- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784479794332
感想・レビュー・書評
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大変良い本。コンサルタントやフレームワークの問題点が明確に伝わる。ただしコンサル不要論ではなく、良いコンサルタントの定義もしている。これを読むのと読まないのとではクライアントへの貢献度がガラッと変わりそう。
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No.764
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コンサル信仰を崩してくれる作品。
企業にとって大事なことは、考えること、人と対話することであるのに、それをコンサルに委託してしまう企業。
大切なのは、解決策ではなく、計画を立てること。
コンサルに丸投げでは、大量な資料以外、企業には何も残らない。
コンサルを完全否定しているのではなく、正しく使おうということ。
アイゼンハワーの引用
「戦闘準備において、作戦そのものは役に立たないことをつねに思い知らされたが、作戦を立てる行為こそが重要だ」 -
コンサルタントによる業界暴露本?
ものとしては著者の体験談、いろんな理論を用いて改革に携わってきたけども・・・。
はじめにで、この30年、多くの企業に入り込み、「目標による管理」だの「競争戦略」だのとお題目を唱えて回ったすべての経営コンサルタントを代表してお詫びします。とあってかなり衝(笑)撃的な内容。
著者(訳者?)の書き方が親しみやすくて読みやすかった。様々な事例があり以下に失敗したか、成功したかが楽しく読め、事前分析なしに使える万能型の方法論など存在しないことがよく分かる。
最終的には「人」が大事であって「目標」や「数字」は手段の1つでしかないというある意味当たり前の結論にたどり着く。
意識高い系上司がドヤ顔で「戦略計画」とか「数値目標」とか言ってきたらすぐに取り出したくなる本でした。 -
コンサルタントのフレームワークは必要ではあるが、ベースとなる考え方、取り組み方を念頭に置いておかないと、全く意味がないと書いてある。
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経営(戦略)コンサルタントの考え方やツールがいかに机上の空論であり、現状に即していないかを、本人の経験やエピソードを交えながら暴露する。
マッキンゼーの名を冠したビジネス書は掃いて捨てるほどある。一種の信仰を集めるほど頭脳明晰で優秀なはずのコンサルタントが間違いを犯すのはどうしてか。
答えは明快、考えが足りていないから。
最近、ロジカル・シンキングを学ぶ機会があった。MECE、ロジックツリー、ゼロベース思考……とかそういうやつだ。
ところがこのロジシン、「シンキング」という割にあまりシンキングしていない。上で挙げたのはロジシンで用いられるツールなわけだけれど、道具の多くがそうであるように、使い方さえ覚えてしまえばあとは「作業」だ。そこに思考は必要なくなる。
コンサルタントも同じ。彼らもまた、ツールを多用する。独自に開発されたモデル、プログラムを活用してロジカル・シンキングを標榜する割に、「ツールや理論があらゆる環境で有効である」という前提は捨てられなかった。ロジカル・シンキングで挙げた「ゼロベース思考」は、あらゆる固定観念を捨ててゼロベースで考えることを指す言葉だが、彼らに必要だったのはまさにこの「ゼロベース思考」だったというわけだ。
筆者は今もコンサルティングの仕事をしているらしく、コンサルタントの存在意義そのものを否定はしていない。しかし、コンサルタント(あるいはマッキンゼー式の仕事術)に、あらゆる問題を気軽かつ簡単に解決する魔法を求めてはならないと警鐘を鳴らす一冊。 -
有名コンサルタントによる、コンサルタントの功罪を明らかにした本。必ずしもコンサルタント特有の話ではなく、MBA的・理論的な経営手法全般に対する批判として捉えられる。よって、本社・企画系の人や、MBA学生が読むと面白いと感じた。
論理思考と理論を売りにしがちなコンサルタントにあって、コミュニケーションこそ重要だとする人がいることが面白いし、共感した。
●戦略立案
