増補版 誤植読本 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.55
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本棚登録 : 331
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480430670

感想・レビュー・書評

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  • 昔原稿は手書きだった。悪筆で発生する誤植。機械的に直し発生する表現の貧困。誤植棚から表現のぼた餅。誤植はいいとも悪いともいえない。ただ手書きからPCになっても、校閲者(読者含む)には今後もお世話になります。

  • みんな間違えるんだなって安心する。
    昔の印刷所には勤めたくない。。たった一字の直しで残りも変えるってエグい。

  • 誤植をめぐるあれこれ。
    みんな口をそろえて「誤植をなくすなんて無理!」と断言するようなのが可笑しかった。本当にそうなのかー、それはしんどいけど、みんながそう言うほどなのだと思うと、すこしばかり肩の力が抜ける。

  • 誤植に関するエッセイ集
    過去は植字工が一文字一文字拾って組版を作り、それが一頁となっていた
    今と違い変換や置換で文字を置き換えられる訳ではない
    字数が変わり頁を跨ぐことが有れば、それは後続する全てを組み直す必要がある
    リアルな世界での影響を作家も編者も知っていたからこそ命を賭して校正する
    現代はリアルを見えなくする事で擬似的な効率性を有難がる風潮だが、本質から目を背けすぎている感が強い

  • 今の世界の状況から目を背けたくなり真逆の小さな世界を題材にした本書を読む。面白おかしい話を期待したら意外に真面目で深い話が多かった。著者顔ぶれも私にはちょっと渋すぎかな。校正=単純な仕事との印象が変わり本の歴史まで考えさせられた。

    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん
      こんばんは。
      今の世界の状況、本当に痛ましいですね。
      本を読んでいるひととき、今ここを無事に過ごす時間をつないでいま...
      111108さん
      こんばんは。
      今の世界の状況、本当に痛ましいですね。
      本を読んでいるひととき、今ここを無事に過ごす時間をつないでいます。
      校正の仕事の印象が変わり本の歴史も知れるのは興味深いです。
      2022/03/06
    • 111108さん
      ベルガモットさん こんばんは。

      戦地の状況の痛ましさと何もできない虚しさとでニュースを見るのが辛い毎日ですね。

      ベルガモットさんの言葉「...
      ベルガモットさん こんばんは。

      戦地の状況の痛ましさと何もできない虚しさとでニュースを見るのが辛い毎日ですね。

      ベルガモットさんの言葉「本を読んでるひととき、今ここを無事に過ごす時間をつなぐ」を大切に心に留めて過ごそうと思います。

      これまで私は単純に作者の書いたものをそのまま読んでると考えていましたが、校正者や、昔なら活字を拾う職人などいろんな人達が体裁を整えてから読者に届けていたんだと改めて認識しました。校正者の個性が作品に強く反映される事もあったようで興味深かったです。
      2022/03/06
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん

      お返事ありがとうございます。
      私の中の先の見えない世界の状況に対する不安を読書で何とか保っていたので、勢い余ってコ...
      111108さん

      お返事ありがとうございます。
      私の中の先の見えない世界の状況に対する不安を読書で何とか保っていたので、勢い余ってコメントしてしまいました。
      言葉足らずなところを補ってくれるようなお返事でほっとしています。

      本が出来上がるまでにいろんな人たちが体裁を整えて読者に届くという過程を知ることができるなんて、一層本を大事にしようと思いました。
      私がたどり着かない本のご紹介ありがたいです。
      2022/03/06
  • 誤植で一冊の本が出来るなんて、皆さんどれほど苦労されているのやら。
    様々なエッセイは全42篇。
    外山滋比古、中村真一郎、林真理子、宮尾登美子、泉麻人、河野多恵子、澁澤龍彦、大岡信、長田弘、林哲夫、森鴎外、内田百閒、串田孫一、井伏鱒二・・
    それはもう錚々たるメンバー。
    前半は誤植にまつわる笑い話が主流。後半は校正に関するものが多い。

    トップに登場する外山さんのエッセイは「校正畏るべし」。
    論語にある「後世畏るべし」が元になっている。
    「若いからと言って馬鹿にしてはいけない。どんな素晴らしい者がいるかもしれない」という意味の諺をもじったもの。
    どんなに丁寧に見たつもりでも誤植が残る。そんなところから言われ出したらしい。
    本書の中では何度かこのフレーズが繰り返される。
    それほど、誤植のない本など皆無と言っても良いらしい。

    しかし、誤植が生み出す可笑しさというのがあり何度も笑うことになった。
    「失敗は成功の基」が「失敗は成功の墓」。「ある事情」が「ある情事」。
    「蒲田」が「蒲団」になったり「尼僧」が「屁僧」になったり
    「王子」が「玉子」になったりするのはまだほのぼの系。
    明治32年5月、当時の読売新聞がロシア皇帝について書いた社説に「無能無知と称せられる露皇帝」と記載されていたらしい。
    筆者が「全能全知」と書いたのに、「全」の崩し字を「無」と読み間違い、そのまま印刷・配達されたという。あやうく国際問題になるところを、訂正号外で乗り切ったらしいが。
    誤植の金字塔ではないかと思うのが「アテネのインチキ」。
    これはインキ会社アテネが受けた被害(?)。

