ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス 51)

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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070512

感想・レビュー・書評

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  • NHKラジオ英会話のテキストに『名著への招待—海外文学の本棚から—』という連載が載っており、そこで『ライ麦畑でつかまえて』が紹介されていたのがきっかけで読んだ。
    村上春樹訳とすごく迷ったが、野崎孝訳のほうが口が悪そうだったのでこちらにした。
    私に合った訳だったと思う。

    タイトルは知っていたが、どんな内容なのかは全く知らなかった。
    タイトルのイメージでなんとなく「キラキラした青春の話かな」と思っていたが、全く違った。
    青春小説ではあるものの、「学校もクソ、通っているヤツらもみんなクソ」という感じで、とても良かった。
    でも主人公のホールデン・コールフィールドは、自分のことを卑下することは言わない。
    私たち読者はホールデンの話を、彼が入院している病院で聞いている。
    読者に話しかけている形で進んでいくから、彼は私たちに対してもなんとか取り繕おうとしているのだろうと思った。

    ホールデンは学校を辞めさせられることになり、退学予定よりも早く学校を飛び出して、寄り道をしながら家に向かっていく。

    彼は誰かに連絡を取ってはどうしようもないことばかりしており、何をしているんだ!?の連続で、読んでいる私までハラハラしたり恥ずかしくなったりした。
    途中、再会した女の子に勢いでプロポーズ紛いのことをし始めたときはどうしようかと思った。
    しかもあとになって「どうして彼女を相手にあんなことを言い出したのか、自分でもよくわかんない」と言っていて、私は頭を抱えてしまった。

    とにかくいいことがなく、踏んだり蹴ったりなホールデンを見ていると、「自業自得だ」と笑いたくなるかもしれない。
    それでもぽつりと「僕はなんだか悲しくなっちゃった」「どうしてだかわかんないけど、泣けてきちゃったんだ」と言われると、私は彼のことをどうしても突き放せない。
    いじらしく思えてしまうんだから、ずるいと思う。

    ホールデンは妹のフィービーや、亡くなった弟・アリーをとても大切に愛しく思っている。
    寒空の下で肺炎になって死ぬんじゃないかと思ったときには、ホールデンは両親が気の毒でたまらないと考える。
    特に母親のほうは、弟・アリーの死からまだ回復しきっていないから気の毒だ、と。
    彼はどうしようもないことばかりしているように見えるが、心の根っこは優しい子なんだろうなと思った。

    ホールデンはひどく気が滅入ったときに、亡くなった弟・アリーに話しかける。
    アリーを遊びに連れて行かなかった日のことを考えて、「おまえの自転車をとってきて、ボビー・ファロンの家の前へおいで」と言う。
    その日、弟に言えなかった言葉を。
    彼の繊細な心の中に、ずっと引っかかっている出来事なのだろう。
    ひどくさみしい気持ちになった。

    タイトル『ライ麦畑でつかまえて』は、ホールデンが聞き間違えた歌から取っている。
    本来は『ライ麦畑で会うならば』という詩なのだが、彼は「ライ麦畑でつかまえて」と子どもが歌うのを聞いて、胸が霽れるような気持ちになった。
    そして妹・フィービーに彼はこう言う。

    「とにかくね、僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしているとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない——誰もって大人はだよ——僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ——つまり、子供たちは走ってるときにどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっかから、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。馬鹿げてることは知ってるよ。でも、ほんとになりたいものといったら、それしかないね。馬鹿げてることは知ってるけどさ」(P269)

    ぼんやりとした光の中にあるような、現実逃避のような空想。
    でもそれは、ここではない遠くに行ってしまいたいホールデンの気持ちの表れのようで、胸が苦しくなった。

    翻訳小説は言い回しが独特で「頑張って読む」ことになりやすいのだが、この作品は話し口調で進んでいくからか、するすると読めた。
    アメリカ文学版太宰治という読み心地だった。
    太宰作品や中原中也(本人)が好きな人は、好みの作風だと思う(根拠は私です)。