・戦略とは仮説であり、確実なものではない(理由:将来は予測困難)。固執してはいけない。そして、予測困難な状況に最初に気付くのは経営層ではなく現場。だから現場からの情報収集は重要。
・あらゆる理論は、当てはまる状況もあれば当てはまらない状況もある。考えなしにあらゆる状況に当てはめても失敗するだけ。自ら考えることが重要。
・戦略立案の価値は結果でなく過程にある。状況を分析し、何をすべきか考えた経験と知識があれば、状況が変わってもそれに合わせた戦略立案は可能。
コンサルタントに戦略立案を任せると、一時的に適切な戦略が出来上がるかもしれないが、過程を丸投げしているために、将来の修正が効かない。
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コンサルタントとして、顧客の考える作業を全て代替しても顧客のためにならない。
(解決策)
・顧客からも人員を出してもらい、一緒にプロジェクトチームを作る
・最終意思決定には顧客に深く関与してもらう
●業務最適化
・BPRなど様々な手法があるが、手法をただ当てはめても成功しない。まず顧客(特に現場)の状況を観察し、話に耳を傾けることが重要。手法・ツールは手段であり、目的ではない。
・現場をわかっていない経営層の考える依頼は的外れであることもあるため、プロジェクト内容自体の変更が必要なこともある。
・業務が上手く回らない理由の多くは、部門間や上下のコミュニケーション上の課題。それにより部分最適に陥っている。
(解決策)
・コンサルタントという中立な立場を利用し、部門や上下の橋渡し役になり、コミュニケーションを促進する。
・手法ありきでなく、観察とヒアリングによる課題特定を最初に行う
●会社の目標を数値に落とす
・会社のビジョン、ミッションなど○○をしたいということを数値目標化すると、数値目標が最終目的にすり替わってしまう。そうなると、従業員は数値目標を達成するためにあらゆることをし、多くの場合は達成される。だが、それにより数値目標化されていないものが犠牲になり、数値目標により達成したかった目的が達成されるとは限らない。
(解決策)
・従業員の評価の際、数値目標の達成度に頼らない。人間をもっとも良く評価出来るのは人間であり、数字ではない。
※数値目標は、会社の目指す方向を明確化する手段としては効果的。だがそれが目的とならないよう注意する必要
●業績管理システム
・業績評価の基準を数値目標化することには2つの理由から問題がある。
①従業員は数値目標の達成のみに注力するが、数値目標化により重要だが測定困難な項目が無視される(例:顧客ニーズに敏感に対応)
②従業員は数値目標化された項目を皆追求するので、画一的な社員が増加
(解決策)
・個人を業績評価する際、特定の数値目標に個人を当てはめて評価するのでなく、業務の目的にとって個人の働きぶりがどうだったかを、人間が総合的に評価する。
※これにより、数値目標のみの追求や画一的な社員という課題は解決されるが、評価者の評価力への依存性が高まるという新たな課題は生じる(上司に見る目がなければ最悪)。
解決策は以下と考えた。
①複数人で評価する(360°評価もこの1例だろう)
②「数値目標による、測定容易だが被評価者の業務全体を捉えづらい評価方法」「人間による、測定困難だが被評価者の全体観を捉えた評価」を使い分ける、または併用する
人による評価を機能させるには、評価者の評価能力の向上や、会社の戦略への理解度向上が求められるだろう。
※優れた人材に求められる素質
多くの業績管理システムでは、個人は様々な望ましい特性(思考力/コミュニケーション力/専門性など)を満たすことを求められている。だが、CEOになる人間は必ずしもそのような望ましい人物ではない。アメリカでは、精神病質者(サイコパス)は全人口の1%だが、CEOの4%だった。精神病質者は、攻撃的で共感に欠けるが故に成功するようだ。
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画一的な人物(あらゆる項目において穴のない人物)を求める多くの業績管理システムでは、このような人物は上に上がりにくい。尖った人材を評価する制度が必要だろう。
●●コンサルタントに求められること 総括
・既存の理論、ツールを鵜呑みにしてはいけない。あらゆる理論やツールは、当てはまる状況とそうでない状況があると理解すべき。
・顧客の状況を理解するために、まずは観察し、聞くことが重要。判断・評価する前に、相手の考えを聞くことが重要。