    歴史的に有名なものでは聖書の「モーゼの十戒」部分。
    汝姦淫するなかれの「not」を落としてしまい、汝姦淫すべしとなっていたという話だ。
    もちろんすべて焼却するよう命じられたらしいが発見されただけでも6冊あり、現在は大英博物館に所蔵されているという。

    誤植によって違う味わいが増す例もある。
    つげ義春さんのシュールな漫画「ねじ式」の誤植はなかなかの衝撃。
    最初は「まさか こんな所に メメクラゲが いるとは 思わなかった」で始まる。
    この「メメクラゲ」が本当は「××クラゲ」だったらしい。
    不特定を意味する記号としての「××」を、「メメ」と拾ったのだ。
    これが冒頭の暗澹たる風景とマッチして「メメクラゲ」で定着したらしい。
    まさに校正恐るべし。darkavengersさん、ご存じでした?私は初めて知りましたよ。

    時代を超える名著であっても、もとは悪筆の作家さんだったという例もあるだろう。
    書き間違いもあれば文字の誤用もあるだろうし、あるいは内容そのものが間違っていたり。
    後書きに編集さんへの謝辞がよく載っているのは見えない部分へのねぎらいがあるのね。

    坪内稔典さんの、寺田寅彦の句の「粟」を「栗」と間違えた話。
    長田弘さんの、「苦い指」が「若い指」でも詩的な興味の方が勝って訂正しなかった話。
    どちらも、誤植を素直に認めて活かしてゆく姿勢が心地よい。
    発見したときは怒りや恥辱や後悔が渦巻くだろうが、必死にやってもすり抜ける文字というのはあるものだ。
    誤植発見率はどうしたら上げられるのだろうね。
    クスクス笑いながらも、校正の難しさを痛感させられた。
    味わい深い逸話もあり、皆さん文章が上手で読み物としてかなり面白い。
    ところで、巻末の執筆者紹介の中に一カ所脱字を発見してしまった!
    本書の立ち位置化からすると意図的な誤植かもしれない・笑 ここは沈黙しておこう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      普通の人と言うか大抵の方々は、脳内補正で問題なく伝わる筈ですから、文字が違うくらいでガタガタ言うのは間違いだと思うのです...
      nejidonさん
      普通の人と言うか大抵の方々は、脳内補正で問題なく伝わる筈ですから、文字が違うくらいでガタガタ言うのは間違いだと思うのですヨ、、、
      2020/09/20
    • nejidonさん
      goya626さん。
      笑えるのは部外者だからでしょうね。
      この本は編集に携わる人や校正者には多大な勇気を与えていると思いますよ。
      ひと...
      goya626さん。
      笑えるのは部外者だからでしょうね。
      この本は編集に携わる人や校正者には多大な勇気を与えていると思いますよ。
      ひとは間違う生き物なのです。
      どれほど気を付けていてもね。
      2020/09/20
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      まさに言われる通りです!!
      いちいち煩いこと言うなよって思います。
      鬼の首でもとったかのような騒ぎをするひと、いますからね...
      猫丸さん。
      まさに言われる通りです!!
      いちいち煩いこと言うなよって思います。
      鬼の首でもとったかのような騒ぎをするひと、いますからね。
      前後関係でほとんど分かる言葉ばかりですし。
      それでも批判するひとというのは、きっと全然理解力がないのでしょう。。
      2020/09/20
  • ことば

  • 2013-7-7

  • 高村光太郎先生はなかなか原稿を渡さないが、組み上がったゲラには誤植以外には赤を入れなかった。どうしても変更修正したい場合はその旨の手紙をつけて渡したという…(DTPに携わる者にとっては、なんと素晴らしい先生だ!)など、活字の事など若干古い内容もあるけれど様々な年齢や立場の書き手が誤植に対して色々書いていて面白かった。同じ言葉でも漢字にしたり、時にはひらいたり不統一なのを指摘された事への苛立ち、校正ミスの開き直りなど、ある意味言い訳みたいな文章が多くて笑ってしまう。

  • 有名な作者だけではなく,「裏方」とも言われる編者など多くの関係者から見た校正に関するエピソード集.著者側は「見つかって恥ずかしい」「原稿も間違っていた」「とんだ誤解だ」という感じでかなり生々しい感情が見えてくるが,校正側は「校正は難しい」とか「校正のやり方」などが強くでてきて仕事に対する意見が多いのが興味深かった.総じて「校正恐るべし」は名言だなと感嘆でした.

    エピソード集なので暇なときにページをめくる読み方をするとよさそう.

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著者プロフィール

高橋輝次(たかはし・てるつぐ)
編集者、文筆家。1946 年三重県伊勢市に生まれ、神戸で育つ。大阪外国語大 学英語科卒業後、一年間協和銀行勤務。1969年に創元社に入社するも、1992 年には病気のために退社し、フリーの編集者となる。古本についての編著を なす。主な著書に『古本往来』(みずのわ出版)、『古本が古本を呼ぶ』(青弓社)、 『ぼくの創元社覚え書』(亀鳴屋)など。近刊に『雑誌渉猟日録 関西ふるほん 探検』(皓星社)、アンソロジーに『増補版 誤植読本』(ちくま文庫)、『タイトル読本』(左右社)などがある。

「2020年 『古本愛好家の読書日録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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