アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 18105
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344426313

作品紹介・あらすじ

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの「アイネクライネ」からはじまり、現在・過去・未来と彼方此方で出会い、絆が繋がっていく。そして最終篇の「ナハトムジーク」で一つに収束していく6話の連なる短編集。

    死神2作品を通読後、3作目の伊坂幸太郎。

    登場人物多過ぎ。時系列が19年前・10年前・現在と目まぐるしく変わり過ぎ。なもんで子供が次篇には大きく成長していたりとややこし過ぎ。でも面白過ぎ楽し過ぎ。結論、満足度高過ぎで読了。

    著者曰く本作品は恋愛小説とのことだが、恋愛要素に固執しないヒューマンドラマと受け取った。綿密なストーリー構成と、各登場人物に宿すキャラクターや性格、発せられるセリフが自然体過ぎてスンと受け入れられる。

    親友の佐藤が「出会いってなんだ」と嘆くシーンで織田一真は言う。「自分がどの子を好きになるか、分かんねえだろ。だから、『自分が好きになったのが、この女の子で良かった。俺、ナイス判断だったな』って後で思えるような出会いが最高だ」
    【俺ナイス判断】と自己肯定される方が、嫁の魅力がより増して感じる。

    藤間が嫁子供が出て行った理由の一つに自分の血液型を挙げた時に課長は言う 。「何でも血液型のせいにする奴を、俺は嫌いじゃないぞ」
    何かのせいにしている自分ごと許容されている気がして救われる。

    先生のある問いに織田美緒は言う。「お母さんに言われます。自分が正しい、と思いはじめてきたら、自分を心配しろ、って」「あと、相手の間違いを正す時こそ、言葉を選べ、って」
    これは耳が痛い。若くして母になり破天荒な旦那(織田一真)を手懐ける由美の懐の深さに納得させられる。

    トドメにあとがきで著者は言う。「普段の僕の本に抵抗がある人にも楽しんでもらいやすくなったのではないか」
    率直で達観したコメントに好感が持てる。

    語られるのは平穏ばかりではないありがちな日常。大きな事件が起こるわけではない。しかし、そんな平穏平凡な人々の心の在り方や、考え方、勇気や気遣いに心がポッと温かくなる。

    特に最終篇の「ナハトムジーク」はそれまでの5篇の後日談でありながら、作品全体の仕掛け・伏線回収が素晴らしい。オチの最後の最後までさりげく些細な伏線回収をやって遂げるあたりがこれまた笑えた。


    最近何かと忙殺されている私にとって、この頃合いで本作を堪能できて良かった。伊坂幸太郎、ありがとうございました。

    • akodamさん
      hibuさん、こんにちは!
      コメントいただき嬉しいです。
      こちらこそいつも『いいね』いただきありがとうございます!

      本作は複雑な時系列と登...
      hibuさん、こんにちは!
      コメントいただき嬉しいです。
      こちらこそいつも『いいね』いただきありがとうございます!

      本作は複雑な時系列と登場人物の多さで私も混乱しましたが、逆にこの設定と登場人物の相関関係こそが味わいどころなんだと最後に合点がいきました!

      私もhibuさんの五つ星は常にチェックしておりますので今後ともよろしくお願いします^ ^
      2022/06/26
    • megmilk999さん
      聞いて頂けて、嬉しいです。私も久々再読したくなりました。
      聞いて頂けて、嬉しいです。私も久々再読したくなりました。
      2022/06/27
    • akodamさん
      megmilk999さん、おはようございます。
      朝からベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜を聴いてテンション上がってます。今日も一日...
      megmilk999さん、おはようございます。
      朝からベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜を聴いてテンション上がってます。今日も一日よろしくお願いします!
      2022/06/27
  • 最近はまっている伊坂さんの作品。

    あとがきでご本人が書いていらしたが伊坂さんっぽくない普遍的な作品なのだが、凄く伊坂さんっぽい作品だなと思ったのが読後の感想。

    「読ませる」という凄い才能。
    登場人物とその出会いと成り立ちやエピソードや繋がり等々が作品の中のあちらこちらに投射してあり、伏線回収というか投射され点在している点と点がどんどん線として繋がっていくような素晴らしさ。
    星と星を繋いで星座になっていくような作品だなと感じた。

    テーマは「出会い」というよりは「繋がり」なのだろうと感じた。
    登場人物が持つテンポの良さがやはり伊坂さんの作風であり、高ぶりを感じさせられる。
    ハートウォーミングでも愛情でも友情でもあるのだがそうだとも言い難い、人と人が繋がる心因の核みたいなものがそのシチュエーション毎に読み取れる作品だった。
    さらりと流れる様に描かれているのだが広い相関性とその中にある強い連関が突き抜けている作品とも感じた。

    伊坂幸太郎、凄い人だと改めて感じさせられた。
    伊坂作品を通じて伊坂さんとの「繋がり」も自分勝手で一方的に意識している自分がいる。

  • 久しぶりの伊坂作品、人物相関図がないので?というのが多々あり、が、短編は楽しめた。その後 http://isaka.kamihiko-ki.com/27aine02 を探し全体像を理解できた。なるほど~。①ファミレス店員が老害に絡まれている時の対処法は圧巻!②高校時代のいじめっ子の女性と久しぶりに再会した時の「復讐」、③運転免許センターでの男女の交流、など見どころがたくさん。名言もあり!「お母さんに言われます。自分が正しい、と思い始めてきたら、自分を心配しろ、って」自分も老害にならないようにしないとね。⑤

  • いやぁー、前半が良すぎた!

