人を動かす
素晴らしい良書。これだけ質の高いメタファーを用いて、当たり前だけど難しいことを腹落ちさせてくれる本は珍しい。当たり前ほど難しいことはない。読む時に応じて、その時に応じた気づきを与えてくれそうだ。これは手元に置いておきたい本である。
頭の六原則までを読めば良い。残りは重複や見方を変えたにすぎない。
1. 盗人にも五分の理を認める(批判も避難もしない、苦情もいわない)
・人はどんなに間違いを犯しても自分が悪いとは思いたがらない。自尊心を傷つけても、反抗心を起こしいいことがない。
・他人の欠点を直してやろうという気持ちは立派で賞賛に値する。だがどうして自分の欠点を改めようとしないのか。遥かに得で危険も少ない。
・「人の悪口は言わず、長所を褒めること」by ベンジャミンフランクリン
・父は忘れる。これは必見
・燃料を積み間違えて不時着し、危うく3人が死ぬところだったとき、機長フーヴァーが整備士に行った言葉
「君は二度とこんなことを繰り返さない。私は確信している。確信している証拠に、明日わたしのF-51の整備を君に頼もう」
2. 重要感を持たせる
・人の持つ根強い衝動は「重要人物たらんとする欲求」、そして滅多に満たされることがない。例外なく人間は他人から評価を受けたいと強く望んでいる。
・他人の長所を伸ばすには、褒めること、励ますことが何よりの方法だ。上役から叱られることほど向上心を害するものはない。決して人を非難しない。気に入ったことがあれば心から賛成し、惜しみなく賛辞を送る。
どんな地位の高い人でも、小言を言われて働くときよりも、褒められて働くときの方が仕事に熱がこもり、出来具合も良くなる。例外には一度もあったことがない。by シュワッブ
・思いやりから出る感謝の言葉をふりまきながら日々を過ごす、これが、友をつくり人を動かす秘訣
・どんな人間も何かの点で私よりも優れている、私の学ぶべきものを持っているという点で。
・人を動かす唯一の方法は、その人の好む物を問題にし、それを手に入れる方法を教えてあげること。
・人を動かすには、まず相手の中に強い欲求を起こす必要がある。どうぬれば相手が動きたくなるか?を考える。
◯人に好かれる六原則
1. 誠実な関心を寄せる
・共を得るには、相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せること。人はひたすら自分に関心を持っている。
・他人のことに心からの深い関心を示すことが大切な心がけ
2. 笑顔を忘れない
・自分とつきあって相手に楽しんでもらいたい人は、まず相手とつきあって自分が楽しむ必要がある。
・笑顔を見せる気にならないときは、無理にでも笑うのが一つの方法。人の動作と感情は並行するので、幸福に振る舞うと不思議と幸福な気持ちになる。
・ものごとには、本来善悪はない。我々の考え方いかんで善と悪が分かれる by シェークスピア
・およそ、人は、幸福になろうとする決心の強さに応じて幸福になれるものだ by リンカーン
3. 名前を覚える
・人は自己の名前になみなみならぬ関心を持つ。
・名前で呼ばれることは下手なお世辞よりもよほど喜ばれる。
・ルーズベルトは一度名前を聞いただけの機械工の名前まで覚えて心からの感謝を伝えていた。
・有権者の名前を覚えること、それが政治的手腕というもの。それを忘れることはすなわち忘れられること。
4. 聞き手にまわる
・どんな褒め言葉に惑わされない人も、自分の話に心を奪われた聞き手には惑わされる。
・好ましい第一印象を与えることに失敗するのは、注意深く相手の言うことを聞かないから。
・世間には自分の話を聞いてもらいたいばかりに医者を呼ぶ患者が大勢いる。
・話し上手になりたければ聞き上手になること。あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を自分に対して持っている。
5. 関心のありかを見ぬく
・人の心をとらえる近道は、相手がもっとも関心を持っている問題を話題にすること
・相手の関心を見抜いて話題にすることはお互いのメリットにつながる。
6. 心から褒める
