- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569831084
感想・レビュー・書評
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とっても優しくあったかい気持ちになりつつ、物語の中で繰り広げられる書店員さんたちの熱量や勢いを感じたし、皆で一丸となり楽しみながらひとつの物を造り上げていく場面に心打たれた。
先のことを考えすぎて、まだ起こってもいない心配に支配されるよりも、今、自分に出来ることをまずはやってみる。
書店員をしていればあれば当たり前なことなのかもしれないけれど、その当たり前が、実はとっても重要なことで、書店員を経験したことのない者からすればおおぉ、すごい!そんなところで見分けつけるのかー!と感心することもたくさん登場した。
あとがきでは、この本を執筆するにあたっての、書店員さんからの実際の声や、著者がこの作品を読んだ書店員さんたちらの声を聞くまでの緊張まで書かれており、リアルな光景が目に浮かぶ。
なんとも躍動感のあるあとがきで、それもまたよかった!
桜風堂の続きのお話もあるようなのでぜひ読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前読んだ「魔女たちは眠りを守る」の著者だなぁと思いながら、図書館でなんとなく借りた本。当然のことながらPOPも帯もなく、私にとっては無名と言ってもいい本でした。それなのになぜか手に取ってしまったということは、まさに「生命力のある本」なのかもしれません。
書店と書店員さんの奮闘や想いが熱く、優しく伝わってきて、本好きの私にはたまらない物語でした。図書館本ばかり読んでいることを申し訳なく感じましたが、思いのままに読みたい本を買っていたら、お財布の中も家の中もとんでもないことになってしまうので、現実の書店員さんごめんなさい。 -
本屋大賞5位の桜風堂ものがたり。
本屋大賞は間違いがないのですよ、ほんとうに。
立ち上がりはすこししんどい。
でも、一整くんが少しずつ前を向き、
桜野町で立ち直る様子はさすが村山早紀さん。
優しい物語を書くとわかっていたけれど、
やっぱり泣かされる。
人っていいなあ、本っていいよなあ。
オウムの船長と猫のアリスもいい味出てました。
本と、書店の力をこれからも信じていきたい。
本の世界のはしっこで生きる人間として。 -
書店員さんの熱い思いが、たくさんの奇跡を起こす。
月原一整は、ネット上の友人「星のカケス」が、自分に好意を抱いている元同僚の渚砂だということを知らない。大切な親友である苑絵の思い人だからと、自分の恋心を封じ込め、顔の見えない友人でありつづけることを選んだ渚砂の想いがせつなかった。
三毛猫のアリスとオウムの船長もいい!
銀河堂書店に行ってみたい。桜風堂書店に行ってみたい。「四月の魚」を読んでみたい。
これは絶対続編があるな。 -
釈迦は法華経。
キリストは聖書。
ムハンマドはコーランを残した。
人々を救うために紡がれた優れた教えも、優れた物語にした弟子達が活字に残すことによって、未来に受け継がれてきた。
学生時代の恩師が教えてくれた。
「大学で一番偉いのは誰か? 教授でも、学長でも、総長でも、創立者でもない。管理人さんだよ」
「例えば、新聞ならどうか。記者でも、カメラマンでも、社長でもない。配達の方々だよ」
この小説は、現場で身体と智慧をフルに毎日使い切る書店員さんたちの物語。
現場で汗を流し、知恵を絞り、本への愛情を注ぎ込んでくれることで、活字文化は継承されてきた。
「宝探しの月原」の異名を持つ、銀河堂書店の月原一整は、ある不幸な事件に巻き込まれ、天職とも言える書店員の職を辞してしまう。
心も身体も病みかけた一整は、ブログでのやり取りを続けていた桜風堂書店への小旅行に出かける。
小さな奇跡が織り成す、美しくて、優しくて、力強い物語。
本を愛する全ての人に、読んでもらいたい物語。
そして、その感想を語り尽くし会いたい物語。 -
初読み作家。
歴史のある百貨店内の書店に勤める月原一整は、物静かな青年ではあるが店長や同僚から信頼されている書店員だった。しかしながら、万引き事件をきっかけに店を辞めてしまう。傷が癒えぬままネット上で知り合った小さな町にある書店、桜風堂の店主に会に行く一整。入院中の店主に頼まれ、店を任されることに。
ゆったりとした暖かさで、心温まる物語。猫のくだりはファンタジーのようになってしまい、あまり共感ができなかった。温かい人間に囲まれて、少しずつの想いが大きな結果を生む。予定調和では合ったが、面白く読めた。 -
書店員の、本に対する愛情が溢れる物語。
うまくいきすぎではないか、と思う部分もあったが、桜風堂という名前に相応しい温もり、温かさを感じた。
出版業界は、厳しい。でも、そんな中生き残り、本を売る努力を続ける版元さんや、書店員さんはすごい。
図書館ばかりでなく、たまには自分のお金で本を買わねば…と思った。 -
分かりやすくハッピーエンド、ではない。そういう本ばかり読んできた自分がもしかして間違っていたのかも、と思えるような本だった。
天涯孤独をあっさりと描き、虐待もサラリと語り、著名人と一般人との繋がりを嫌味なく表す。
一つの本を中心に、それに関わる人々の営みを重くもなく、軽くもなく描いていく。
単純にキラキラしているわけでもなく、どしんと来る痛みや辛さがあるわけでもない。奇跡、という言葉が出てくるけれど、それも事前の準備や努力といった行動がきちんとあった上での出来事。
小説は、読んでいて一緒に苦しい思いをしたり、悲しい思いに浸ったり、嬉しくてニマニマ笑ったり、そういうことをするのが醍醐味だと思っていた。
このものがたりは、そこまでのめり込まずにサラサラと流れる小川を眺めているだけのような気分で読んでいたけれど、読み終えて振り返ってみると、眺めていた川の美しさや流れの動きなんかが身に染みて思い出されるような感覚に陥る。
不思議なおはなしだ。 -
「人は正義の側に着いたと思うと……」の、くだり、本当に納得する。ひどいことも出来てしまう。しかし一整は、桜風堂書店に来るべくして来たのだと思う。
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「涙は流れるかもしれない。 けれど悲しい涙ではありません。」
この帯を見て、軽い気持ちで手にとった1冊だった。
最初は、重く暗いと思っていた。
大好きだからこそ、離れないと行けなかった、
主人公と周りの人々の悲しみ。
胸がとても締め付けられたりもした。
全てがうまくいっているわけではないが、
少しずつ、幸せな方へ前を向く。
本で始まり本で繋がる。
とても綺麗なのだ。
読み終わったあと、
流れている涙は確かに悲しい涙ではないのだ。