    前半の勢い、流れが期待値をどんどん上げて
    くれましたね。

    でも映画は見たいと思いました。

  • 街頭アンケートを命じられた会社員が、街中を素通りする通行人を、群れるペンギンに例えている。
    表紙の絵を見てなるほどと思った。
    こんなに大勢の人たちの中に、ほんの小さな奇跡のような出会いがあるんだと思った。
    「アイネクライネ」を読んだ時点では、爽やかな恋愛小説だと思ったのですが、次の「ライトヘビー」で見事に覆されました。
    繋がりは人だけにとどまらず、何気ないひとコマだと思っていた場面が別の場所で、違う角度で再現されて、面白い。伊坂さんて凄いですね。
    どれだけ繋がってるんだと驚いてしまいました。
    登場人物一人一人に対して、最後の最後まで細やかな愛情が注がれているのが感じられ、読み終えて思わず安堵の笑みがこぼれました。

  • これまた推理小説と思って購入したら違っていた。恋愛小説の連作短編集と解説されていたが、それほど恋愛に特化した感じは無い。逆にその薄目の内容が心地良い。どの短編も内容がホッコリさせられる内容。それが読み進める内に、繋がっていることが分かってくる。ただ、時間が前後しているので、登場人物達の関係がこんがらがってしまう。前に戻って確認することが度々発生する。伊坂作品は2作目だが、前の作品(ゴールデンスランバー)も同じ感想だった。作家の持ち味なのだが、個人的には苦手なようだ。

  • 安定の伊坂さん!
    珍しく泥棒や強盗、殺し屋は出てこないけれど(あと書き笑いました 笑)とても面白かった〜!

    どの作品もですが、伊坂さんの本に出てくる登場人物はどの人も魅力的。
    わあ、ここが繋がるか〜!という繋がっていく感じが楽しくて。次はどこが繋がるのか…期待しながら読み、期待を裏切らない面白さ。

  • 多作である伊坂幸太郎さん、どこから読むか…
    デビューからの大ファンという読友さんのブックリストや、皆さんのレビューを頼りにしていきます。
    ありがとうございます♪

    人との出会いや偶然の再会、不思議なご縁。
    こういうことって、あるのかも。
    いや、あると信じていたら人生明るくなるな。

  •  自慢じゃないですが、モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』は知ってました(曲も意味も)。でもJPOPに疎い私は、本作が斉藤和義さん絡みの執筆など、知る由もありません。

     ただ、やっぱり伊坂幸太郎さん。小説にモーツァルトのセレナーデのタイトルを冠するなんて素敵ですね。伊坂さんのセンスのよさを感じますし、どんな話?と期待させます。

     本作は6話からなる連作短編集で、伊坂さん曰く「恋愛小説」とのこと。「出会い」がポイントになっている気がしましたが、伊坂さんらしい(ん?らしくない?)軽妙で穏やかな描かれ方をする一方で、ハートウォーミングなんです。もちろん、殺し屋、死神、強盗、案山子など出てきません(笑)。このいつもと違う雰囲気は、賛否あるかもしれませんが、私は好きです。

     そして、気をつけないと登場人物が多く、時系列がコロコロ変わり少々混乱するかも‥。出会い・絆がつながっていき、見事に収束していきます。盛り沢山とも受け止められますが、出会ってから途中の濃密さを削ぎ落とし、カラッと描かれる心地よさは、伊坂さんならではという印象です。また、全体の構成、仕掛け、伏線の回収が相変わらず見事だと思いました。

     「出会い」の偶然の不思議が、次第に「つながり」の妙に意識がいきます。平穏だけではないけれども、ありがちな日常の中の私たちの心の有り様を、照らしてくれているようです。またしても、心に留めたいフレーズがたくさんありました。

  • メイクアップは二度読みしました。過去に思惑があった同級生との意外な再会。女子特有のカースト制の苦い思い出。女同士の人間描写が鋭い。事件も犯人も出てこないけれど、苦笑いしてしまうような人の内面や、些細な繋がりが後に大きな奇跡となるのだと、ちょっと元気が出るような一冊だった。一つ一つの章、というより連作としての「繋がり」に魅力を感じました。
    登場人物が多く、後半になって相関図を書いた。少しこんがらがったが、人との絡み、出会いはこういうものかも。自分が今いる地点は辿って辿っての奇跡なのだろうかなんて考えた。つい、なかなか出会いがない(色々な意味で)と嘆きがちな(自分)心が少し温かくなった気がした。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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