愛するということ 新訳版

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314005586

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと前に流行ったことで興味を持ち、愛について考えたくなったときに、手を伸ばして一読しました。
    繰り返しや喩え、類似が多くて、案外読みやすかったです(読み飛ばし読みできる)。
    愛について考えたい気分のときの私にとって、満足のいく内容でした。何度でも再読したいと思えるものです。
    フロムは、愛のゲームがどんなものであるか議論しつくしたあと、最終章で、愛するための集中力、忍耐力、規律を磨くことを奨励します。
    この本は、愛に病める二十一世紀人にとっての、実用書の類に分類できるかもしれません。

  • 今年100冊目「愛するということ」読みました。
    この本で21年間毎年100冊以上読書を継続できました。
    中尾塾の12月の講師から薦められた課題本です。
    昔読んだ記憶があったのですが、当時は引っかかりませんでした。
    今回は違います。
    とても良い本でした。
    人を愛そうとしても、自分の人格全体を発達させ、それが生産的な方向へ向かうように全力で努力しないかぎり、けっしてうまくいかない。
    特定の個人への愛から満足を得るためには、隣人を愛せなくてはならないし、真の謙虚さ、勇気、新年、規律がなくてはならない。
    これらの特質がほとんど見られない社会では、愛する能力を身につけることは容易ではない。
    しかし、その仕事が困難だからといって、それを口実に、その仕事の困難さや、その仕事を達成するのに何が必要かを知ろうとする努力を放棄してはならない。
    この本の前提は愛は技術であるとあります。
    つまり、知力と努力が必要だという事です。
    ところがたいていの人は、愛する、つまり愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題としてとらえているというのです。
    愛されるために
    社会的に成功し、富と権力を手中に収め、あるいは外見を磨き、自分を魅力的にする。
    そして、好感を持たれるような態度を身につけ、気の利いた会話を心がけ、他人の役に立ち、それでいて謙虚で、押しつけがましくないようにする。
    これは、社会的に成功し、多くの友人を得て、人々に影響を及ぼす方法と同じだという事です。
    人気があることとセックスアピールがあることを合わせたものだ。
    またこのような人たちは、愛には学ぶべきことなど何一つないと考えているのです。
    愛は対象の問題であって能力の問題ではないという思い込みを持っているのです。
    また我々の生きている社会は、購買力と好都合な交換という考え方に成り立っています。
    つまり愛もお目当ての商品の1つだという考え方になっているのです。
    また、恋に落ちると愛しているを混同しているとも言います。
    だから「愛する」ことの第一歩は、生きることが技術であるのと同じく、愛は技術であると知ることだと言います。
    つまり、理論に精通し、修練に励むことが必要なのです。
    それに加えて、自分にとって究極の関心事でなければなりません。
    現代人は、心の底から愛を求めているのに、愛より重要なことがたくさんあると考えています。
    成功、名誉、富、権力、これらを得るためにエネルギーの大半を使いつくしているのです。
    こんなぜいたく品にエネルギーを注げない。
    この本は、愛についての理論と修練の仕方が載っています。
    そして、その範囲は想像以上に広いのです。
    友愛、母性愛、恋愛、自己愛、神への愛です。
    一読の価値ありますね。

  • 『愛する』ということは、『技術』であるという視点で、論じた本。
    恋人に「愛しているよ」と言葉にしたくても、
    愛のなんたるかを知らない自分が言うと、
    なんだか嘘くさいよなぁ
    なんて悩んでいたときに手にした。
    愛するという技術を実践する際の「姿勢」が書かれている。
    繰り返し読んでいると発見がある良い本。

  • なんという名著。人類の必読書だと誇張抜きで思う。最初、Kindle読み上げで読んでいたものの、1文1文の濃度と重みが深く、じっくりと読みたくなり、Kindle読み上げで2回読了した後に、最終的に普通に目で読み直し、たくさんメモをとりながら熟読した。ここまで真剣に1冊を真剣に読み込んだのも久しぶりである。それぐらい時間をかけて読む価値のある1冊。

    ▼そもそも、愛について学ぼうとしない(学ぶ必要がない)と思うのは?
    1、愛の問題を、愛する能力ではなく、愛される能力だ、と言う問題として人々が捉えているから。
    2.愛の問題を、対象の問題であって、能力の問題ではないと言う思い込みがあるから
    3.愛は落ちるものだと思っているから
    ・では、その克服方法は?
    愛の意味を学ぶ。①技術であると知る。②習得するために理論に精通し、修練に励み、習得することを究極の関心事とする。
    ・人間の最も恐れている事は、孤立することであり、
    人間の最もつよい欲望は、自分以外の人間と融合したいと言うものである。その方法として、愛することが挙げられる。

