この世にたやすい仕事はない

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 289
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171360

感想・レビュー・書評

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  • とっかかりの第1話は、淡々と進む話に自分の好みではないのかな?と思いましたが、じわりじわりと面白さが分かってきた第2話からは、読了まであっという間でした^_^

    しかし、作者が変わった仕事の内容をよく思い付くなぁと思ったし笑(おかきの袋のしごとの時は、袋裏の変わったネタが面白くて何回クスッとなったことか笑
    普段から色んなことに目を向けて生きてないと思いつかない気がします。小説に独特の雰囲気があり、著者の他の作品もぜひ読んでみたくなりました。

    世の中には仕事は本当に数えきれないほどある。そして題名にもなってるようにどれも「たやすい仕事はない。」
    今度は主人公『私』が本当にやりたい仕事がうまくいきますように。もちろん、心や身体が壊れてしまわないように。。。

  • 燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性。失業保険も切れる頃、職業安定所で求めたのは「コラーゲンの抽出を見守るような仕事」

    偶然にも主人公の前職は私と同業で、まあ確かに燃え尽きそうになることもあるよね。頭も気も遣わないような楽な仕事っていいなーって思っちゃったりするよね。と、共感の嵐。

    私はバイトも仕事もいろいろと変えてきましたが、本書のタイトルどおり、たやすい仕事なんてないんですよね。
    大変さの種類が違うだけで、どんな仕事だって大変な部分はある。もちろん、それぞれ楽しさややりがいだって見つけられるだろうけど、仕事である以上責任が伴うわけだから、大変でないわけがない。
    大変さが欠片もないなら、それは単に収益がある遊びに過ぎない。というのは、言い過ぎだろうか。

    それはさておき、最初に紹介された仕事は、とある小説家をモニター越しに監視する仕事。生中継じゃないから停止もできるし、相手が目の前にいるわけでもない個室だから、どんな格好だっていい。
    なかなか楽そうなお仕事だ。
    と思いきや、こんな仕事にも適正があるらしい。
    それはそうですよね。ずっと画面を見続けるだけ、なんて、絶対無理だという人だって一定数いるでしょう。

    そんなへんてこりんな仕事をはじめ、さまざまな仕事を主人公は重ねていくけれど、仕事をする上で鍵になるのは人間関係と適正、ではないでしょうか。
    大変な仕事だって、人間関係が良ければ乗り越えられるし、どんなに楽しい仕事だって、ものすごく嫌いな人とやらないといけないとしたら、しんどい。
    それに、天職という言葉があるけれど、誰にとっても楽で簡単なんて仕事はなくて、合うか、合わないか。合わせられるか、合わせられないか。

    たやすい仕事はないかもしれないけど、やっていてよかった、と思える仕事を、できるだけ長く続けられたらいいな、と静かに思った1冊でした。

    最後の1文もまた、共感。
    私たちにできるのは、ただ祈り、全力を尽くすだけ。
    どうかうまくいきますように、と。
    だいたい、何をしていたって、何が起こるかなんて、どんな穴が待ちかまえているかなんて、わからないのだから。

  • '21年8月31日、読了。津村記久子さんの小説、初。

    なんだか、不思議な読後感。

    僕は…一生懸命、与えられた仕事をして、自分の居場所を探していく主人公の女性の、「再生」の物語なのかな、って感じました。作者からの、全ての働く人、悩み、苦しんでいる人達への、エール…そう、思えました。

    連作短編の形をとっていますが…僕的には、「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」が、良かった。特に「おかき〜」が好きです。
    やり甲斐もあって、従業員も皆良い人で、対象の商品も好き…でも、たった一つの「異物」のために、もう働けなくなってしまう…そんな主人公に、とても共感できました。悲しい事、ですよね…真面目で、弱い自分が、悲しい(。ŏ﹏ŏ)

    津村記久子さんは、恥ずかしながら今まで知りませんでした。とっても、良かった!次は、川端賞の受賞作を、読みたいです!

  • 14年間務めた仕事を燃え尽き症候群で辞めた
    三十代半ばの女性が、職業紹介所で紹介された
    5つの仕事を体験するお話。

    仕事の成功は依頼された人の意向を汲み取り
    依頼人のイメージと自分の中の完成イメージとを
    どれだけ擦り寄らせることができるのかに
    かかっていると思っていた私。

    人の感じ方は千差万別で、
    ちょっとしたニュアンスの違いや経験値の違いで
    自分勝手な解釈を必ずしてしまうものなので。

    この主人公、一風変わった仕事を
    オリジナルのアイデアや、時には周りの人を巻き込んで
    迷いながらも着実に自分のものにしていきます。

    最初は主人公の心の声がツボにはまり、
    笑っていられたんですけど…。

    3・4・5話は何だか苦しくなりました。

    主人公は優秀で、雇用する側からの評価は
    常に高いものなのです。
    それなのになぜ苦しくなってしまうのか。

    相手方に突進しすぎるのは良くないのかも知れません。
    余白が、遊びの部分が全くないと
    自分のいろんなものが追い詰められていってしまうのかも。

    とはいえ、誠実な態度で仕事に臨むことにより得られた
    主人公と職場の様々な人との関係。
    その関係が進ませてくれる先に、
    主人公の本当の居場所が待っている気がする終わり方が
    ステキって思いました。

    津村記久子さん、初読みです。
    深いですね。労働を丁寧に観察されているなぁと
    もっともっと読みたくなりました。

    この題名の通りと、常日頃思っていて
    手に取って大正解でした。
    5つの仕事を何か紹介されるのであれば
    私は迷わず「バスのアナウンスのしごと」を
    選ぶと思います☆

    職業紹介所の「正門さん」って何者なんでしょう?
    この物語、続編はできませんかね??

