社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)
- 筑摩書房 (2013年7月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015761
感想・レビュー・書評
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先に残念なところから。第2講はアイヒマン実験,監獄実験,傍観者実験に触れていますが,今ではこれらは「胡散臭い実験」と考えられます。著者が行動を左右するのは個人内の要素よりも「状況」だと言うならば,「実験に参加する」という状況を加味して,実験データを考えていくべきです。それがすっ飛ばされているのが残念なところ。いくら同様の結果が他国でも認められているとしても,「実験」という状況の影響込みのデータなので,アイヒマンの状況のシミュレートにはなっていないわけです。この著書が出版された当時よりも今は社会心理学の知見にはかなり疑義が呈されていますから,第2講の内容は,社会心理学の実験を持ち出すのはナンセンスで,アレントなどの哲学者や社会学者の説で十分だと思われます。
些細な残念箇所もあるにはある。例えば,「仮に今,太陽が消失したとしても八分以上,地球はその事実を知らず,同じ軌道を回り続けます。(p.96)」は嘘です。太陽がなくなっても8分は太陽の光を浴びるでしょうが,太陽がないのであれば,太陽からの引力はなくなるので,公転軌道は維持されません。
とはいえ。
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私の本を手にとって下さる読者の中には,私の発想を学際的だと評したり,引き出しをたくさん持っていると言う人がいます。しかし哲学とか心理学とか社会学とか分けて考えるから,学際的という表現が発明されるのであり,哲学・社会学・心理学・文化人類学・経済学・大脳生理学・進化論など,実はどれもつながっている。私は自分のテーマに必要な本や論文を読むだけであり,学問領域なんて考えたことがありません。(pp.17-18)
そんな方法論は社会心理学ではない,そのようなテーマは社会学の領域だ,思弁的考察は哲学に任せろと反論する人もいるでしょう。でも,そんな制度上の区別は私にとってどうでもよいことです。人間を知るためには心理と社会を同時に考慮する必要がある。というよりも,社会と心理とを分ける発想がすでに誤りです。問いの建て方や答えの見つけ方,特に矛盾の解き方について私が格闘した軌跡をなぞり,読者と一緒に考えたい。人間をどう捉えるか。願いはそれだけです。(p.19)
社会心理学の学術誌を見ると引用文献が満載です。文献をたくさん挙げると偉くなったような気がしますが,それは錯覚です。出典が多ければ多いほど,よく勉強したことにはなるので,学校の先生には褒められるかも知れない。しかし,今までに私が上梓した本への反省も込めて言うのですが,出典が多いのは創造性がない証拠ですから,実は恥ずかしいことなのです。(p.39)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
好きだけど闇がえぐい
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たくさんのことかけないけれど、絶対に読むべき本。
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人間社会を生きる全ての人に是非読んでほしい!!
後書きまで含めて最高すぎた。
未来は誰にもわからない。だから希望を持ち続けられる。多くの絶望や虚無の先に見えたのは、原始から続く当たり前であった。陽はまた昇るのだ。
アイアムアヒーローは、そういう話だったんじゃないかと思う。批判の多いエンディングだけど、希望に満ちていた。 -
全ては人間の相互作用、関係性の中にある。
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図書館で借りて一読し、すぐに買った!
人とは、社会とは、そんな多くのこと自分で考える入口になる本でした。 -
難しかった。P138で挫折。再挑戦したい
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2020.8.22 読了
社会心理学のテーマに興味があったので読んでみることに。
非常に濃く、そしてヘビーな内容だった。
社会心理学の存在意義と分類から定義を行い、やや哲学的な考察を交えて話を進めていく構造。
自分には哲学的解釈の部分が非常に難解で、一読で理解できるような内容ではなかった。
深い洞察が多く、自分の読書の力量のなさを痛感することに。
また機会があれば再読したい一冊。