    白水社のHPに訳者解説が載っており、そちらもとても良かったのでぜひ読んでみてほしい。

  • 世間でも評判の良いペンシー高校に通う16歳の少年ホールデン・コールフィールド。
    彼は学校の人間関係にうんざりし、寮を飛びだして可愛い妹に会いにいく。

    大人に嫌悪感を抱きながらも、大人のルールを守るコールフィールドが初々しくて少しかわいそう。特に好きなシーンは、妹のフィービーとけんかして、距離を置きながら歩き続けるシーン。
    「彼女は、僕と並んで歩こうとはしなかったが、それでもそんなに遠くへ離れもしなかった。」
    すごく大切な人とけんかをしても、何があっても、少なくともこの2人のような距離を保っていけたらなぁと思った。

  • なぜこの作品が名作と言われるのか、全くわからなかった。主人公は煙草吸いすぎだし、お酒も飲み過ぎ。読んでいて気持ち悪くなりそうだった。おそらく二度と読めないと思う。

    弱く無垢な存在が守られていない世界への憤り、この世の理不尽や不誠実を「インチキ」という言葉でしか表せない愚かさ。それがホールデンという人間である。

    「よく前を見ないで崖の方に走っていく子どもなんかがいたら、どっからともなく現れて、その子をキャッチするんだ。ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ。」

    無垢な世界の人間でいたいと切に願うけれど、そうあり続ける強い意志もない。これぞ人間らしい、と言えるのだろうか。私はそう思いたくないし、そんな愚かで醜いものを人間らしさとして認めたくない。理不尽な状況に耐えられなくても、私はもっと真っ直ぐ生きていきたい。

  • 主人公コールフィールド視点の回想物語。社会に馴染めないコールフィールドが何回も学校を辞めて最後のペンシーも単位が足りなくなり辞めされられる前に学校を抜け出しNYを渡り歩く。エレベーターホールの男に女を紹介されてそこで言われた金額と請求された金額が異なりコールフィールドは払わないと言うも男に殴られ金まで取られてしまう。立ち去る前に妹フィービーに会い最後回転木馬で雨に打たれながら回想が終わる。唖でつんぼが言葉が話せない、聞こえない人の差別用語らしい。
    ジョンレノンを殺害した犯人などが読んでいたらしいが本の内容的に社会に不満のある青年が愚痴を言うのと関係あるのか。

  • 高校1年生の時に読んでよかった。若いからわかる心情。

  • 語り自体が「君」に向けたホールデンのセリフなので、終始口語の文体で書かれている。
    また、リアルタイムな描写ではなく、後日談として語っていることから、ホールデンならところどころ盛って語っているだろうなと思えてしまう。「ほんとうなんだ」と、念を押してくる所なんか特に胡散臭く思えてくる。。。

    実家に帰ってからの日々や、病気になった経緯については、語り手であるホールデンが躊躇って、結局作中で語らず終いだった。一方、ペンシーやニューヨークでの日々については、多少ジョークを交えたりなんかして、笑い話にできるというのが彼の現状だと言える。
    当時は、心の拠り所を探して彷徨っていたが、現在は、長い語りに耳を傾けてくれる「君」という存在を得たために、孤独だった日々を過去の話に昇華できたのだろうと解釈した。

  • ホールデンがこれ以上辛い目にあいません様にと願いながら読みました

    この本は私の宝物になりました

  • J.D.サリンジャー。超有名作品だが今まで読んだことがなかった。主人公ホールデンが学校を退学になり、家出し、で多くの人と出会い、また過去の知人を思い出したりる、ストーリーはぶつ切りで、あくまでホールデンの考え方、感じ方に共感したり、懐かしんだりできるか、一種の指標のようなものでしょうか。

  •  主人公に共感できるかは読者の年齢に左右されそうだが、同じような悩みを抱えている人はいっぱいいると思った。現代のどこかでも見た事ある景色だし、それを客観的に捉えれれば大人なのかな? 悩みの原因は書かれていないけど解決法は語られているので全体として明るい印象。


  • 開始:2023/1/10
    終了:2023/1/13

    感想
    大人からも子供からも弾かれる思春期。主感的事実と客観的事実の間に溝がある。どちらが正しいのかはわからない。ペンシーもいい学校かもしれない。

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