    ▼愛とはそもそも何だろうか?
    ・愛すると言う事は、それは決意であり、決断であり、約束である。それは単なる激しい感情(感情は突然生まれ、また消えていく)ではなく技術であり、能動的な意志である。
    ・愛は「落ちる」ものではなく、「自ら踏み込むもの」
    ・愛するとはすなわち与えることである
    物質の世界ではなく、ひときわ人間的な領域においての(与える)と言う意味である。自分の中に気づいているものを与える。自分の喜び、興味、理解、知識、ユーモア、悲しみ
    ・未熟な愛は、「愛されるから愛する」
    成熟した愛は、「愛するから愛される」
    未熟な愛は、「あなたが必要だから、愛している」
    成熟した愛は、「愛しているから、あなたが必要」
    ・では、与えられる人とは?
    自分の中にある人間的な力を信じていて、自分の力を目標の達成のために頼ろうとすることができる。これらが欠けていると、与える=怖いこととなる。愛する勇気が出ない。


    ▼愛するとは?
    自分自身のまま、自分の全体性を失わず、2人が1人になり、しかも、2人であり続ける。
    愛とは、尊重することが重要。
    「私のため」ではなく、「その人自身のため」に、人間のありのままの姿を見て、その人が唯一無二の存在であることを知る能力。そして、その人がその人らしくその人のために、その人のやり方で、上成長発展していくことに、気遣う。自分のために相手をコントロールしたり、支配したり、所有することが愛ではない
    ・そして、愛すると言う事は自分自身が自立して自由でないとこう思うことはできない。愛は自由の子(L’amour est l’enfant de la liberté)
    ・尊重するためには?
    その人を知る必要がある。
    それはすなわち、相手の立場に立ってその人を見る=初めてその人を本当の意味で知ることができる。

    ▼利己主義と自己愛
    ・全く異なるもの
    利己主義の人は、自分自身にしか関心がなく、何でも自分のものにしたがり、与えることには喜びを感じず、もらうことにしか喜びを感じない。利己的な人は外界を自分がそこから何を得られるか、と言う観点からの見る他人の要求に対する関心も他人の尊厳や個性に対する尊敬の念も持たない。利己的な人には自分しか見えない。自分の役に立つかどうかと言う点から全てを判断する。そういう人は根本的に人を愛することができない。
    ・一方、自己愛とは、自分のことも含めて他者を愛することができる能動的な能力である。

    ▼愛と性的障害の関係
    最も頻繁に見られる性的障害、すなわち女性の不感症や男性の心理的不能の研究から明らかなように、性的障害の原因は、正しいセックスのテクニックを知らないことではなく、愛することをできなくなるような感情的抵抗にある。性的障害のそこには、異性に対する恐怖や憎悪があり、そのために完全に没頭する、自発的に行動する、直接的な肉体接触の際にセックスパートナーを信頼するといったことができないのだ。性的に抑圧されている人が、恐怖や憎悪から解放され、それによって人を愛せるようになれば、性的な問題は解決する。そうでない限りセックスのテクニックをいくら覚えたところで、何の役にも立たない。

    ▼投射のメカニズム
    自分自身の問題を避け、その代わりに「愛する」人の欠点や弱点に関心を注ぐと言う態度も、神経症的な愛の1つの形である。この場合、どんな些細な欠点もめざとく見つけ、他人を非難し、矯正することに忙しく、自分の欠点には全く気づかずに平然としている。

  • 理論の章とかは難しかったけど、全体をざっくり要約すると、

    ・人が善く生きるためには、能動的に人々(自分含め)を愛する姿勢が必要。

    ・「愛すること」は一見誰もが生まれつき出来る簡単な行為に思われるが、実は常日頃から習練を積むことでようやく身につく技術の一つ。

    ・今の世の中で愛と呼ばれる事象は、大半が偽りのもの。
    (互いの性的満足としての愛、孤独からの避難所としての愛。どちらも本質的でない。)

    ・市場原理が敷衍した今の資本主義社会では、公平の倫理が優先され、「愛」は極めて個人的で些細な現象と過小評価されてしまう。

    こんな感じで理解。

    感想としては、これも結局、資本主義社会批判になるのが面白かった。人新世の方は環境危機からのアプローチだったけど、この本は人間の実存問題から攻めてたよね。資本主義を脱却した後の社会については明記されてなかったけど、目指すところは斎藤さんの思想に近いんかなと思った。