・顧客の思考を全て代替してはいけない。その結果、適切な戦略は出来るかもしれないが、未来の状況に合わせて戦略を変更していく力を顧客から奪ってしまう。
・企業の問題の多くはコミュニケーションが原因となっている。この問題に踏み込み、コミュニケーション課題の解決に寄与しなくては、本質的な課題解決とはなりにくい。
(プロジェクト課題は解決するかもしれないが、また別の問題がすぐに生じるだろう) -
「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」
前代未聞! 気鋭のコンサルが内幕を暴露した全米騒然の問題作。
まず、営業コンサルティングとか不動産コンサルティングなどの○○コンサルティングと著者の従事しているコンサルティングは全くの別物だと思います。営業コンサルティングや不動産コンサルティングは、商品を売る為にコンサルティングする(相談を請け負う)という意味で使用しており、あくまでも提供しているのは商品です。
一方、マッキンゼーやBCGなどのコンサルティングファームは、商品を売りません。コンサルティングとは無形のサービスであり、商品を売る為に相談に乗るということはありません。色々違いがありますが、これが決定的に違うと個人的に思っています。なので、昨今の○○コンサルティングという表記は、正直好きではないですね。全然違うだろうと、なぜコンサルティングという言葉を使うのだろうかと。
本書は、○○コンサルティングではなく、本物のコンサルティングで戦ってきたコンサルタントであるカレン・フェランが書いているものです。カレン・フェランは、デロイト・ハスキンズ&セルズ(現デロイト・トウシュ・トーマツ)、ジェミニ・コンサルティングでの実績を基に、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、オペレーティング・プリンシパルズで部門立ち上げなどを行ってきた人物。今は、オペレーティング・プリンシパルズ社の共同設立者となり、再び経営コンサルタントであるみたいです。
そんな彼が書くのは、コンサルタントは”こうして会社をぐしゃぐしゃにする”である。コンサルタントは、クライアントが抱える課題は答えが見えていないものが大半である中で、コンサルティングを行う(ここが○○コンサルティングとは絶対的に違うのだが)のだが、その際、どうしても上手くいかないことがあります。では、何故上手くいかないのかそれを自身の経験と実績から説明しています。実例を基に原因追及をしている点は、とても参考になります。
例えば、理論やツールに固執すると組織はぐしゃぐしゃになるというメッセージ(製薬業界A社で成功した理論を、製薬業界B社でもそのまま使おうとする)。コンサルタントは、豊富な実績を基に理論やツールを作り上げる為、本来であればそれらの使い方も心得ているはずですが、そう簡単には行かないということを教えてくれています。同業界同業種、そのクライアントが占めるシェアも同じくらいで営業部隊の人員もあまり変わらない。そんな条件でも必ずどこかは違うのです。そこを如何にコンサルティングに落とし込むか。もちろん、それにはクライアントの現場の理解が必須です。
また、コンサルティングを受動的に受け入れていても意味はないということも上手くいかない要因として挙げています。コンサルタントは何もかも知っているのではないのだから、もっと能動的に自分たちの会社に何が起きているのか、起こそうとしているのかを考えようってことです。
プロジェクトの成功(つまりは、クライアントの成功)を実現する為には、クライアントが当事者意識を強く持つことが一番必要だと思います。コンサルタントは、長くても3年くらい、短ければ数か月くらいでクライアントからは離れていくのが通常です(芯まで入り込んで行う支援という意味では)。その期間で、クライアント(現場含めた人間)がどれだけ当事者意識を以てプロジェクトに関わるのか、がとても大切ではないかと思います。
コンサルティングは、クライアントが成功する為のツールであり、そのツールを活用して持続的な成功を収める為には、やはりクライアントの力が一番必要だと思います。 -
これは面白かった。コンサルタントの告白、といった感じで、今までのコンサルで定石化されていたのに間違っていた(実際にはうまくいかなかった)例をたくさん取り上げてある。
書いてある内容も、実際に業務していると「あるある!」といった内容であり、頭でっかちで実務を知らないコンサルタントとは言葉の重みが違うのが良い点。