茗荷谷の猫

著者 :
  • 平凡社
3.56
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本棚登録 : 426
感想 : 114
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582834062

感想・レビュー・書評

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  • 江戸から戦後までの短編連作集。その時代を生きてく人々がとても丁寧に描かれる。粋であったり自堕落だったり様々な人々。そして漂う人情感。
    いままで使ったことのない表現や言葉たちにはたと目をみはってしまった。
    町も人も映像になって、こちらに訴えかけてくるような作品だった。
    「隠れる」が特に面白かった!

  • 江戸時代の終わりから、時代時代の東京に住まいする人の姿。ほんのわずかに、つながりがみえて、あぁ、とため息が出る。ひと匙、不思議が振りかけられていて、煙に巻かれる。どこにでもありそうな平凡も、一皮めくれば、はっとさせられるのかも知れない。

  • 前にも一度読んだことがあった。
    すっかり忘れてまた図書館で借りてきてしまった。
    でもまた読み返してみると忘れていた部分もあって
    楽しめました。

  • 過ぎゆく人々のごく僅かな足跡が大都市東京の流転する全景を顕に記す。
    都市の其処ここで煩悶を抱えたまま坦々と暮らしに埋没する各主人公らは時世に抗う術を持たず、その凡庸さで以て「東京」の時々を体現し得るのだ。
    そんな彼等の姿に注がれる愛おし気な眼差しはそのまま「東京」へと通じている気もする。
    何よりも其れは各題名に地名が入れられている事からも伝わってくる。
    生きる事の切なさに酷く胸を衝かれた作品集だったがとりわけ何度も読み返したくなったのは『庄助さん』『ぽけっとの、深く』『てのひら』
    (ところで『スペインタイルの家』には地名が入っていない事に今気付いたがどんな意味合いがあるのだろうか?)

  • 「幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を越えて名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。切なくも不思議な連作物語集」(本の帯より)

    大方の人は時代の趨勢に抗うことなどできず、だたただ生きていくしかないんだなぁ。生をつないでいくのだな。。
    人が生きるって、切ないけど、ああ、愛おしいなぁ。
    そんな思いにひたひたと満たされる。

    「染井の桜  ―巣鴨染井」と「茗荷谷の猫  ―茗荷谷町」が好き。

    こんどの話は前のとどうつながっているのだろうと勘繰りながら読んでいくのもまた、楽しみのひとつ。

    ★は5に近い4。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「こんどの話は前のとどうつながっているのだろう」
      この読み方好きかも。。。
      人の営みが何らかの形で繋がっている。繋がっていく。そう言う話が結...
      「こんどの話は前のとどうつながっているのだろう」
      この読み方好きかも。。。
      人の営みが何らかの形で繋がっている。繋がっていく。そう言う話が結構好き、この本読んでみます、、、
      2013/02/07
    • ajiねえさん
      時代物はあまり読まないのですが、木内昇さんの書くものはとても好きです。背景も風情もきちんと丁寧に昔のものなのに、すーっとなじんでしまうのです...
      時代物はあまり読まないのですが、木内昇さんの書くものはとても好きです。背景も風情もきちんと丁寧に昔のものなのに、すーっとなじんでしまうのです。
      2013/02/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「すーっとなじんでしまうのです。」
      読むのが愉しみ、文庫があったので購入しましたが未だ手を付けていません。その時「新選組 幕末の青嵐」が、同...
      「すーっとなじんでしまうのです。」
      読むのが愉しみ、文庫があったので購入しましたが未だ手を付けていません。その時「新選組 幕末の青嵐」が、同じ著者だったと気付き購入(積読が増え続けるのでした)。。。
      2013/03/21
  •  新年早々いいもの読ませてもらった。ブクログの狂気タグで見つけた本だったので、穏やかな顔(※表紙)してどんなどろどろなんだいと思いながらページをめくったら……なんだよ素敵じゃないの……。ほの暗い雰囲気でもあるけど、どこかに救いがある。どこかコミカルで、思いがけずくすっとしたあと、これは笑ってよかったのか? とはたと気付くのである。でも、笑っていいと思うんだ。
     表題作の「茗荷谷の猫」がいちばん好き。次点で「隠れる」、「ぽけっとの、深く」かな。タっちゃん……。
     百けんや、乱歩や中也の名前が出てきたのも楽しかった。
     全部読み終えてからようやく、『家』がテーマでもあるのかなと気付いて何だか嬉しくなりました。