・人は誰でも他人より何らかの点で優れていると思ってる。だから相手の心を確実に手に入れる方法は、相手が相手なりの世界で重要な人物であることを率直に認め、そのことを上手く相手に悟らせること。
・人と話をするときには、その人自身のことを話題にせよ。そうすれば相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる。
※以下は重要度は下がる
◯人を説得する12原則
1. 議論を避ける
・議論に勝つ最善の方法は、この世に一つしかない、議論を避けること。議論はほぼ例外なく双方に自説は正しいと確信させて終わる。例えやっつけても、相手の意見は変わらず、自尊心を傷つけられて憤慨する。
・誤解は議論をもってしては永久にとけない。気転、外向性、慰め、いたわり、相手の立場で同情的に考える思いやりをもってして、はじめてとける。
・五分の理しかない場合は、どんな重大なことでも相手に譲るべき、100%こちらが正しくても、小さいことなら譲った方がいい。by リンカーン
2. 誤りを指摘しない
・どれだけ論理説いても相手の意見は変わらない、傷つけられたのは論理ではなく感情なのだから。
・人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ by ガリレオ
・「おろらく私の間違いでしょう、私はよく間違います。一つ事実を考えてみましょう」という文句には不思議なほど効き目がある。どうしても方向を変えたいとき。
・わたしは、人の意見に真っ向から反対したり、自分の意見を断定的に述べないことにした。by ベンジャミンフランクリン
3. 誤りを認める
・自分が悪いと思ったら、相手にやっつけられる前に自分で自分をやっつけておいた方が、遥かに愉快ではないか。そして効果も大きい。
4. おだやかに話す
・相手の心が反抗と憎悪に満ちているときは、いかに理を尽くしても説得することはできない。人を無理に自分の意見に従わせることは出来ない。しかし、やさしい打ち解けた態度で話し合えば、相手の心を変えることもできる。
・1ガロンの苦汁よりも一滴の蜂蜜の方が多くの蝿がとれる。by リンカーン
5. イエスと答えられる問題を選ぶ
・意見が一致している問題から始め、互いに同じ目的に向かって努力しているのだと相手に理解させるようにし、違いはその方法だけだと強調する。
・一旦相手にノーと言わせると、自尊心が許さないのでそれを引っ込めさせるのは容易ではない。
・相手の立場で考え、相手が即座にイエスという質問を重ねていく。
・柔よく剛を制す
6. しゃべらせる
・相手のことは相手が一番よく知っている、だから当人にしゃべらせる。相手が言いたいことを持っている限り、何を言っても無駄だ。
・友達同士の間でも、相手の自慢話を聞くよりも、自分の手柄話を聞かせたいものだ。
・敵を作りたければ、友に勝つがいい。味方を作りたければ、友に勝たせるがいい。by ラロシュフーコー
7. 思いつかせる
・人から押し付けられた意見よりも、自分で思いついた意見の方を我々は遥かに大切にする。暗示を与え、結論は相手に出させる方がよほど利口。
・ルーズベルトのやり方は、相手に相談を持ちかけ、できるだけ意見を取り入れ、それが自分の発案と思わせて協力させる。
8. 人の身になる
・非難はどんなばか者にもできる。理解することに努めなければならない。相手の考え、行動には相当の理由があるはずだ。
9. 同情をもつ
・殺し文句は、「あなたがそう思うのはもっともです。もし私があなただったら、やはりそう思うでしょう。
・我々の人となりについて、自分で手を下して作った部分はわずかしかない。従い相手がどんなに苛立ったり偏屈だったりしても、その全てを本人に帰するわけにはいかない。気の毒だと思ってやるべきだ。
・人間は一般に同情を欲しがる、子供は傷口を見せたがる。大人も同様で、程度の差はあれ、不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは、程度の差こそあれ、誰にでもある。by アーサーゲイツ「教育心理学」
10. 美しい心情に呼びかける
