紀後半のチェコ文学を代表する作家。
モラヴィア地方の町ブルノに生まれ、ビール醸造所で幼少期を過ごす。
プラハ・カレル大学修了後、いくつもの職業を転々としつつ創作を続けていた。
1963年、短編集『水底の真珠』でデビュー、高い評価を得る。その後も、躍動感あふれる語りが特徴的な作品群で、当代随一の作家と評された。
1968年の「プラハの春」挫折後の「正常化」時代には国内での作品発表ができなくなり、その後部分的な出版が許されるようになるものの、1989年の「ビロード革命」までは多くの作品が地下出版や外国の亡命出版社で刊行された。
代表作に『あまりにも騒がしい孤独』(邦訳:松籟社)、『わたしは英国王に給仕した』(同:河出書房新社)などがある。

「2022年 『十一月の嵐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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