雪の断章 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M さ 4-4)
- 東京創元社 (2008年12月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488467043
感想・レビュー・書評
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なんとなくタイトルに覚えがあって手に取った本。
なんと30年以上前に観た映画の原作だとは。
でも、映画の内容はほぼ覚えていない。
斉藤由貴が窓越しに雪原を見て黒い馬が走っているシーンの印象が強烈なんだけれど。
…『優駿』とごっちゃになってる?
あらすじ見ると殺人事件を巡るミステリみたいな印象を受けたんだけれど、それよりもとにかく主人公の純愛のお話という印象。
自分が生まれるよりも前の作品だからか表現が古めかしいところもあるけれど、とにかく丁寧に主人公の心の動きを描き出している。
しかも、ありがちな綺麗ごとを並べるのではなくて、葛藤や嫉妬など表も裏も描いている。
ミステリだと思って読むと物足りないだろうなぁ。
解説は二種類。
1983年に文庫化された時の解説には上の感想はぶったぎられてしまって「ホントすいません」って感じ。
でも、作者の人柄から作品に至るまでかなり重圧な解説で読みごたえがあった。
2008年の文庫化の解説はだいぶライトな内容。
でも、10年前でも「こんなこと書いていいの?」ってくらいざっくばらんな文章。
なのになかなか面白い。
帯は、言いたいことはわかるんだけれど、内容が重すぎて徹夜で読むのはキツいよ…。
裏側に「絶対一晩で読めます」ってあるけれど、ひと月かかりました…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ビブリア古書堂の事件手帖」で知ってまず映画から見てみたが相米慎二監督作品にしては脚本が酷すぎたので、原作を読むことにした。著者はもう亡くなられているらしいが、まるで少女漫画か昔山口百恵主演の赤いシリーズを読んでいるようであった。事あるごとの行き違いや勘違いがあり、とうとう殺人事件まで起こりミステリーモードにもなりかけた。愛とはなんぞやそれは究極のエゴイズムではないのか、見ようによっては祐也が一人の孤児飛鳥を自分好みに育て自分のものにしてしまったという錯綜した物語じゃないかとうがった見方もしてしまいそう。
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【深い静かな感動に身を任せて―】
「飛鳥」という名前だけで,乃木坂46の齋藤飛鳥さんをイメージしながら読んでみたら,解説で斉藤由貴さんで映像化されていたことを知る.見てみたい.
自然・冬・雪,そして内面の描写が美しく儚く,悲しく優雅に描かれていて,もし付箋を付けながら読んでいたら付箋だらけになっていたんじゃないかと思う.
飛鳥の成長とともに語られる比喩も感じ方も,言葉も大人びて,なんだかこちらも「大きくなったなぁ」と目を細めてしまう.
飛鳥を通じて登場人物の行動やしぐさからそのひととなりを想像する.
そう,読者は飛鳥の視点しか持たない.
一緒に怒ったり,悲しくなったりするのはもちろんだけれど,飛鳥の特殊な出自によるものの考え方,人との距離にやきもきしたりする.
彼女らの,彼らの家族写真を,なんだか僕らも見ている気がした. -
すごい本に出会ったな、というのが率直な感想。正直なところ、面白かったかどうかもよく分からなかったからだ。
どんな本?と聞かれたら、孤児だった飛鳥の成長記と答えるだろう。
途中殺人事件も起こるが、ミステリーと呼べるほどのものではない。犯人は途中で分かってしまっていたので、ある意味ドキドキしながら読んでいた。
孤児、養子に引き取られた家でのひどい仕打ち、王子様の出現ーーー子供の頃読んだ「小公女」や「あしながおじさん」を思い出した。
外国の童話では、孤児が最後の最後に幸せになるストーリーが多いが、これは序盤からいきなり幸せになる。
あまりにも不幸なシーンが短いのに、本の終わりはまだまだ先。この先どうなる?最後まで持つの?それとも、途中で飽きるパターン??と、うっすらと不安が頭をよぎったが、心配もよそにすっかり物語にのめり込んでしまった。
ただ、そこそこ厚みがある上に文字数がすこぶる多い。くどいというのとは少し違うかもしれないが、とにかく長々とした言い回しが多く、続きがきになるのになかなか前に進まないもどかしさもあった。
気力のある時でないと本を開く気にもなれず、少々日数がかかってしまった。 -
面白い。
イントロのシンデレラな感じとか、
全体に漂う昭和感、
昼ドラみたいなストーリー、
甘めのミステリー要素、
つっこみどころは多いけど、
結果全部まとめて面白かった。 -
恋愛ミステリ。あまり好きではない
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少女マンガのような世界観だった
書かれた時代では、こういうのがおしゃれだったのかな?と
時代の違いを感じた
読んだことを忘れそうなので
星2つ -
最初は面白くて読んでた。
殺人事件が起きてからさらに…と期待したが
だんだん下降していった。恋愛色が強くなるにつれて
事件が曖昧になっていき
主人公の感情が理解できなくなり
読むことが少し辛かった。
史郎がちょっとかわいそう。 -
ブクログにてレビューを書く時、さっくり書ける時もあれば中々書けずにそのまま放置…という時もある。作品の読後感によるのだけど、やたら難しい詰め込みがされているモノでも自分の心にしっかり一つ訴えるモノがあればサックリいけるが、思うモノが多いと何に焦点を絞るべきか悩む。そのまま放置…となりがちである。いや、放置になっている。自分の本棚でレビュー無しは、①思うものが多すぎて書けない②完全に内容を忘れてしまっている、に区分される。
この「雪の断章」は思うモノが多すぎたのだ、割と時が過ぎてなんとなく書ける気になったので今こうして綴っている。
70年代の作品、孤児を主人公とした文学作品群に位置するようである。ヒロイン飛鳥の一人称で物語は語られる、彼女の心象、北海道の自然、雪、とても美しく抒情的な言葉で綴られており、「表現」という手法においては著者佐々木丸美氏の力量にただ感服した。さらにロシアの児童文学家マルシャークの『森は生きている』が引用され作品にファンタジー色を与える役目を担っている。
しかし、飛鳥のキャラ、幼い時分に廻りの人々の悪意に囲まれて育った所以だろうが、周囲を敵味方という括りでしか接することができず、時にやたら理屈っぽく万人に愛されるキャラではない。また幼児を20代の青年が引き取って養育する、という設定があまりに現実離れしていて、消化できないままに読んでいくと…
この物語がミステリーへと一大変化をしてしまうのだ!飛鳥の周辺でおきた毒殺事件、またその被害者が幼少時の飛鳥と関連していたものだから、当然容疑者にされてしまう。この犯人特定はラストにおいて伏線となるが、特定のプロセスはしっかりミステリーの定石を踏んでおり評価しうる。
ヒロイン飛鳥は美しく成長していくのだが、彼女を見守るのはタイプの異なるステキな大人の男性、という少女の妄想の具現化というか、よくわからない…その二人の間で揺れる少女の心…を、圧倒的に美しい文体で語り、実はよくわからないモノを日本語の美しさで押し切られてしまった、というのが正直な感想である。
読後に知ったのだが、映像化されている。1985年 監督相米慎二 主演斉藤由貴 なんと初主演作品。これも未見であるが、おそろしくぶっ飛んでいる作品のようである。ただ当時の斎藤由貴の可愛さ、愛らしさは悶絶級であった、そしてあの眼、得体の知れない力が宿るように見えるあの目力はヒロイン飛鳥と完全に重なったのであった。
最近不倫問題でメディア登場する斎藤由貴と、飛鳥が重なったことによってレビューが書けたということである。