たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028107

感想・レビュー・書評

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  • ミステリもさることながら、戦後の愛知県史を学ぶことができる素晴らしい本でした。地元が出てくると、途端に愛着も湧いてくるもんです。
    また、戦前からの常識や価値観がまさに変わろうとしていく過程を、主人公の勝利たち思春期の学生を通して書かれているので、そのあたりもとても興味深く読めました。とてもオススメできます。面白かったです。

  • ミステリーとしての設定に目新しさはなかったが、それなりに楽しめた。読み終わった後やはり1ページを読み返してしまった。

  • 私は名古屋人なので 昔の名古屋の街の様子が分かって かなり楽しめました。

  • みな、エンディングで「あ~」と思って、最初のページを読み直すんだろうなあ、とそこはお約束。密室殺人やバラバラ遺体のトリック自体は古典的だけれど、それよりもなによりも、戦後の映画や芸能音楽が多く語られるのが面白い。ターキー(水之江瀧子)、デコちゃん(高峰秀子)って、ボクがテレビで見たのはもう晩年だったなあ。「蟻入りチョコ」なんていうものがあったとは!

    レジェンドと評される辻真先さんの作品は初めて読みましたが、御年88歳にしてこのクオリティの作品を創作されていることに驚愕です。

  • 古き良き推理小説。動機の哀しさ、今に至っても変わらぬ被害者側の体質の醜さ。遊び心の仕掛けにちょっと和むが、ここで描かれている戦時中の体質が過去のものとなっていないことが情けない。

  • 小生、13年生まれ、終戦記念日8月15日の時は小学校一年生、懐かしい映画俳優や映画の題名、本の題名や歌手の名前が、そして、当時の世相で語られるミステリー小説超一級のミステリー小説だった!

  • 『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』に続くシリーズ第2弾。

    第1位『このミステリーがすごい! 2021年版』国内編
    第1位〈週刊文春〉2020ミステリーベスト10 国内部門
    第1位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 国内

    定価2200円+税というちょっと高めでしたので、躊躇していたのですが、中古を発見したので、購入。

    シリーズ途中参加でしたが、色んな意味で予想外なことだらけでした。
    まず、ストーリーの構成でした。てっきり殺人事件発生→解決→別の殺人事件発生→解決という形なのかと思いきや、解決編は最後に一気に披露していました。その前には、読者への挑戦状のような提示もしていて、推理小説ならではの醍醐味を感じました。

    また、てっきり学生達が推理していくのかと思いきや、那珂一兵というチョイ脇役だと思っていた人が、名推理を発揮していくので、予想外でした。

    ストーリーとしても犯人が予想外なことや殺人のトリックも実現できるかはさておき、予想外な発想があり、面白かったです。80歳以上の作家さんですが、まだまだ元気だということを見せつけられました。

    一応、学生達をメインにしているので、青春ミステリー小説でしたが、爽やかさとは違い、硬派な文章で、昔(昭和)の空気感を感じさせました。作者自身が生きてきた激動の昭和を参考にその時代について、詳細に描かれていて、印象深かったです。

    殺人を含め、題名の意味に込められた背景として、昭和の時代に起きた戦争が含まれています。今とは異なった思想や激動の時代に生きた人々の姿を読んでみて、より物語に深みが増していました。

    冒頭と最後の文章では、ある仕掛けもされていて、読み終わった後も最初に戻りたくなる気持ちにさせてくれました。

  • 昨年のミステリランキング3冠達成。
    那珂一兵シリーズ第2弾だが単独で読んでも大丈夫。
    終戦直後、男女共学になった高校で推理研と映研が合同で一泊旅行へ出かける。しかしそこで密室殺人事件に巻き込まれ、さらに首切り殺人まで‥
    なにより終戦による混乱と価値観の変遷、それに翻弄される人々が描かれた風俗小説として素晴らしい。タイトルや犯人が不可能犯罪を企てた動機もこの時代ならではのもので、なるほどと思ったが、トリックはちょっと浮いている気はする。
    個人的には3冠というほど高評価ではないが、当時のリアルを知っている著者にはこのシリーズをどんどん書いてほしい。

  • 著者は、NHK勤務後、アニメや特撮の脚本家として活躍してきた愛知県生まれの88歳。本作は著書が経験した戦後の混乱期にある故郷を舞台にした推理小説である。
    学生改革で633制になった昭和24年、名古屋市内の旧制中学を卒業後、たった一年だけの男女共学の高校生活を送ることになった風早勝利。彼はミステリー作家を目指し推理小説研究部の部長を務めていた。顧問の勧めで勝利たち推研部は映画研究部と合同で修学旅行代わりの小旅行に湯谷温泉へ出かけるが、そこで、密室殺人事件が起きる。さらに名古屋に帰った夏休み最終日の夜、彼らは、キティ台風が襲来する中で学園祭に向けた準備中、首切り解体殺人事件に巻き込まれる。警察もお手上げの難事件解決に向け、途中から探偵役が現れ、最後に犯人を含む全員を一堂に集めて、トリックをひとつひとつ解き明かしていく。この点は極めてオーソドックス、古典的であり新味はない。また、学生たちのあっけらかんとした軽い言動にいささか違和感も感じた。だが、犯行動機が明らかになる場面では、背景として、戦時下、人命認識についての悲しくも重い現実がひしひしと伝わり、重みのある作品であることを実感した。タイトルの意味するところも正しくここにあるといえる。
    初めての男女共学、進駐軍と売春婦、闇市、皇国教育から突然の民主化への切り替え、学校での硬派と軟派など混乱の中で、新旧の価値観があちこちで衝突する当時の様子がよく描かれているのもさすがである。

  • アニメ名探偵コナンの脚本を書いている大ベテランの方だと初めて知った。
    どんでん返しがあるとか、あっと驚くトリックがあるというよりも超王道派のミステリー。
    学生、青春、ミステリー。
    戦後の日本のことも合わせて書かれていて、そうなんだ・・・と思うことも。
    探偵小説が推理小説になっていく時代というのは名言だと思った。

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著者プロフィール

1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKに入社。テレビ初期のディレクター、プロデューサーをつとめたのち、脚本家に転身。『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆した。また、推理小説作家としても活躍しており、『仮題・中学殺人事件』、『迷犬ルパンの名推理』、『あじあ号、吼えろ!』、『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数の著作がある。現在、デジタルハリウッド大学教授。国際アニメ研究所所長。本格ミステリ作家クラブ会長。

「2009年 『『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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