この世にたやすい仕事はない

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171360

感想・レビュー・書評

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  • どことなくファンタジーで、それなのに勤め人としてはドキッとさせられるような言葉もあって童話的な自己啓発本?最後の言葉が身にしみます。

  • 学校を卒業後長く勤めた仕事を体調をくずしてやめ、次の仕事を探している主人公。紹介された仕事は、ちょっと変わった仕事。それぞれの仕事で色々考えてさせられ、自分がやるべき仕事に近づいていく。

    奇妙な仕事のなかで、小さな謎を解きながら人間を観察し自分を見つめる。最後に明かされる最初の仕事に納得した。

  • 津村記久子はいつも何かに腹を立てている印象のある作家だ。少なくともデビュー作の「君は永遠にそいつらより若い」から暫くはその印象は変わらなかった。それが文学賞をいくか取るうちに角が取れ怒りが収まっていくように感じた。例えば「ミュージック・ブレス・ユー!!」の主人公は、自分自身が何に腹を立てているのか解らないままに怒りを外に向かって発していた記憶があるのだが、最近は主人公の怒りが内向するように思える。

    そんなこともあり少し遠ざかっていた津村記久子を久し振りに恐る恐る手に取る。この本の中で津村記久子は怒っているのだろうかと訝りながら。結論から言うと「この世にたやすい仕事はない」は「ミュージック・ブレス・ユー!!」の主人公のようにヘッドフォンであからさまに外界をシャットアウトはしないが、へどもどしながら世間様に何とかしがみつくそんな自分に嫌気を感じるくらいには厭世的な30代の女性が主人公だ。そこに自然と作家の等身大の価値観が投影される。だから主人公の不満や不安は作家自身の社会に対するメッセージ性を帯びるように読める。

    いつの時代でも後から生まれた世代は「最近の若者ときたら!」という目で見られてしまものだが、今のご時世インターネットやメディアの発達に伴ってお節介な人々との接点も多い上に全てがポリティカリーにコレクトである必要もあり、本来なら理不尽に「理由なき反抗」したい世代にはさぞかしもやもやが発散し難い時代だろうなと想像する。その辺りの、もやもやとも、むかつくともつかない感情、それを描くのが津村記久子の新しい怒りなのかな、と漠然と思う。

    でもやはり、と思うのだ。この世には怒りを代弁してくれるものが必要なのではないかな、と。ただ単に出るに任せて口から罵りの言葉を吐き連ねるのではなく、共感できる怒りを代弁してくれるものが。手に持ったアーミーナイフではなく、言葉で凝り固まった感情をほぐしてくれるものが。それが自分自身が津村記久子の文章に勝手に期待しているものなんだということが改めて解ったような気がする。

  • よくもまあこんだけ不思議な仕事を集めたなあ、と感心し、笑いながら時折人間の怖さみたいなものに一瞬だけ触れる、みたいな本でした。面白かったです。主人公の鋭いツッコミが最高。
    「みはりのしごと」小説の内容にきちんとツッコミ入れてる主人公、小説家に向いてるんでないか。
    「バスのアナウンスのしごと」バス内広告から消えた店は現実でも消えてしまう…というちょっと不思議な話。アナウンスの内容がいちいち笑えてセンスがある。
    「おかきの袋のしごと」個人的にこれが一番好きだったかもしれない。藤子さんがなんとなく怖い。1日袋裏のメッセージを考える仕事って、いいかもしれない。
    「路地をたずねるしごと」なんか怖かった。人間の怖さをするするっと書いてるような。この最後だけ他と離職理由が違って面白かった。
    「大きな森の小屋での簡単なしごと」めんつゆで笑い転げた。結局最後にこの主人公は逃れるように辞めた職種に戻る…というなんとなく爽やかな読後感で終えられた。いいなあ。これ。

  • 1話目の途中までは少し読み辛い気もしたが、やっぱり好きだあ、津村さんの作品。

    小説なのだが、いつものエッセイにも似ている。
    特に、思わず笑ってしまう主人公が心の中で突っ込むセリフなどは、エッセイを書いている時の津村さんと重なる。
    いつもの津村さんが、数珠繋ぎのようにネット検索して拾ったネタが、ふんだんにこの作品に活かされているのではないか?と楽しい想像をしてしまう。

    3話の中頃に至るまでは、主人公の性を反対に想像して読んでいたので、3話で主人公の性別がわかった時にはちょっとがっかりしたのだが。
    私が見落として勝手に感違いをしていたのだろうか?それともそのように誘導されていて3話で種明かしをされたのだろうか?前に戻って読み直さなかったので真相はわからないが、なんとなく仕組まれていたような気がする。
    私は騙されていたあるいは感違いしていた方の性別の方が良かった。

    とにかく津村さんの作品は「いるよねこういう人」っていう人物がいっぱい出てくる。
    それは、悪意なく他人の仕事を乗っ取りに来た老婦人も、それに気付かぬ気の良い社長も含めて。
    どの人物も、自分の周りに、すぐに「これはまるで誰々さんだ」と浮かぶような人物がいるわけではないのに、それでも、「わかるわかる!」という感じなのだ。

    ところで私はブクログのレビューで、「作者」と言ったり「著者」や「○○氏」と書いたりするのだが、自分なりにはっきりとその使い分けの定義があるわけではない。
    しかしながら、気付けば今、津村さんは私にとって津村さんなのだ。
    これは失礼なことなのかもしれないけれど、私の中ではもの凄い賛辞としてである。

  • あれ?
    そうなっちゃうんですね。

  • エッセイは楽しく読んだことがあったが、芥川賞に対する拒否反応が強かったため小説は初めて。エッセイで好きだなぁと思っていたそこはかとないユーモアを感じる連作短編集。様々な「おしごと」も、タイトルも秀逸。面白く読んだ。

  • タイトルからもう最高だって思って読み始めた。
    14年勤めた会社をやめた主人公、5つの物語に5つの仕事。リアルさと、ファンタジーっぽさのバランスが絶妙で、仕事に対する思いは身につまされるところもあった。主人公のぐるぐる考えすぎちゃうところや、えいやっとエンジン掛けてやるところは好感持てて良かったな。
    津村さんの作品本当好きだー。

  • 津村記久子=お仕事小説得意な作家さん、というイメージ。
    そんな津村さんの最新刊はお仕事ファンタジー小説!
    面白くないわけがないじゃないですか。
    初めのみはりの仕事からつかみバッチリ。作家の自宅にとりつけた隠しカメラの映像を一日分ずっと見つづけて不審なところがないか見張り続ける仕事なのだが、寝てるとき以外は早送りしてはならない。仕事に慣れたら2日分を一気に監視することが可能。目的は当事者も気づいていないマル秘なブツが隠されていることがわかっているのでそれを発見すること。気がおかしくなる仕事を実にコミカルに描いている。
    それと好きだったのはおかき袋の仕事。

    津村さんご本人がこんな仕事あったらなーと思いながら書いたそうです。どんな仕事でも、楽そうに見えてもたやすくはないのだなと。

  • 今の時代、こんな仕事内容はないだろう!とツッコミたくなる。転職重ねて最後は始めの仕事に戻る気になれてよかった

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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