ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1)) (創元推理文庫 523-1)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488523015

感想・レビュー・書評

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  • ①インスマスの影
    好奇心から怪奇な伝承が伝わる街を訪れてみたわたしは、そこで恐ろしい話を聞かされて――。
    終盤で回収される伏線とメリーバッドなエンドに、普通のホラーにはない哀愁を感じた。異形を単なる敵やモンスターとして描写しない点がラヴクラフトらしさ。

    ②壁の中の鼠
    かつて陰惨な事件が起きた館を引き取り改修した、その犯人の子孫に当たるわたし。飼い猫がしきりに壁の奥を気にすることから、息子の友人らと共に探索に出かけると――。
    這い寄る混沌の名が出ることから、これも神話の一端になるのか。終盤、流れで一気に読み終えると、その不条理な結末に二度読みしてしまった。

    ③死体安置所にて
    葬儀屋だった男が仕事を畳むことになった、ある災難とは――?
    世にも奇妙な物語的というか、典型的な因果応報譚というか、ブラックユーモアな感がある。

    ④闇に囁くもの
    洪水が発生した地で見つかった奇妙な生物の死骸。それについての寄稿文を書いたわたしに手紙が届く。写真やレコードなどの資料と共に手紙をやり取りしていたが、手紙の主はやがて身の危険を訴えるようになり――。
    後年の作品なので、名前だけだが神話生物が多数登場する。手紙のやり取りだけで読む者に恐怖をじわじわと感じさせる手法はさすが。
    そして最後の一文にはゾクリとさせられた。手紙の主ははたしてどうなったのか。

  • クトゥルフ神話の原典。古典ホラーで、典型的だけど印象深い仕組みのものが多かった。現代のスプラッタや人間の醜さ系の惨い強さとは違うので、安心して楽しめるタイプのホラーだと感じた。
     TRPGで有名な、「イア、イア、クトゥルフ、フタグン!」などのクトゥルフへの祈祷文も登場する「インスマウスの影」の最後が好き。

  • 元々彼の人のことはTRPGの方で知ったのだが、元を知るとやはり人気になるだけの魅力があるのだと思った。
    散々ひどい文章だと本を勧めてくれた知人には言われたものの、余程の悪文なのだろうと開いてみればまったく読みやすいではないか(とはいえ、あくまでも想像よりかなり良かっただけであって、多少引っかかる部分がないわけではなかった)。
    罪と罰やレ・ミゼラブルなどのすぐれた小説を初めて読んだ時のように、ひたすらに貪り読んだのを今でも昨日のことのように覚えている。当時のわたしにとって、ラヴクラフトの書く物語はてんで未知の世界だったので余計に。
    成長した今改めて読むと、当時ほどの感動はなくなっているもののやはり内容が好ましい。今でもふと、眠れない夜に明かりを灯して読みたくなる。想像力を触発されて余計に眠れなくなる。ラヴクラフトの魔力は本当に恐ろしい。

  • 知った気になっている作家の代表的な一人だと思っているラヴクラフト。実際には短編をひとつふたつ読んだきりなので、あらためて読んでみようと思い立ちました。
    最初からメジャーどころの「インスマウスの影」なので、取っつきやすかったです。
    ほんと、SAN値が上がる話ばかりだわ。ほかのも読みます。

  • なんだこれ。超怖かった。
    展開としては「インスマウスの影」「壁の中の鼠」「闇に囁くもの」は似ているんだけど、それでもそれぞれの作品から凄味を感じる。予測は立つんだけど読み切った時に「こわっ」って身震いする。クトゥルフ恐るべし。

  • 「インスマウスの影」:旅行のさなかに訪れたインスマウスというさびれた町。その町では魚顔をした人々とその嫌なにおいが充満している。このような街の雰囲気作りや人々の描写・人知を超えた生物の描写など
    はさすが、コズミックホラーの第一人者であった。
    そして、オチとして、訪れた主人公自体がインスマウスの人物の血統であったというのも面白かった。
    この物語の背景に筆者の自身の血統に対する嫌悪感や有色人種に対する偏見があるというのを読んだが、それがありありと感じられた。

    「闇に囁くもの」:地球外生命体が地球に降り立ち、自身の目的を達成するために活動を続けており、その活動を妨げる物には容赦をしないというホラー。地球外生命体というと怪獣みたいなのを想像してしまい、あまり怖くかんじないのは、私が穢れや場が呪われる、といったホラー小説を読みすぎのせいなのでだろうか。

  • ラヴクラフトの、民俗学的な或いはコスモロジカルな恐怖を湛えた怪奇小説集。

    幾つかの小説中に、"神を畏れぬ者"という表現が出てくる。人間は古来より"神"という概念を留め金にして、自分たちの周囲に人間的で heimlich な宇宙観(コスモロジー)を構築して、安定的な世界解釈を行ってきたのだろう。ここに収められているのは、そんな馴染みあるコスモスの外部に逸脱してしまったような unheimlich で超宇宙的な趣のある作品たちだ。

    「インスマウスの影」「壁のなかの鼠」外なる悪夢が、実は自分の内に巣食っていた、そしていつの間にかその"影"が物語を抜け出て読者にも憑依していきかねない、そんな展開が見事だった。うらさびれた街に嘗て起こった怪奇事件という出だしの、不穏な空気がいい。

    「死体安置所にて」ブラックな笑いを生む掌編。見事な小噺。

    「闇に囁くもの」SF的な趣もある恐怖小説。超科学的な宇宙間移動法が、余りに強烈だ。 

  • H.P.Lが創始したコズミック・ホラーの最初の1冊。クトゥルーはまずここから。

  • 初のラブクラフトでしたが翻訳が合わないのか元の文体が古いのか、全然頭に入ってこなかった。

  • 怪奇小説の短編集。体系的な架空の設定がそれぞれの話に共通しており楽しい。

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    もし宗教勧誘されたら対抗してクトゥルフ神話の熱狂的信者のふりをすれば逃れやすいのではないかと思った。

    「イア! イア! クトゥルフ・フタグン! フングルイ・ムグルウナフー・クトゥルフ・ル・リエー・ウガ=ナグル・フタグン!」

    「その菌類庭園と無窓都市の暗黒世界は実は恐ろしいところではありません。(…)彼らは神話的なクトゥルフの時代が終わるそのずっと前にもう地球へ来ておりましたしアール・レー暗礁がまだ水面よりも上に出ていた頃のことを何でもよく覚えております。彼らは地球の内側にもいたことがあります―そこへ通じている抜け道があるのですがそれをまだ人間は知りません(…)そしてその地面の下に未知の生き物のいる偉大な世界がいくつもあります。例えば青光りのするク・ヌ・ヤン、赤光りのするヨトフ、それに光のない暗礁のヌ・カイからなのです―ほぉら、あの一定した形のない蟇蛙のような生き物でこれについてはプナトニック写本、「死靈秘宝(ネクロノミコン)」、およびコモーリアム神話群の中に述べられておりそれらの書類を保管していたのはアトランティス島の高僧クラーカッシュ・トンでした―(…)」

    とか言い出せたら素敵ではないか?

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