微笑む人

著者 :
  • 実業之日本社
3.09
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本棚登録 : 1180
感想 : 252
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536071

感想・レビュー・書評

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  • わー、もやもやするー!!

    あまり評価が良くないから期待しないで読んだのに、続きが気になってドンドン読み進めた。
    最初に解決しないことは書いてあったし、最後まで読んで貫井サンが書きたかったことを私なりに理解もしたけど、、
    もやもやするー!!としか言えない。。
    それが狙いなんだろうけど。。

  • 人は他人のことをわかったつもりになって、どんな人間であるかを枠の中に当てはめようとするが、わからないままの状況では気持ちが悪いからスッキリしたいだけであり、本当は何もわかっていないのかもしれない。
    長年一緒に住む家族のことでさえ、妥協し合っているだけで理解とは違うのだ。
    事の顛末が明らかになろうとした最後の最後で、思わず愕然とすることになろうとは予想もしなかった。
    しかし、ある意味、多くのことを考えさせられ、読み応えも充分であった。

  • 貫井徳郎の最新作であるが、人間の深層心理をついたミステリー作品で、他のミステリー作品とは一線をかくした作風ですが、なんとなく消化不良でしたね。
    確かに、事件には加害者と被害者がいて、第3者からすれば、犯人と動機など事件の全貌がはっきりと分かりやすい形で見えるとスッキリしますよね。それが実は分かったふりで満足しているという表現になってます。
    メディアも分かりやすく事件をまとめようとしたいという意図が見えますが、実際のところは動機は犯人のみにしか分からない複雑なもので、分かりやすい形でみえたものというのはメディアによる作為的な虚像であったり、個人の上っ面な主観がたぶんにはいっていたり、冤罪であったりするケースもあるということを皮肉った内容です。
    この作品は事件の犯人と動機がはっきりクリアーとなりスッキリ!というミステリー作品へのアンチテーゼ的な作品なため、やはり単純明快さを求めて読んでしまうと、とんだ消化不良ということになります。
    そういう意味では結局は最後まで出口の見えない作品ですね!

  • 妻子を殺害した罪に問われているエリート銀行員。
    動機の不可解さから、作家が本にするべく彼を知る人たちに取材していく。
    主人公は、信用があり、人当たりも良い、優秀な人物なのに何故?

    知りたいわかりたいと思いながら読んでいく、その道筋をたどる小説でした。
    小説では、普段見聞きできない人間の行動や思いの一端を知ることが出来、それが面白くて読んでいる。
    けれどもこの本では、結局どうなんだろう?と彼の心理が謎のまま。
    ひとりの人間が本当に何を考え、どんな人間なのか理解することはむずかしい。わからない。
    それでも仁藤という人物については心に残った。

  • 読了!★★★★☆ 貫井徳郎 8月発売の新刊

    いつも楽しみに待っている作家の作品。
    ところが、プロローグを読んでガッカリと感じたのは否めない。
    ノンフィクションだというのである。
    貫井徳郎の考えた物語を期待していたのに、自身初のノンフィクションに挑んだとあった。

    すっかり騙された!!!

    ノンフィクションが、貫井徳郎の考えた物語よりも面白い話になるのか?
    という訳でいつもとは違う、少し構えた感じで読み始めた。

    事件は、高学歴・高身長・高収入のイケメンで周囲からの評価も抜群に高いエリートバンカーが、
    自身の妻と、幼い子供を事故に見せかけて殺害した・・・というものだった。
    著者が事件について調べる過程、次々とその男の関係者たちにインタビューをしていく
    という形で物語は進んで行く。

    あの人がそんなことをする訳がない。
    そういった話が多い中、わずかな人だけが感じた負のイメージが見えてくる。
    その細い糸の様な違和感を手繰る様に、男の過去を探っていく中で著者が出した結論とは・・・

    確かに奇妙な印象を受ける事件だ。
    ただ、ニュースなどで見ただけなら、そんなこともあるだろうと流してしまいそうでもある。
    過去にあった愉快犯や快楽的、猟奇的殺人などに比べるとインパクトは薄い方だろう。
    しかし、この著者が興味を持ち調べようとしているということは、何かあるという期待感を感じさせる。一体なぜこの事件を調べようと思ったのか??

    正直な所、初めの興味はそれだった。
    だが、読み進めるうちにこの男の謎と動機についてどんどん知りたくなっていく。
    インターネットで事件を調べてしまったりもした・・・

    このあたりがすごいと読み終わった後に思った。
    別段に過剰に奇妙な訳ではないのに、気になって仕方ないのである。
    物語への引き込まれ方がスゴい。

    後読感については皆それぞれ思う所はあるだろう。
    が、そこまでの過程の物語はとても素晴らしかった。
    欲を言えば、もう少し書いて欲しかった。

    ストーリーとプロットの妙を存分に楽しめる一冊だ。

  • 「本を置く場所がなくなったから」妻子を殺したと自供した仁藤。
    その仁藤に興味を持ち人物像をあぶりだそうとどんどん
    年代を遡って調べていくと、その先々で見つかる不審死。
    怪しいといえば怪しいのだが、それらすべてが殺人なのかどうか…。
    この展開、最近読んだ小野不由美「残穢」に似ている。
    対象が殺人犯に対する妄想か
    怪異に対する虚妄かの違いで
    真実も分からずじまいっていうのもそっくり。

  • この作品はこの感じがいいのだ、と思う。
    答えはない。それこそが答えだ。

  • 評価が難しい。物語に引き込まれたかどうかでいえば間違いなく★は5つ。面白かったかどうかで聞かれても同じ答えをしたいが、この読後感で言うと★は3つくらい。真ん中を取ってこの評価にしたが、ページを捲る手が残りのページの厚さを何度も確認した。それくらい引き込まれた。ただ作品内でも指摘されているように気持ちいい解決はない。最終章でそれまで積み上げられてきたものが、一気に崩されて行く様子はある意味気持ちよかったが、最後に完全に闇に包囲された迷宮に閉じ込められる。一体何を伝えにこの人達は現れたのだろうと言う最大の謎がそれまでの話を前座にしてしまう。単なるサイコミステリーの動機探しと思って読んでいると痛い目に合う、そんな作品。

  • 読み始めると、それは殺人事件を追う小説家のルポ形式。貫井作品で以前もルポタージュ形式の小説を読んだ気がする。何だったかな。
    それはさておき、貫井作品は毎回圧倒的なスピードで読めてしまう。ストーリーに引き込まれる。今回は通勤の1往復で読めてしまった。今作は登場人物が頻繁に入れ替わり、話が断片的になっているものの、主人公の小説家の足跡そのままにストーリーが展開されるので、わかりやすかったのかな。
    で、今作は昨今のマスコミによる事件の報道手法に疑問を投げかけているかのようなお話になっている。犯罪者の動機・心理を安易に解釈し、伝えてしまって果たして良いのか。他人の心情を完全に理解できると考えるのはおこがましいのではないのか、マスコミに対するそうした批判的メッセージが込められているように思う。ミステリ小説として謎が最後に氷解するような結末を期待した人にとっては期待はずれかもしれない。しかしながら、貫井作品は謎を残しつつ結末を迎えることもままあるので、個人的には貫井さんならではの作品だと思うし、とても楽しめた。

  • 読み終えるとぼーっとする。人は何を考えてるのか、真実を語ってるのか、当事者にしかわからない。読者としては知りたいし、自分の受けた印象から、こうであって欲しいと求める。冒頭から最後はこうなるとは予想は出来たけど、予想以上にやられた。放り投げられるのは苦手なんだけど、気持ち良く投げられて満足してしまった。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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