社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015761

感想・レビュー・書評

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  • 心理学の理論から社会制度や人間の本質に切り込んでいくところが何とも迫力がある。世の中虚構があふれているが、それ故に成り立っているというのは正しくその通りだろう。

  • 本の内容を理解するのは大変で時間もかかるが、とっても興味深い本である。
    意思から行動するのではなく、行動した後に意思ができる。

  • 「意志は行為の出発点ではなく、後から作られたもの」、「自由であることが支配を維持する」など逆説的な内容が刺激的でした。
    意志が後から作られたものだとすると、自分たちが心の中に持っている悩みはそれほど大げさに考える必要はないんじゃないかと思えてくる。

  • 経済雑誌で紹介されていた。

    とても面白かった。
    現在の社会心理学の現実が極めてうまくまとめてあり、
    心理学専攻の学生でなくても十分に楽しめる内容だった。

    特に、ホロコーストに関する研究をまとめ考察した部分が興味深かった。
    (ホロコーストの実際の担い手は、反ユダヤ人主義のナチス・エリートではなく、戦場には赴くには年をとりすぎた普通の人々であり、
    そういう人々が、合理的・効率的に行えるように、
    つまり心理的負担が少なく行えるように、
    作業分担や、銃殺ではなく毒ガス室の利用開始、反ユダヤのプロパガンダが必要だった、という考察)

    理解しきれていない部分があるので、是非、再読に必要がある。

  • 大学の講義をもとにして書いた本であるそうだが、社会心理学を初めて学ぶ学生ではなく、ステップアップとして読むと、とても役立つと思う。しかし、これを読んでしまうとなかなか卒論を書く事は難しいかもしれないが、理解すればすごい論文がかけるであろう。大学院生向けの本かもしれない。

  • 社会心理学という言葉に全くなじみがなく、小坂井さんの他の著作を知らなければ、多分手に取ることさえなかった本。

    小坂井さんの本は「民族という虚構」「人が人を裁くということ」で知っていた。この「社会心理学講座」は、これらの本も含め、これまでの著者の研究をまとめて著したもののようだ。

    多分それが原因なのだと思うのだが、題名通り「社会心理学」について、幅広く触れられているため、網羅的ではあるのかもしれないが散漫であるとも感じられる。

    学術的な論文では必須なのかもしれないが「誰それの研究によればこう」という文章が多く、外人さんの名前がたくさん出てきて、それを追うことに疲れてしまうところがあった。

    この本は14講に分かれている。特に第8講「自由と支配」などは、会社生活を思い浮かべ、なるほどそうだなぁ、と納得できる記述も多数あり、読みにくさを差し引いても、読む価値ある本。


    「この著者が基本に据えている考え方が「社会が安定していなければ落ち着かない。しかし変化しないと進歩はない」という矛盾にあり、これが「人間とは何だろうか」という永遠の問いに対する大いなるヒントにつながっている。

    人間は動物ですから、寝ている間に寝首をかかれるのはやはり、イヤです。安心して眠れる、道を歩いていても山賊や海賊に襲われる心配もない安定した社会がやはり一番重要です。著者の言葉で言えば、「社会は同一性を保っていないと落ち着かない」のです。

     しかし一方で、ダーウィンの進化論にあるように、変化をしなければ社会が存続しなくなってしまいます。人間の面白いところは、同一の存在でありながら、変化を続けていくことにあります。たとえば、一カ月前のあなたと今日のあなたは、体の細胞は合成と分解を繰り返し、入れ替わっています。しかし、あなたはずっとあなたです。これを生命の動的平衡と言います。社会も、同一でありながら長い目で見れば変わっている。この社会における「同一でありながら変化を続けるという矛盾」をどう理解できるのか、この本は、この難問に挑戦して、その答えを全体として捉えようとしている本なのです。

     人間とは果たしてどういう動物で、その人間がつくる社会はどういうものなのか。学問が追求すべきは、人間とその人間が作る社会全体の本当の姿を追い求めることにあると思います。しかし医学の世界にしろ経済学にしろ、狭い専門領域のたこつぼに入り込み過ぎて、専門家同士にしか分からない会話をして、専門外の人にはちんぷんかんぷんでも、それで良しとする態度が当たり前になってしまいました。その弊害として、全体を俯瞰しようという試みがなおざりにされていると思います。しかしこの本は、社会全体を捉えることに作者が必死に取り組んでおり、その気迫が感じられ、読んでいるうちにその気迫が乗り移ってきます。

     僕自身も、この本からは多くの考えるヒントや知恵をいただきました。」

    という出口治朗氏の書評が印象的です。

  • *****
    じっくり時間をかけて読んだのでまだ消化しきれてない。
    人を、社会を、心をどうやって捉えるか、
    読みながら自分の根本的な考え方を参照できる良書。
    *****
    「社会」の「変化」という概念が長らく論理矛盾を起こしてきていた、というのは新たな着眼点であった。その違いは、社会を「理想状態がある閉じた系」と捉えるのか「変化し続ける開かれた系」と捉えるのかの違い。
    「アカデミズムも時代の要請を濃厚に反映する」といった主張にも通じるが、現代においては「変化への対応力」が濃厚に問われるようになっている。レジリエンスという概念が着想されることにも通ずる。
    *****

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著者プロフィール

小坂井敏晶(こざかい・としあき):1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授。著者に『増補 民族という虚構』『増補 責任という虚構』(ちくま学芸文庫)、『人が人を裁くということ』(岩波新書)、『社会心理学講義』(筑摩選書)、『答えのない世界を生きる』(祥伝社)、『神の亡霊』(東京大学出版会)など。

「2021年 『格差という虚構』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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