- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582834062
感想・レビュー・書評
-
市井の人々のささやかな営み、そして生と死。存在の証はいずれ消滅するが、また誰かに連綿と受け継がれただよい続ける。儚いが、確固たる生への執着を精緻に描ききった傑作だ。いつまでもこの読後感に浸っていたい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編が4~5編。読みやすい。
-
2012年3月29日
イラスト/クサナギシンペイ
装丁/本山木犀 -
さとこ推薦
-
少しずつ連鎖する、幕末から昭和までの9人の物語。とりとめて何かを得たわけでもない、けれどそこには彼らにしか分からない、追い求めたもの、大切なものがある。確実な成功や富を手に入れることでは得ることのできない何か。その人それぞれに見え隠れする人生。人が生きる、ということを素朴な情緒感で綴った短編集。
-
全部猫の話かなと思ったら全然違っていました。
9つの物語が収められていましたが、関連性があるようなないような…。
なんとも不思議な連作小説でした。
第1章染井の桜(巣鴨染井)で幕末の江戸の庶民の姿を描かれていました。第2章、第3章と続くうちに時も流れ、最後の9章で昭和の東京の姿を描いています。
タイトルの「茗荷谷の猫」は第3章。
かわいい猫の活躍を期待していたのですが…。
うっすらとした恐怖が残りました。
どの物語でも夢や人生の挫折を味わう
名もなき平凡な人々の姿が生き生きと描かれ、
昔も今も、人間とはこのようなものかとも考えさせられました。
第1章で登場する桜と茗荷谷の猫が中心となる縁で、
9つの物語が百年近い時をつながっているようです。
一度は切れたように見えても、またしばらくするとつながってくる。
時空を超えて再びつながる、そんな「つながり」を見つけた時、
たとえようもない切なさを感じました。
派手なアクションもなく、
推理小説のハラハラドキドキ感もありません。
主人公は地味な一般庶民ばかりなのに、
なぜか、この物語は、胸の奥にズシンと残ります。
人情モノにはやはり人の心に訴えかけるモノがあるのでしょうか。
作者の木内昇さんのストーリー仕立ても一役かっているようです。
小説の冒頭部分で、その本にのめりこめるかどうかわかるのですが、
この物語どの章をとっても、
最初の冒頭分でグッとのめりこみ、最後まで読み切ってしまいました。
これも猫の神通力か、桜の神木の力か…。
-
茗荷谷は私の母校がある土地なので、タイトルに惹かれて購入。
木内さんの文章とか、話の流れは読んでいて本当に心地が良い。そしてどこかせつない。すべてひっくるめて私は好きです。 -
幕末から昭和にかけて、目には見えない不思議な縁の糸で繋がった9人の市井のひとびとの連作ものがたり。
表紙の画も装丁もうつくしい。 -
ツ?JUGEMテーマ:小説全般 発売当初から桜庭さんが「名作!」ってつぶやいてたので気になっていたのですが、なかなか図書館で見かけることがなく、読むことが出来ませんでした。 先日図書館に行ったら発見ー小躍りしながらお持ち帰り。 おもしろかったあああああ!!!!! すっごくおもしろかった!!!!! 短編集かな、と思いきや、時系列ちゃんと並んでる連作。 一作目の「一 染井の桜」が江戸の末のころのお話で、最後の「九 スペインタイルの家」がたぶん昭和後期くらい。 ゆるーく繋がってるかんじが心地よかったり、ゾクっとしたり。 一作ごとに、まとっている空気とか読み心地は一緒なんだけど、読み終わった後はびっくりするくらい違う感想をそれぞれ持ちました。 やるせない気持ちになったり、気味悪かったり、絶望したり、ほっこりしたり、ぽろぽろ泣いたり笑ったり。どのお話も印象深くとても充実した一冊でした。また読みたいから買っても良いかも。 来年から東京に住むかもしれなくて気持ちが憂鬱だったけど、この本読んだらちょっと東京済むのも悪くないかもと思いました。
-
どこか少しずつ繋がっているのが面白い。というか好き。
ずっとレトロな薫りというか、哀愁というかそういった切ない感じが漂っていてそれも好き。