  • 独特の世界観。こんな本読んだことない。すごい発想。訳あって仕事を辞めた主人公が、ハローワークを通じて様々な個性的な仕事に着き、時々かなり面白いキャラクターやシチュエーションに遭遇する。一方で主人公の性格が真面目すぎて読んでいて苦しく思えたり、ひやりとする場面も多々あり、全体を通して淡々とした語り口でありながら、読んでいるこちらの感情が忙しい。

  • 面白かった!!!
    うーん今のところ津村さんの作品で一番好きだなあ…。えっ、ってくらい面白かった。
    連作短編形式で、長年働いていた仕事を辞めた主人公が様々な仕事を経験していく話になっている。
    職業相談員の正門さんは実に親切であり、どこからそんな仕事を、という現実にはなさそうな、でももしかすると無いとも言い切れないような仕事を紹介してくれるのだ。
    「みはりのしごと」山本山江という作家をひたすら監視カメラで監視する仕事。MIB的な秘密機関が絡んでおり、本書の中では一番ファンタジックかもしれない。(でもあり得ないとは言い切れない。)オチがちょっとこわい。
    「バスのアナウンスのしごと」正確には、バスの中でアナウンスされるお店のPR文章を考える仕事。しかし採用直後、上司に同僚の江里口さんを見張ってほしいと頼まれる。「ないじゃないか、と思ってたら、あったりするし、なくしてしまったら、本当になくなってしまったりもするんだよね」
    「おかきの袋のしごと」個包装のおかきの袋の裏に書いてある、ちょっとユニークなネタを考える仕事。作中の「ふじこさん」というせんべいを食べてみたくなる。
    「路地を訪ねるしごと」交通安全・緑化・節水といった平和な内容のポスターを町に貼りに行く仕事。というと楽そうだが、町と言っても住民の家に貼らせてもらうわけである。しかもこのポスター貼りには隠された目的があるらしく…。
    「大きな森の小屋での簡単なしごと」広大な森のような公園の中にある、交番の半分ほどの大きさの小さな小屋でただただ過ごす、という仕事。自然豊かな静かな森の中で一人きり、のはずだったが…。
    そんな仕事……いやでも無いとは言い切れないなあ、という妙なリアルさと、そこに混ざり込んでくる「奇妙」が実にぞわぞわしていい。全編通して、そしてラストにもう一度、タイトルがしみじみ来る。

  • (2024/03/26 2h)

    さまざまな職種のリアルな内情を明かす系の小説かと思ったら、世にも奇妙な物語系のファンタジー小説だった。

    サクッと読めておもしろい。
    バスのアナウンスと路地の話が好き。

  • いくつかの職業でのお仕事小説とそれにまつわる、プチミステリー謎明かし。謎が少しずつあって、飽きずに読めた。

  • 津村さんハマったきっかけになった本です

  • 津村記久子さんのお仕事小説は好きで何冊か読んでいるのだけど、この小説は正真正銘のお仕事小説だった。そしてとても面白かった。

    主人公は明言はされていないけれど恐らく30代半ばの女性。大学卒業後からずっと続けてきた仕事を離れ(その仕事についても最初は触れられていないが、最後に分かる)、疲れ切っていた彼女が「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はないですかね?」とハローワークの担当になった正門さんに相談して、紹介された仕事に次々に就いていくかたちの短篇集。
    「みはりのしごと」「バスのアナウンスの仕事」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」「大きな森の小屋での簡単なしごと」の5篇。
    タイトルだけで少しは想像がつきそうな仕事もあるけれど、全く想像がつかない仕事もあり、実際読んでみるとどの仕事も一癖ある。
    だけど、意地悪をしたりする嫌な人間は出てこないから、その仕事のあれこれだけを純粋に楽しみながら読めてとても良かった。

    色んな理由から主人公は最後に仕事を辞めて次の仕事へ移っていくのだけど、どの仕事にもなんだかんだで適応していく有能さを持っていて、元々長年していた仕事を辞めた理由が最後に分かった時に、真面目に取り組みすぎる主人公にとって色んな職を短期間で転々としたこの時間はとても意味があったのだなと思った。

    「路地を訪ねるしごと」はとくに一癖あって、ハローワークに求人が出ていたものの普通の仕事とは言い難い。
    住宅街を訪ね廻って交通安全だとか街の緑化だとかのポスターを貼ってくれるお家を探す仕事なのだけど、とくに貼る必要はなさそうなこれらのポスターを普及させようとした雇い主の男性の想いと意図が意外だった上にとても深くて驚かされる。

    世の中には本当にたくさんの仕事があって、自分には到底できないだろうと考えつく仕事もあるし、普段意識していない部分で支えてくれるような仕事もきっとたくさんある。
    今操作しているスマホや、目の前にあるこの小説、座っている椅子、この記事を載せているブログ、すべて誰かの仕事によって成り立っていると考えるととても感慨深く、ありがとう、という気持ちになる。
    見るからに大変そうな仕事、一見わりと楽そうに見える仕事、力仕事、頭を使う仕事、技術を要する仕事…色々とあるけれど、それぞれに種類の違う大変さや苦労があって、まさに「この世にたやすい仕事はない」のだと思った。
    そして何より読み物としてとても面白かった。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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