・通常人間の行為には2つの理由がある。1つはいかにも美しく潤色された理由、いまひとつは真実の理由。by JPモルガン
・相手の考えを変えるには前者の気持ちに訴える。
・相手の信用状態が不明な時は、彼を立派な紳士とみなし、そのつもりで取引を進めると間違いがない。人は皆正直で、義務を果たしたいと思っている。これに対する例外は比較的少ない。人を誤魔化すような人間でも心から信頼され、正直で公正な人として扱われると中々不正なことはできない。
11. 演出を考える
・現代は演出の時代、単に事実を述べるだけでは不十分。演出せよ。
12. 対抗意識を刺激する
・仕事には競争心が大切、悪どい金儲けの競争ではなく、他人より優れたいという競争心を利用すべき。
・あらゆる階層の人たち数千人の仕事への態度を研究した結果、仕事への意欲を最も強くかきたてる要因は仕事そのものであった。仕事が面白ければ、誰でも仕事をしたがり、立派にやり遂げようという意欲を燃やす。
◯人を変える九原則
1. まずほめる
・人はほめられた後では苦言もたいして苦く感じないもの。歯科医が使う局部麻酔のようなもの。
2. 遠回しに注意を与える
・人を批判する際、まずほめて、しかしと挟んで批判をする人が多いが、これでは褒めたことすら本心だったか疑いたくなる。そして、と言えばいい。
3. 自分のあやまちを話す
・小言を言う場合、謙虚な態度で、自分は決して完全ではなく、失敗も多いがと前置きしてから注意すると、相手はそれほど不愉快な思いをせずにすむ
4. 命令せず、意見を求める
5. 顔をつぶさない
・たとえ自分が正しく、相手が絶対に間違っていても、その顔をつぶすことは、相手の自尊心を傷つけるだけに終わる。
・相手の自己評価を傷つけ、自己嫌悪に陥らせることを言ったり、したりする権利は私にはない。大切なのは、相手を私がどう評価するかではなく、相手が自分自身をどう評価するかである。相手の人間としての尊厳を傷つけるのは犯罪なのだ。by サン=テグジュペリ
6. わずかなことでも褒める
・批判を控え、褒める方に力点を置けば良い行動が定着し、悪い行動は抑制される。
・我々は、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらない上部だけのお世辞には反発を覚える。
7. 期待をかける
・相手のある点について矯正したかったら、その点について既に人よりも長じていると言うこと。
・徳はなくても、徳あるごとくふるまえ。by シェークスピア
・良い評判を立ててやると、その人はあなたの期待を裏切らないように努める。
8. 激励する
◯幸福な家庭をつくる七原則
1. 口やかましく言わない
・例え不平を言うだけの理由が十分にあったとしても、それをぶちまけてどれだけの利益があるのか。
2. 長所を褒める
・人前でへまを犯しても責めたり咎めたりしない。一方誰かがからかうようなものなら、むきになって庇った。ディズレーリ
3. あら探しをしない
・世界最大の帝国を支配し、数百万の国民の生殺与奪権を握るロシアのカザリン女王は、戦争で無数の敵を殺戮していたが、家庭では、料理人が肉を焼きすぎても、一言も文句を言わずにそれを食べた。、
4. ほめる
・男性は婦人の服装について一晩に何度もほめるもの。by フランス上流社会
・男性は自分を美しく見せようとする女性の努力を賞賛すべきだ。女性は服装に対して驚くべき関心を持っている。このことに無関心すぎる。
5. ささやかな心づくしを怠らない
・家庭不和の原因の大部分は極めて些細なことである。夫が出勤するときに、妻が手を振って見送りさえすれば離婚が回避できるような場合がいくらでもある。by ジョーゼフ・ザバス判事@シカゴ
・近頃わたしは、夫の言うように、本当に天使になったような気がしはじめました。by エリザベス・ブラウニング
6. 礼儀を守る
・無作法は愛情を破壊するがんだ。家のものに対しては、知らない人に対する場合よりも無作法にふるまう。
7. 正しい性の知識を持つ
・離婚の原因は10中8,9性的不満。by ホフマン判事
・結婚生活の考え方と実際について、割り切った態度で遠慮なく議論を重ねること。一番良いのは、性知識を正しく教える適当な書物を読むこと。