    あと、愛のダメな例として、「母親から与えられるような、無条件の愛を欲する男」が書かれていたんだけど、そういう男は
    ・表面的で無責任
    ・愛されることで満足し、自分から愛することはしない
    ・虚栄心と誇大妄想の傾向
    ・少しでも女性が期待を裏切ると失望し、憤懣する
    らしい。
    で、ここまではいかないけど、なんか気持ちわかるというか、その傾向あるかもと思った笑

    「自分の足で立てないという理由で他人にしがみつくとしたら、二人の関係は愛の関係ではない。
    ひとりでいられる能力こそ、愛する能力の前提条件なのだ」

    「誰かを愛するということは、単なる激しい感情ではない。それは決意であり、決断であり、約束である」

    「人は意識の上では愛されないことを恐れているが、本当は無意識の中で愛することを恐れているのだ」

    これら金言を胸に刻み、確固たる信念をもって人を愛せるような、覚悟と度量のある大きな漢になりたいと思いました。

  • 愛される技術ではなく愛する技術。

  • 愛することというテーマであるが、夫婦や恋人などの単位ではなく家族や他人に対する愛について書かれている

    内容が難しかった

    本筋の内容とは逸れるが可能性に対して信念を持っているかという内容が良かった

    教育は可能性を実現していくのを助けること
    その反対が洗脳である
    可能性に対する信念の欠如、大人が正しいと思うことを子供に吹き込み
    正しくないと思われることを根絶すれば正しく成長するという思い込みに基づく

  • NDC(9版) 141.6 : 普通心理学.心理各論

  • 一般的な恋愛論ではなく、愛の本質と人間の本性について分析しているフロムの名著。

    第1章 愛は技術か
    人は「恋愛市場」に運命の人がいると思い込み、愛されることばかり気にし、愛することに注力しない。愛するという行為には技術が必要。

    「・・・愛は技術であると知ることである。どうすれば人を愛せるようになるかを学びたければ、他の技術、たとえば音楽、絵画、大工仕事、医学、工学、などの技術を学ぶときと同じ道をたどらなくてはならない」


    第2章 愛の理論
    現代は個人主義・平等が尊重されているようにみえるが、根底には集団に同調したいという「同一」を切望し、孤独から解放されることを望んでいる。

    「いかにして合一感を得るかという問いには、どうしてもなんらかの答えが必要であり、他によい方法がないとなると、集団への同調による合一がいちばんよいということになる」

    「現代の資本主義社会では、平等の意味は変わってきている。今日、平等といえば、それはロボットの、すなわち個性を失った人間の平等である。現代では平等は「一体」ではなく「同一」を意味する」

    「平等志向の肯定的な側面ばかりに目を奪われてはいけないということだ。平等志向も、差異をなくそうとする風潮のあらわれである。残念ながら、男女平等が広がったために、男女が平等なのは男女にちがいがないからだ、という思い込みが」

    「ここにも、愛の能動的な性質があらわれている。その要素とは、配慮、責任、尊重、知である。」

    第3章 愛と現代西洋社会におけるその崩壊
    現代西洋社会の構造を紐解いたとき、友愛、母性愛、恋愛は偽りの愛へ取って代わられていることがわかり、そのことは愛の崩壊を意味する。資本主義が進み、人々は疎外され始め、孤独感や不安感に苛まれる。

    「現代西洋社会における愛について論じることは、すなわち、西洋文明の社会構造とそこから生まれた精神構造が、愛の発達を促進するようなものであるかどうかを問うことだ」


    第4章 愛の習慣
    愛の技術を磨くには実際に習練を積む以外に方法はない。

    「人は意識のうえで愛されないことを恐れているが、ほんとうは無意識のなかで、愛することを恐れているのだ。」

    「人は愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすということであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に全身を委ねることである。」

  • 難しかった。この本に書かれているように誰かを愛することは私には厳しいと思う。誰かの成長と幸福を願ってそのための簡単な手助けとなる、ぐらいしかできないだろう。

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著者プロフィール

ドイツの社会心理学者、精神分析家。1900年、フランクフルト生まれ。ユダヤ教正教派の両親のもとに育ち、ハイデルベルク大学で社会学、心理学、哲学を学ぶ。ナチスが政権を掌握した後、スイス・ジュネーブに移り、1934年にはアメリカへ移住。1941年に発表した代表作『自由からの逃走』は、いまや社会学の古典として長く読まれ続けている。その後も『愛するということ』(1956年)、『悪について』(1964年)などを次々と刊行する。1980年、80歳の誕生日を目前にスイス・ムラルトの自宅で死去。

「2022年 『今を生きる思想 エーリッヒ・フロム 孤独を恐れず自由に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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