  • 「漂砂のうたう」がちょっとすごく気に入ったので読んでみた。期待を裏切らない傑作!短編という形を取ったことで、さらに鮮烈な印象を残す、まさに珠玉の短編集。雰囲気は淡々としていて、どちらかというと硬質で静謐な文章のイメージ。紡ぎ出す物語の幅も広く、次回作はどんな仕上がりになっているのか、新刊がとても楽しみな作家さんになりました。内田百間、江戸川乱歩、永井荷風といった作家への言及も作品へのスパイスになっていて良かったです。ちなみに最後まで名前の出なかった、「庄助さん」のモデルは、山中貞夫監督ではないかと思ったんですが、どうなんでしょう!?

  • この人の作品を読むのは直木賞受賞作「漂砂のうたう」についでこれが2作目。
    受賞作だけでなくもう少し読みたいと思ったので・・・。
    幕末、武士の身分から職人に変身したり、
    時代に翻弄される名もなき人たちを描いた連作の物語。
    ペーソスも感じる。
    『本来暇で退屈であることは、至上の贅沢である』と書いている。
    私は至上の贅沢を味わっていることになるのか?
    納得できるような、できないような・・・
    淡々を書いているがなかなか味わい深いと感じた。

  • 美しい桜を作るが名を残そうとしない「染井の桜」
    まだ見ぬ効能を開発すべく家にこもる「黒焼道話」
    細々と絵を描く老婦人の家の床下に猫が住み着く「茗荷谷の猫」
    大家に頼まれて作家のもとへ借金の催促に通う「仲之町の大入道」
    父の遺産で静かに暮らすつもりが全てが裏目に出る「隠れる」
    映画館の支配人に自分が作りたい映画を滔々と語る「庄助さん」
    戦後タッちゃんに誘われ靴磨きをして生きる「ぽけっとの、深く」
    大好きだったはずの品のある母をみっともなく感じる「てのひら」
    近所にある洒落た家が気になる「スペインタイルの家」
    イラスト:クサナギシンペイ 装丁:本山木犀

    戦前から戦後にかけての下町を舞台にした短編集です。
    それぞれの話にこっそりとつながりがあります。
    そしてどの話も最後は哀しみの予感を含んでいる。
    一番わかりやすくいい話なのは「庄助さん」だなぁ。
    おかしみがあるのは「仲之町の大入道」と「隠れる」の2作。

  • おもしろかった。実は途中まで茗荷谷をなんて読むんだっけ?と思いつつ読んでました。お恥ずかしい。最初が江戸時代のお話だったのに、次は時代ものでなかったので、あれ?これは短編集だったのか、と思いつつ読んでいたら、不思議とそこここでつながりがでてきて、ほえ〜っという感じ。時代はどんどん新しくなっていく中で色々な人々の色々な人生のひとこまが描かれて不思議な味わいがあった。「現実には勝てない」といった青年の言葉がせつなかったー。彼は死んでしまったのでしょう。彼のお話が一番好きだったので、悲しかったなあ。どちらかというと物悲しい、とか怖いお話が多かったな。でも読みがいがあるいい本でした。そしてお慶さんの書が、あそこででてきたのにはちょっと感動した。ああ、桜が、綺麗だなあ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ほえ〜っという感じ。」
      繋がりって、案外そうなのかも。
      木内昇は、のんびりお付き合いして行きたい書き手さんです。
      「ほえ〜っという感じ。」
      繋がりって、案外そうなのかも。
      木内昇は、のんびりお付き合いして行きたい書き手さんです。
      2013/08/05
    • あこさん
      「のんびりお付き合いしていきたい書きてさん」
      まさに、その通り!ですね。
      「のんびりお付き合いしていきたい書きてさん」
      まさに、その通り!ですね。
      2013/08/07
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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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